上 下
79 / 90
ファイル.08 サキとナージャの異世界冒険

ファイル.08 サキとナージャの異世界冒険(10)

しおりを挟む
「地震だ。なーちゃん、伏せて! 頭を手で守るの!」

「はい! うう、大きい。伏せていても耐えられそうにないくらい」

 地面が砕けそうなほどの揺れが一分ほど続いた。

「うう、先輩、大丈夫ですか?」

「なんとかね。なーちゃんは大丈夫?」

「私もなんとか大丈夫です」

「異世界でこんなに大きな地震が起こるなんて、思ってなかったよー」

「うかつでした。こういう洞窟では致命的になるかもしれません。落盤や落石で、出口が塞がれてないといいですけど」

 ナージャの心配は現実となっていた。

 その日、二人のいる異世界で千年に一度の地震が起きた。
 地震により、落盤が発生して、洞窟内の通路が一部崩壊していた。

「あー、通路が潰れています。これじゃあ外に出られないよー」

「やっぱり落盤してましたね。別な通路を探すしかないです」

 二人は別な道を探したが、通れる場所は全て塞がれてしまっていた。

「先輩、これは詰んだかもしれません。これでは私たち、ここから出られませんよ……。冒険者ギルドの人たちが救助を要請してくれることを祈るしかないです」

「そうだ。魔法でこの石をどかせれば……」

 二人は魔法で通路を塞いでいる石をどかそうとしたが、塞いでる石の量が多いようで、たくさんの石を取り除いても道は塞がったままだった。

「これでは無理です。むしろ魔法を使うと余計な体力を消耗して危険です」

「助けが来るのを待つしかないね」

 どれだけの時間が経ったのだろう。
 二人には、永遠に時間が流れているように感じた。

 しばらくすると、徐々に洞窟内の酸素が足りなくなってきたのか、二人の頭がぼーっとしてきた。

「うう、頭がクラクラするー」
 
「洞窟内の酸素が少なくなってきてるのかも。通気口になっていたところが塞がれてしまったのかもしれませんね」

 二人は余計な酸素を使わないように、身体を寄せ合ってじっと耐えていた。

 体調に異変を感じたことで、二人は自分たちに残された時間が少なくなっていることを実感した。

「大丈夫だよ、なーちゃん。必ず助けがくるから。諦めちゃダメだよ」

「わかっています。必ずここから出ましょうね」

 二人はお互いの手を握りながら励まし合う。
 しかし、その間にも、洞窟内の酸素はどんどん失われていった。

「なーちゃん、私の血、吸っていいですよ。そしたら、なーちゃんはもう少しだけ、助けを待ってられますからね」

「優しいんですね、先輩。でも、酸素欠乏になってる先輩の血を吸っても、あんまり長く持ちませんよ。なので大丈夫です。それに、くたばる時は先輩と一緒がいいですから」

 しかし、すぐにナージャは意識がもうろうとしてしまい、ぐったりとしてしまった。

「なーちゃん、なーちゃん。しっかりして。今、私の酸素をあげるからね」

 サキはナージャに人口呼吸をして、肺の中に残っている酸素を送り込んだ。

(なーちゃんは吸血鬼だから、私より血液の中の酸素をたくさん消費しちゃうのかもしれない。本当にごめんね、なーちゃん)

 ナージャに酸素を送り続けたサキも限界になっていた。

(先生ごめんなさい。私が異世界に行くなんて言わなかったら、私もなーちゃんも死なずにすみました。本当にごめんなさい。アマちゃんも、本当にごめん。私が魔法を使ってなかったら、あなたの能力を使って、危険を回避できたのに。本当にごめんね。先生、今までありがとうございました。サキは先生が好きでした。先生と助手以上の関係になりたかったです。でも、もう手遅れですけど。先生。先生……せんせ……)

 サキはもう動けなくなっていた。
 
(あり……がと……ご……)
 
 サキの意識が遠のいたその時。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

校長室のソファの染みを知っていますか?

フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。 しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。 座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る

マッサージ師にそれっぽい理由をつけられて、乳首とクリトリスをいっぱい弄られた後、ちゃっかり手マンされていっぱい潮吹きしながらイッちゃう女の子

ちひろ
恋愛
マッサージ師にそれっぽい理由をつけられて、乳首とクリトリスをいっぱい弄られた後、ちゃっかり手マンされていっぱい潮吹きしながらイッちゃう女の子の話。 Fantiaでは他にもえっちなお話を書いてます。よかったら遊びに来てね。

RUBBER LADY 屈辱の性奴隷調教

RUBBER LADY
ファンタジー
RUBBER LADYが活躍するストーリーの続編です

【R18】もう一度セックスに溺れて

ちゅー
恋愛
-------------------------------------- 「んっ…くっ…♡前よりずっと…ふか、い…」 過分な潤滑液にヌラヌラと光る間口に亀頭が抵抗なく吸い込まれていく。久しぶりに男を受け入れる肉道は最初こそ僅かな狭さを示したものの、愛液にコーティングされ膨張した陰茎を容易く受け入れ、すぐに柔らかな圧力で応えた。 -------------------------------------- 結婚して五年目。互いにまだ若い夫婦は、愛情も、情熱も、熱欲も多分に持ち合わせているはずだった。仕事と家事に忙殺され、いつの間にかお互いが生活要員に成り果ててしまった二人の元へ”夫婦性活を豹変させる”と銘打たれた宝石が届く。

社長の奴隷

星野しずく
恋愛
セクシー系の商品を販売するネットショップを経営する若手イケメン社長、茂手木寛成のもとで、大のイケメン好き藤巻美緒は仕事と称して、毎日エッチな人体実験をされていた。そんな二人だけの空間にある日、こちらもイケメン大学生である信楽誠之助がアルバイトとして入社する。ただでさえ異常な空間だった社内は、信楽が入ったことでさらに混乱を極めていくことに・・・。(途中、ごくごく軽いBL要素が入ります。念のため)

ピエロの嘲笑が消えない

葉羽
ミステリー
天才高校生・神藤葉羽は、幼馴染の望月彩由美から奇妙な相談を受ける。彼女の叔母が入院している精神科診療所「クロウ・ハウス」で、不可解な現象が続いているというのだ。患者たちは一様に「ピエロを見た」と怯え、精神を病んでいく。葉羽は、彩由美と共に診療所を訪れ、調査を開始する。だが、そこは常識では計り知れない恐怖が支配する場所だった。患者たちの証言、院長の怪しい行動、そして診療所に隠された秘密。葉羽は持ち前の推理力で謎に挑むが、見えない敵は彼の想像を遥かに超える狡猾さで迫ってくる。ピエロの正体は何なのか? 診療所で何が行われているのか? そして、葉羽は愛する彩由美を守り抜き、この悪夢を終わらせることができるのか? 深層心理に潜む恐怖を暴き出す、戦慄の本格推理ホラー。

生贄にされた先は、エロエロ神世界

雑煮
恋愛
村の習慣で50年に一度の生贄にされた少女。だが、少女を待っていたのはしではなくどエロい使命だった。

[R18] 激しめエロつめあわせ♡

ねねこ
恋愛
短編のエロを色々と。 激しくて濃厚なの多め♡ 苦手な人はお気をつけくださいませ♡

処理中です...