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ファイル.03 ツチノコ狂想曲

ファイル.03 ツチノコ狂想曲(4)

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 巨大化して凶暴になったアオジタトカゲが、村の人間たちを襲う。

『お前たち、よくも俺をいじめてくれたな。復讐してやるー』

 やんちゃなお兄さんたちの前に巨大なトカゲが現れた。

「いたぞ、ツチノコだー! て、あれ!?」

「おい、なんだよ、あれ?」

「ツチノコがあんなにでかいなんて聞いてねえぞ? あれじゃあ、まるで大蛇じゃないか?」

「いや、よく見ろ。手足があるぞ。こいつ、トカゲだよ。こんなデカいトカゲ、俺初めてみたわ」

「まあいい、生捕りにすれば、金がもらえるんだからな。さっさと捕まえようぜー」

「おい、ちょっと待て。なんか様子がおかしくないか?」

「うるせー。早くお前も手伝えよ」

 トカゲを捕獲しようと不用意に近づいたやんちゃなお兄さんたちは、巨大になったトカゲの尻尾で弾き飛ばされた。

「うわああああ!」

「痛い……痛いよう」

「こいつ、やばい。早く逃げないと……」

 巨大トカゲを捕獲しようとしていた三人はパニックになって逃げ出した。

『すごい力だ。これなら人間たちに復讐できる。待っていろー。おおあばれしてやるからなー』

 巨大なアオジタトカゲは村の中心部へと移動し始めた。

「おい、なんだよあれ」

「ツチノコがあんなにデカいなんて聞いてないぞ」

「とりあえず、逃げないと」

 ツチノコを探していた観光客はようやく事態の深刻さに気づいて、トカゲから逃走を始めた。
 
 トカゲは、目についた車や建物に体当たりをして、次々と破壊していった。
 この村の重要な観光資源だった青い花も、ほとんど踏み潰されてしまった。

「なんだこれは……。あんなにデカくなるなんて、私は聞いてないぞ」

 村長は、村中で大暴れしているトカゲを見て、全身の血の気が引いていた。

 九十九とサキは、前方にツチノコらしい物体を見つけた。

「やっと見つけたわよツチノコモドキ! え、何これ? なんでなこんな大きさなのー!」

「サキ君、こいつには手足がある。どうやらツチノコによく似たトカゲのようだ。だが、まさかここまで大きいとはね。やはり怪異だったのか」

「先生! こいつ、こないだの姦姦蛇螺よりずっとデカくないですかあ!?」

「ああ、マズいね。戦ってどうこうできるような大きさじゃないよ」

「どうしましょー。今回、怪異と戦うつもりなんてなかったから、スピリタスは用意してませんよー」

『うみか、何か変だ。こいつからは、怪異特有の臭いがしないんだ』

『こいつはここにいたツチノコもどきが、何らかの理由で巨大化したんだろう。まだ臭いがしないのは、巨大化してからまだ時間が経っていないからだろうな』

「サキ君、下手に近づくのは危険だ。体格差があるから、間違いなくこちらがやられてしまう。ここは付喪神を使って、上手に対処しよう。お、ちょうどいいものがあった。これを使おう」
 
 九十九はカバンから熊よけの鈴を取り外した。

『この国におわします八百万の神々よ、我が依代に宿り、我に力を貸したまえ』
 
 魂の宿った鈴は付喪神となり、音を鳴らして巨大なトカゲを挑発した。

 ちりん。ちりん。

 鈴の付喪神は、トカゲの周囲を飛び回りながら、鈴の音を鳴らし続けた。

『よし、上手くいった。あとはこいつを上手く誘導すれば──』

 挑発されて怒ったトカゲは、鈴の付喪神を追いかけた。

『いいぞ。そのまま囮として、このトカゲの気を引いてくれ』
 
 囮となった付喪神は、巨大トカゲを崖のある場所までおびき寄せた。

 付喪神に気を取られていたトカゲは、崖があることに気づくのが遅れた。
 そのままトカゲは、崖下へと転落していった。
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