怪異探偵№99の都市伝説事件簿

安珠あんこ

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ファイル.06 マヨイガと猿の怪異

ファイル.06 マヨイガと猿の怪異(1)

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 T地方に来ている九十九たちに、望月編集長から、マヨイガを見つけてくれないかと依頼が入った。

 ミニバンで移動しながら、九十九とサキは話をしていた。

「追加の仕事ができてよかったです。今回の仕事、報酬がなかったですからねー、願ったり叶ったりですよー」

「そうだねー。まあ、八尺様の依頼も終わったことだし、少しゆっくりしながらマヨイガを探しに行こうか」

「先生、私、また温泉に入りたいですー」

「あー、温泉もいいねえ。とりあえず、まずは疲れを癒そうか。近くに有名な温泉街があるから、そこに行ってみよう」

「やったー。それじゃ、早速いきましょー」

「ああ。今回、車で来て本当によかったよ」

 二人を載せたミニバンは、【歓迎 H温泉】と書かれたアーチ看板のゲート下をくぐった。

 H温泉は東北地方でも特に有名な温泉地で、たくさんの旅館が立ち並んでいた。

「いやー本当に温泉街なんですねー。すごい場所ですー」

「本当だねー」

 九十九たちは旅館の中から、日帰りで入浴が可能な場所を選んで車を走らせた。

「ちょうど、日帰りで入れるところがあってよかったね」

「先生、サキ、露天風呂に入りたいです。一緒に入りましょー」

 二人は旅館に着くとすぐに露天風呂へと向かった。

「うわあ、すごい景色ですー」

「大自然を満喫しながら温泉に入れるとは。さすが有名な温泉街だねえ」
 
 二人は温泉につかりながら、今回のマヨイガについて話し始めた。

「そういえば先生、マヨイガって何なんですか?」

「マヨイガは迷い家とも呼ばれていてね。この地区の山奥に突然現れるという立派な家のことなんだ。家の中は無人で誰もいないんだけど、直前まで人がそこにいたような痕跡があるんだ。そして、その家の中の物を何か一つだけ持ち帰れば、その人は幸運に恵まれると言われているよ」

「へえー、そんな家があるんですねー。幸福になれるなら、絶対に見つけたいです。仕事でお金がもらえるのに、幸せにもなれるなんて、最高じゃないですかー」

「本当だねえ。でも、T地方は広いからね。山も多いし、闇雲に探しても見つからないだろうね。とりあえず、SNSで目撃情報がある場所を巡ってみようか?」

「そうですねー。私がダウジングで探してもいいですけどー、それだとマヨイガを探す楽しみが無くなっちゃいますからねー」

「うん。今回、それは最後の手段にしようか。せっかくこんなにいい場所に来たんだから、いろんな所をまわってみたい。ここにはいろんな怪異が生息しているからね」

「わかりましたー。私、先生とこうやって旅行みたいにお出かけするの、久しぶりなので、とっても楽しいですー」

 サキはニコニコしながら九十九の手を握りしめた。

「後で取材費をもらえることだし、今日はこのままこの旅館へ泊まって、マヨイガは明日探索することにしよう。部屋が空いてればだけどね」

「やったー。温泉入り放題だー」
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