上 下
29 / 90
ファイル.03 ツチノコ狂想曲

ファイル.03 ツチノコ狂想曲(2)

しおりを挟む
「ふふ、ちょろい仕事が来ましたねー。私と先生の能力を使えば、あっという間に見つけられますよー」

「まあね。でも、そう上手くいくとは……」

「百万~、百万~」

 上機嫌になったサキは自然と歌を歌っていた。

 一週間後、二人はツチノコの目撃情報があったG県の八十狩村へと向かった。

「取材費を前借りしたおかげで、新幹線でこれましたねー」
 
「ああ、G県は東京からかなり離れているからね。新幹線に乗れたのは大きいよ。望月編集長様々だな」

 八十狩村ではツチノコの目撃情報が出てから、生きたツチノコに三百万円の懸賞金をかけている。
 そのため、ツチノコを捕まえると高額な賞金をもらえることを知った人々が、全国からこの村に殺到していた。

「ほんと、ツチノコって人気なんですねー。生捕りにすれば、村から懸賞金三百万ですって」
 
「ああ、三百万円あれば、大分楽になるからな。がんばって捕まえよう」

「ふふふ。三百万~、三百まーん~」

 村に着いた二人は、とりあえず村役場にいって話を聞くことにした。

「村役場でこの村全体の地図をもらってきました。これで私がダウジングして、さっさと居場所を見つけて捕獲しちゃいましょー」

 しかし、サキがダウジングしても、ツチノコの反応は無かった。

「おかしいですねー。私のダウジングが反応しないなんてこと、ありえないのにー」

「もしかして、この村にはツチノコ自体がいないんじゃないか?」

「そんなー。でも、こんなに目撃情報があるんですよー」

「ツチノコによく似た生物と見間違えたのかもしれない。例えば、餌を食べてお腹が膨れているヘビとか。以前にも妊娠していてお腹が膨らんでいるマムシをツチノコと勘違いしたことがあったって聞いたことがあるよ」

「そんなー」
 
「ま、せっかくだからもう少しだけ調査してみよう。似た生物でもなんとか誤魔化して、ツチノコってことにすれば、お金、もらえるかもしれないし」

「そうですよね。どうせ、何か言われても知らなかったってしらばっくれればいいだけですものねー。よーし、ツチノコモドキ、捕まえましょー」

 二人はツチノコの目撃情報がある丘に向かった。
 
「わあー、先生。青い花が咲いていますよー。綺麗ですねー」
 
「これはネモフィラだね。一面に咲いているとはねー」

「まるで、青い海原みたいで、本当に綺麗ですー」

 この丘は、至る所に青い花が咲き乱れていて、丘を埋め尽くす花が、まるで青い海のように見えることから、絶景ポイントとして、近年観光地として人気となっていた。

「それにしても、人が多いね」

「ほんとー、綺麗な景色が台無しですー」

 ネモフィラの咲き乱れた丘には、花の数に負けないくらいの人で溢れていた。

「みんなツチノコが目当てなんですかねー。せっかくの綺麗なお花が踏み荒らされてて、かわいそうです」

「ツチノコの賞金に目が眩んだ人間たちだ。花なんて眼中に無いよ」

「三百万ですからねー。仕方ないのかー」

 その時、誰かが叫んだ。

「あ、あれ、ツチノコじゃない?」

「え、ツチノコ? どこだよ!」

「おい待て、俺が捕まえるから!」

 その声が聞こえた途端、倒れるドミノのように人が殺到した。

「どいて、三百万円は私のものよ!」

「邪魔だ! どけよ!」

「どけえええええ!」

 やんちゃなお兄さんたちが、目の前にいた小さな女の子を突き飛ばした。

「きゃあああああ!」

 それを見たサキが女の子に駆け寄る。

「大丈夫ですか。ちょっと、あなたたち、危ないじゃないですか!」

「ああん? こいつがぼーと突っ立ってるのが悪いんだろうが! お前も邪魔するんじゃねえよ!」

 ガラの悪いお兄さんはサキを睨んできた。

「うう、怒られてしまいましたー。サキ、何も悪いことしてないのにー」

「お嬢さん、大丈夫かい?」

「うん、大丈夫。助けてくれてありがとう」

「それはよかったです。でも、ちょっと、危険な状態ですねー。いつ事故が起きてもおかしくないです」

「ツチノコのためなら、なんだってしそうな感じで、殺気立っているね。みんな、この物価高で生活が苦しいんだろうけど」

「大変なのは、私たちだけじゃないんですね」

「ま、仕方ない、別の場所を探そう。ツチノコも警戒しているだろうから、人がたくさんいる場所を探しても見つかる確率は低いだろうしね」

「なるほど。人が近づかないようなところにいるかもってことですねー」

「そうだね。例えばこの先に崖が見えるだろう? あの崖の下なんかはなかなか人がいけないだろうからね。そういうところに潜んでるんじゃないかな?」

「そうですよね。それじゃ先生、私たちは人がいないところを狙って探していきましょー」
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

校長室のソファの染みを知っていますか?

フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。 しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。 座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る

【R18】もう一度セックスに溺れて

ちゅー
恋愛
-------------------------------------- 「んっ…くっ…♡前よりずっと…ふか、い…」 過分な潤滑液にヌラヌラと光る間口に亀頭が抵抗なく吸い込まれていく。久しぶりに男を受け入れる肉道は最初こそ僅かな狭さを示したものの、愛液にコーティングされ膨張した陰茎を容易く受け入れ、すぐに柔らかな圧力で応えた。 -------------------------------------- 結婚して五年目。互いにまだ若い夫婦は、愛情も、情熱も、熱欲も多分に持ち合わせているはずだった。仕事と家事に忙殺され、いつの間にかお互いが生活要員に成り果ててしまった二人の元へ”夫婦性活を豹変させる”と銘打たれた宝石が届く。

妻がヌードモデルになる日

矢木羽研
大衆娯楽
男性画家のヌードモデルになりたい。妻にそう切り出された夫の動揺と受容を書いてみました。

小学生最後の夏休みに近所に住む2つ上のお姉さんとお風呂に入った話

矢木羽研
青春
「……もしよかったら先輩もご一緒に、どうですか?」 「あら、いいのかしら」 夕食を作りに来てくれた近所のお姉さんを冗談のつもりでお風呂に誘ったら……? 微笑ましくも甘酸っぱい、ひと夏の思い出。 ※性的なシーンはありませんが裸体描写があるのでR15にしています。 ※小説家になろうでも同内容で投稿しています。 ※2022年8月の「第5回ほっこり・じんわり大賞」にエントリーしていました。

パワハラ女上司からのラッキースケベが止まらない

セカイ
ライト文芸
新入社員の『俺』草野新一は入社して半年以上の間、上司である椿原麗香からの執拗なパワハラに苦しめられていた。 しかしそんな屈辱的な時間の中で毎回発生するラッキースケベな展開が、パワハラによる苦しみを相殺させている。 高身長でスタイルのいい超美人。おまけにすごく巨乳。性格以外は最高に魅力的な美人上司が、パワハラ中に引き起こす無自覚ラッキースケベの数々。 パワハラはしんどくて嫌だけれど、ムフフが美味しすぎて堪らない。そんな彼の日常の中のとある日の物語。 ※他サイト(小説家になろう・カクヨム・ノベルアッププラス)でも掲載。

イケメン彼氏は年上消防士!鍛え上げられた体は、夜の体力まで別物!?

すずなり。
恋愛
私が働く食堂にやってくる消防士さんたち。 翔馬「俺、チャーハン。」 宏斗「俺もー。」 航平「俺、から揚げつけてー。」 優弥「俺はスープ付き。」 みんなガタイがよく、男前。 ひなた「はーいっ。ちょっと待ってくださいねーっ。」 慌ただしい昼時を過ぎると、私の仕事は終わる。 終わった後、私は行かなきゃいけないところがある。 ひなた「すみませーん、子供のお迎えにきましたー。」 保育園に迎えに行かなきゃいけない子、『太陽』。 私は子供と一緒に・・・暮らしてる。 ーーーーーーーーーーーーーーーー 翔馬「おいおい嘘だろ?」 宏斗「子供・・・いたんだ・・。」 航平「いくつん時の子だよ・・・・。」 優弥「マジか・・・。」 消防署で開かれたお祭りに連れて行った太陽。 太陽の存在を知った一人の消防士さんが・・・私に言った。 「俺は太陽がいてもいい。・・・太陽の『パパ』になる。」 「俺はひなたが好きだ。・・・絶対振り向かせるから覚悟しとけよ?」 ※お話に出てくる内容は、全て想像の世界です。現実世界とは何ら関係ありません。 ※感想やコメントは受け付けることができません。 メンタルが薄氷なもので・・・すみません。 言葉も足りませんが読んでいただけたら幸いです。 楽しんでいただけたら嬉しく思います。

おじさん、女子高生になる

一宮 沙耶
大衆娯楽
だれからも振り向いてもらえないおじさん。 それが女子高生に向けて若返っていく。 そして政治闘争に巻き込まれていく。 その結末は?

ママと中学生の僕

キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。

処理中です...