怪異探偵№99の都市伝説事件簿

安珠あんこ

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ファイル.06 マヨイガと猿の怪異

ファイル.06 マヨイガと猿の怪異(6)

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「よう、お嬢さん。俺は猿の経立っていうんだ。俺はお前を気に入ってな。今日から俺の嫁になってもらうぜ」

 猿の経立はサキの目の前に立つと、顔を近づけて挨拶した。
 彼もサキを気に入って後をつけてきたらしい。

「まったく、サキ君は怪異に好かれやすい体質なのは知ってたけど、これほどまでとはねえ」

「ううー、突然プロポーズされて、なんか複雑な気分ですー」

「猿の経立といったな。彼女は私の大切な助手だから、君に渡すわけにはいかないな」

 九十九が、サキと猿の経立の間に身体を入れて、サキを守りながら話しかけた。

「なら、力づくでも認めさせてやるよ」

 猿の経立はプロポーズを邪魔をした九十九に対して、腕を振り上げて威嚇するポーズを取った。

「お前は元々は猿そのものだったはずだ。その見た目も人間から奪ったんだろう?」

 猿の経立は九十九の問いかけを無視して突き飛ばし、サキに壁ドンをした。

「ふふ、かっこいいだろう? この顔と身体、結構気に入ってるんだぜ」

「うー、ノーコメントですー」

 サキは苦笑いしながら答えた。

『九十九、俺にこいつと戦わせてくれ』

『ゼロ、君はまだ完全じゃないが……』

『猿に負けるようじゃ、狼失格なんだよ。ま、ここは俺に任せてくれ』

「随分と調子に乗ってるじゃねーか、サル野郎。悪いが、俺も彼女を気に入っていてね。猿ごときには渡せねえな」

 突然、九十九の雰囲気と口調が変化したことに、猿の経立は驚きを隠せなかった。
 
「なるほど、こっちの女は犬と融合していたのか。それで、犬の方が表に出てきたようだな。ははっ、それじゃあ俺とは仲良くなれねーわな。犬猿の仲って言うしな。まあいい、大人しく嬢ちゃんを渡しな」

「俺が猿の言うことを聞くとでも?」

 九十九と入れ替わったゼロが猿の経立を睨みつける。
 
「ははは、それもそうだ。それじゃあ、力づくで奪わせてもらうぜ」

 猿の経立は仲間の猿の怪異から木製の棍棒を受け取ると、ゼロに襲いかかってきた。

「はは、お前ら四足歩行の犬と違って、俺たちは武器を自由に使えるんだよ!」

 猿の経立は棍棒をゼロに激しく叩きつけてきた。
 ゼロはその攻撃をスレスレのところで回避していくが、周りにいる猿の怪異たちがゼロに石を投げつけて追撃してきた。

「ちっ、厄介な猿どもだぜ。それなら……」

 ゼロは猿の怪異たちを睨みつけながら、雄叫びをあげた。

「わおおおおおおおおん」
 
 その声を聞いたとたん、猿の怪異たちは身体が金縛りにかかったように動かなくなった。

「ほう、雄叫びで俺の子分たちを全て気絶させるとは、犬にしてはやるじゃねえか。はは、面白え。ここからは俺とお前のタイマン勝負だ。どっちかがぶっ倒れるまでやり合おうぜ」

「いいだろう。狼と猿の格の違いを見せつけてやる。さあこい。俺の爪で切り刻んでやるよ」
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