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ファイル.06 マヨイガと猿の怪異
ファイル.06 マヨイガと猿の怪異(4)
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上機嫌になったヤマノケは二人をマヨイガがある場所まで案内した。
そこには大きな一軒の古民家があった。
「立派なお屋敷ですねー」
お屋敷の入口には立派な黒い門があった。
「マヨイガの入口には黒い門があると言われているんだ。ここは間違いなくマヨイガだね」
「へへ、よく知ってるなあんた。そう、ここが正真正銘本物のマヨイガだよ。さあ、中に入ろうぜ」
三人が黒い門をくぐって中に入ると、大きな庭に紅白の花が一面に咲き乱れていた。
九十九たちが玄関から家の中に入ると、中央に並べられた食膳の上に、赤と黒のお椀が準備してあった。
その奥の座敷の間には火を起こした火鉢があって、鉄瓶のお湯が沸騰していた。
「本当に直前まで人がいたみたいになっているんですね」
「うん、これも伝承のとおりだ。とりあえず少し休憩してから、家の中を探索しよう」
「はい、私も少し疲れましたー」
そう言うと、サキはその場に座り込んだ。
「そういえば、この家の中のもの、一つだけ持ち出せるんだよ。何にするんだ?」
置いてあったお椀を手に取りながら、ヤマノケが話しかけてきた。
「……いや、私は何も取らずに帰るよ」
何かを言いそうになったサキに目で合図してから、九十九が答えた。
「そうなのか? 何か一つ持ち帰ると幸せになれるのに。欲がねえやつだなー」
「私たちはマヨイガの取材に来ただけなんだ。中の様子が確認できればそれで十分だよ」
「……」
サキは九十九に何か持ち帰りましょうよと言いたかったが、我慢した。
しばらく休憩した後、九十九はマヨイガから外に出られなくなっていることに気づいた。
「なんだこれは? 戸が動かない。これでは外に出られないぞ」
この家にある全ての出入口が閉じられていた。
まるで家の内部が異次元の空間となっているように、外の様子もわからなくなっていた。
「サキ君。どうやら私たちはマヨイガの中に閉じ込められてしまったようだ。まるで、この家が私たちを外に出すのを拒んでいるみたいだ。まるで、マヨイガ自体に意思があるみたいにね」
「そんなー。なんとかして、脱出しないとマズいですー」
「マヨイガはあなたたちを外に出したくないようです」
突然、屋敷の奥の部屋から赤い着物を着たおかっぱ頭の男の子が現れた。
「君は?」
「申し遅れました。私は座敷童子です。今、マヨイガであるこのお屋敷に居候させてもらっています」
座敷童子は九十九たちに頭を下げてから自己紹介した。
「なるほど。座敷童子くん、私たちはなんとかここから出たいんだが、君からうまくマヨイガに交渉してくれないかな?」
「……いいでしょう。私がマヨイガと話し合ってみます」
そう話すと、座敷童子は屋敷の奥の部屋へと戻っていった。
そこには大きな一軒の古民家があった。
「立派なお屋敷ですねー」
お屋敷の入口には立派な黒い門があった。
「マヨイガの入口には黒い門があると言われているんだ。ここは間違いなくマヨイガだね」
「へへ、よく知ってるなあんた。そう、ここが正真正銘本物のマヨイガだよ。さあ、中に入ろうぜ」
三人が黒い門をくぐって中に入ると、大きな庭に紅白の花が一面に咲き乱れていた。
九十九たちが玄関から家の中に入ると、中央に並べられた食膳の上に、赤と黒のお椀が準備してあった。
その奥の座敷の間には火を起こした火鉢があって、鉄瓶のお湯が沸騰していた。
「本当に直前まで人がいたみたいになっているんですね」
「うん、これも伝承のとおりだ。とりあえず少し休憩してから、家の中を探索しよう」
「はい、私も少し疲れましたー」
そう言うと、サキはその場に座り込んだ。
「そういえば、この家の中のもの、一つだけ持ち出せるんだよ。何にするんだ?」
置いてあったお椀を手に取りながら、ヤマノケが話しかけてきた。
「……いや、私は何も取らずに帰るよ」
何かを言いそうになったサキに目で合図してから、九十九が答えた。
「そうなのか? 何か一つ持ち帰ると幸せになれるのに。欲がねえやつだなー」
「私たちはマヨイガの取材に来ただけなんだ。中の様子が確認できればそれで十分だよ」
「……」
サキは九十九に何か持ち帰りましょうよと言いたかったが、我慢した。
しばらく休憩した後、九十九はマヨイガから外に出られなくなっていることに気づいた。
「なんだこれは? 戸が動かない。これでは外に出られないぞ」
この家にある全ての出入口が閉じられていた。
まるで家の内部が異次元の空間となっているように、外の様子もわからなくなっていた。
「サキ君。どうやら私たちはマヨイガの中に閉じ込められてしまったようだ。まるで、この家が私たちを外に出すのを拒んでいるみたいだ。まるで、マヨイガ自体に意思があるみたいにね」
「そんなー。なんとかして、脱出しないとマズいですー」
「マヨイガはあなたたちを外に出したくないようです」
突然、屋敷の奥の部屋から赤い着物を着たおかっぱ頭の男の子が現れた。
「君は?」
「申し遅れました。私は座敷童子です。今、マヨイガであるこのお屋敷に居候させてもらっています」
座敷童子は九十九たちに頭を下げてから自己紹介した。
「なるほど。座敷童子くん、私たちはなんとかここから出たいんだが、君からうまくマヨイガに交渉してくれないかな?」
「……いいでしょう。私がマヨイガと話し合ってみます」
そう話すと、座敷童子は屋敷の奥の部屋へと戻っていった。
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