怪異探偵№99の都市伝説事件簿

安珠あんこ

文字の大きさ
上 下
5 / 90
ファイル.01 鏡に映る迷子の少女と帰れない駅

ファイル.01 鏡に映る迷子の少女と帰れない駅(5)

しおりを挟む
「先生、思ったより大きい駅ですねー」

「都市伝説では、きさらぎ駅は無人の小さな駅らしいが……やはりここはきさらぎ駅とは少し違うようだね」

「うーん、これだけ広いと、百華さんを探すのが大変そうですー」

「そうだねえ。ま、その分、調査のしがいがあるってもんさ」

(あとは、ここからどうやって脱出するか……、だけど)

 九十九は胸ポケットから手帳を取り出すと、駅構内の簡単な見取図を描き出した。

「あ、先生、今回は珍しく地図を描くんですねー」

「うん、ここは思ったよりずっと広そうだから、迷子にならないようにと思ってね。サキ君、君も何か気づいたことがあったらすぐに私に教えてくれ」

「はーい先生。わかりましたー」

 ささぎ駅は、地方都市にある駅と同じぐらいの大きさがあるようで、駅ビルの中に存在しているようだった。

 十三番ホームとは違い、ホームにも乗客がいた。
 駅ビルの中にも人がいるのが見える。

「へー、意外と人がいるんですねー」

「これでは依頼人を探すのに時間がかかりそうだ。サキ君、少しだけ急ごうか……」

 ふいに、線路に目をやった九十九は、少し沈黙した後、サキに声をかけた。

「……サキ君、線路は見るな。決して見るなよ」

「わかりました先生……見てはいけないものがあるのですね?」

「ああ……」

 線路には、電車に轢かれてバラバラになった男性の死体があった。

(普通に見えてもここはやはり、怪異の駅だ。そうこなくっちゃね……)

 九十九は心の中から湧き出る興奮を抑えきれずに、くすくすと笑った。

「どうやらホームにはいなそうだよ。サキ君、駅ビルの方へと行ってみようか?」

「はーい。駅ビルだと、一度改札を通るようですねー」

 二人はホームから階段を上って改札へと向かった。
 その途中にも、百華と思わしき人物はいなかった。

 改札口へと着いた二人。
 だが、何故か改札に駅員は見当たらなかった。

「あれー、駅員さんいませんねえー」

「切符を持っていない私たちには好都合だよ。このまま通らせてもらおう」

 二人はそのまま改札のゲートを乗り越えて、駅ビルに入った。

「駅ビルも広いですねー。先生どうします? 私のダウジングでサクッと見つけちゃいますか?」

「いや、それは最後の最後までとっておこう。怪異の正体がわからない段階で、こちらの手の内を晒すのは得策じゃないよ。時間はかかっても、一階から順に探していこう」

「それもそうですね。わかりましたー」

 駅ビルの中に多くの人がいた。

 しかし、その中の誰もが、二人を認識していないかのように、二人が存在しないかのように振る舞っていた。

「なんか私たち、無視されてますねー」

「というより、彼らに認識されていないみたいだ」

「ちょっと嫌な感じですねー。私、無視されるの嫌いなんですよー」

「まあまあ。むしろ好都合じゃないか。自分たちに反応しない人間は除外して、百華さんを探すことに集中できる」

 一階のフロアを探し終えた二人が、二階へ上がろうとしたその時……。

「九十九さんですね? 私、二宮百華です」
しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

【総集編】日本昔話 パロディ短編集

Grisly
児童書・童話
❤️⭐️お願いします。  今まで発表した 日本昔ばなしの短編集を、再放送致します。 朝ドラの総集編のような物です笑 読みやすくなっているので、 ⭐️して、何度もお読み下さい。 読んだ方も、読んでない方も、 新しい発見があるはず! 是非お楽しみ下さい😄 ⭐︎登録、コメント待ってます。

