怪異探偵№99の都市伝説事件簿

安珠あんこ

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ファイル.06 マヨイガと猿の怪異

ファイル.06 マヨイガと猿の怪異(8)

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 猿の経立に案内されたゼロたちが森を進んでいくと、目の前に大きな湖が現れた。

「ここが水鏡湖だ。そして、龍神様はそこの祠にいらっしゃる」

 猿の経立が指差す先には、お経のような文字が書かれた短冊が無数に貼り付けられた小さな石の祠があった。
 
 ゼロはその祠の前に到着すると、九十九に身体を返した。

『よし、あとは任せてくれ、ゼロ』

 九十九は、持っていたカバンから、黒檀という特殊な木で出来た小さな人形を取り出した。

『結界に捕らわれし水の神よ。我が依代に宿り、その力を解放したまえ』

 龍神様は九十九の用意した木の依代に移動して自由の身となった。

『我が依代に宿りし水の神よ。水の力を得て、本来の姿へと戻りたまえ』

 龍神様が宿った依代は湖に潜ると、水をたくさん体内に蓄えて上空へと舞い上がった。

 湖から出てきた龍神様は、本来の大きな白い龍の姿へと戻っていた。

 そして、上空から何度も水を森を焼く炎へ向かってかけ続けた。
 T地区の怪異たちも協力して森の火を消火していった。

 怪異たちによって、森の火災はほとんど消し止められて、鎮圧状態となった。

「八尺様。ここまで火が消えれば、後は森にいる怪異たちで対処できるはずです。龍神様を祠へお戻ししても構わないですね?」

「ええ、もう大丈夫でしょう。九十九さん。本当にありがとうございました」

 八尺様はにっこりと九十九に微笑んだ。

 その様子を見ていた猿の経立が、八尺様に声をかけた。

「すいません八尺様、挨拶が遅れました。俺は猿の経立です。あなたを一目見た瞬間、あなたに心を奪われました。よかったら、俺と付き合ってもらえませんか?」

「ええー!」

 驚いた九十九たちは思わず声を上げた。
 
 猿の経立は八尺様に惚れたようだ。

「ふふ、まさか経立様に告白されるとは思いませんでしたわ」

 八尺様もまんざらではないようだ。

「よかった。どうやら猿の経立は君から八尺様に気が移ったみたいだよ」

「うーん、なんか複雑ですー。まあ、どっちにしろ、浮気性な男は私、大嫌いですー」

「はは、私もだよ」

 九十九とサキはお互いの顔を見つめ合ってから、静かに笑い出した。
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