シンクの卵

名前も知らない兵士
児童書・童話
小学五年生で文房具好きの桜井春は、小学生ながら秘密組織を結成している。  メンバーは四人。秘密のアダ名を使うことを義務とする。六年生の閣下、同級生のアンテナ、下級生のキキ、そして桜井春ことパルコだ。  ある日、パルコは死んだ父親から手紙をもらう。  手紙の中には、銀貨一枚と黒いカードが入れられており、カードには暗号が書かれていた。  その暗号は市境にある廃工場の場所を示していた。  とある夜、忍び込むことを計画した四人は、集合場所で出くわしたファーブルもメンバーに入れて、五人で廃工場に侵入する。  廃工場の一番奥の一室に、誰もいないはずなのにランプが灯る「世界を変えるための不必要の部屋」を発見する五人。  そこには古い机と椅子、それに大きな本とインクが入った卵型の瓶があった。  エポックメイキング。  その本に万年筆で署名して、正式な秘密組織を発足させることを思いつくパルコ。  その本は「シンクの卵」と呼ばれ、書いたことが現実になる本だった。

秘密

阿波野治
児童書・童話
住友みのりは憂うつそうな顔をしている。心配した友人が事情を訊き出そうとすると、みのりはなぜか声を荒らげた。後ろの席からそれを見ていた香坂遥斗は、みのりが抱えている謎を知りたいと思い、彼女に近づこうとする。

【総集編】童話パロディ短編集

Grisly
児童書・童話
❤️⭐️お願いします。童話パロディ短編集

鎌倉西小学校ミステリー倶楽部

澤田慎梧
児童書・童話
【「鎌倉猫ヶ丘小ミステリー倶楽部」に改題して、アルファポリスきずな文庫より好評発売中!】 https://kizuna.alphapolis.co.jp/book/11230 【「第1回きずな児童書大賞」にて、「謎解きユニーク探偵賞」を受賞】 市立「鎌倉西小学校」には不思議な部活がある。その名も「ミステリー倶楽部」。なんでも、「学校の怪談」の正体を、鮮やかに解明してくれるのだとか……。 学校の中で怪奇現象を目撃したら、ぜひとも「ミステリー倶楽部」に相談することをオススメする。 案外、つまらない勘違いが原因かもしれないから。 ……本物の「お化け」や「妖怪」が出てくる前に、相談しに行こう。 ※本作品は小学校高学年以上を想定しています。作中の漢字には、ふりがなが多く振ってあります。 ※本作品はフィクションです。実在の人物・団体とは一切関係ありません。 ※本作品は、三人の主人公を描いた連作短編です。誰を主軸にするかで、ジャンルが少し変化します。 ※カクヨムさんにも投稿しています(初出:2020年8月1日)

お姫様の願い事

月詠世理
児童書・童話
赤子が生まれた時に母親は亡くなってしまった。赤子は実の父親から嫌われてしまう。そのため、赤子は血の繋がらない女に育てられた。 決められた期限は十年。十歳になった女の子は母親代わりに連れられて城に行くことになった。女の子の実の父親のもとへ——。女の子はさいごに何を願うのだろうか。

R:メルヘンなおばけやしき

stardom64
児童書・童話
ある大雨の日、キャンプに訪れた一人の女の子。 雨宿りのため、近くにあった洋館で一休みすることに。 ちょっぴり不思議なおばけやしきの探検のおはなし☆

シャルル・ド・ラングとピエールのおはなし

ねこうさぎしゃ
児童書・童話
ノルウェジアン・フォレスト・キャットのシャルル・ド・ラングはちょっと変わった猫です。人間のように二本足で歩き、タキシードを着てシルクハットを被り、猫目石のついたステッキまで持っています。 以前シャルル・ド・ラングが住んでいた世界では、動物たちはみな、二本足で立ち歩くのが普通なのでしたが……。 不思議な力で出会った者を助ける謎の猫、シャルル・ド・ラングのお話です。

処理中です...