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私、夢で見た理想の世界に転生したいなって思いました
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あの日まで、私たちは幸せに暮らしていました――。
この国で、あの忌まわしい事故が起きるまでは――。
◇◇◇
こんにちは。
私の名前はリサ。
この国に住む十三歳の女の子です。
私の住む国では、みんな魔法が使えます。
この国の子供はみんな魔法学校にいって、魔法を学んでいるからです。
それに、魔法があまり上手ではない人でも、魔道具という魔力で動く機械があったので、問題なく生活ができました。
そして、この国には魔道炉という、魔力を作り出しているプラントが存在します。
その魔道炉から生成された魔力が使えるので、私の国では魔法も魔道具も使い放題なんです。
この頃の私たちは何も不自由がなく、快適に生活していました。
でも、ある時、この国の中央にある魔道炉で、大きな事故が発生してしまったのです。
その日、この国ではとてつもなく大きな地震が発生しました。
魔道炉は、悪意を持った人物の標的にされることもあり、魔法で何重にも強化されていて、頑丈な造りとなっています。
そのため、魔道炉の外壁は大きな地震にも耐えることが出来ました。
しかし、その内部では、地震の影響で魔力が暴走していて、圧力がどんどん上がっていき、最後は爆発を起こしてしまいました。
地震で大きな被害を受けたこの国は、魔道炉の爆発事故によって、魔力の元になる魔素という物質が国中に拡散してしまい、完全に崩壊しました。
魔素は、私たちの身体を蝕んで、魔物に変えてしまう恐ろしい物質だったからです。
私の国では魔素を大量に吸い込んで魔物化してしまう人がたくさん出てきてしまいました。
そして、みんな、魔物化するのを恐れて、心が病んでしまったのです。
そのせいで、この国の治安は急激に悪くなって、食べ物も手に入らなくなりました。
◇◇◇
私の父は、いつも優しい自慢のパパでした。
でも、魔素の影響で魔物化が進行してしまって、いつのまにか家を出ていってしまい、二度と帰ってはきませんでした。
優しかった父は、きっと、自分が魔物化して、私たちに迷惑をかけたり、危害を加えてしまうのが怖かったんだと思います。
父がいなくなってしまってからは、私の母が、街に行って働いて、なんとか食べ物を買ってきてくれました。
ですが、母は街に行くたびに、男の人たちからひどいことをされていました。
そうしないと、私たちは、食べることが出来ないから、仕方なくそうしてるのだと言っていました。
母は、街の男の人たちから、ひどいことをされ続けたせいで、心も身体もボロボロになっていきました。
そのせいで、私の母はどんどん元気を失くして、最後は、何も喋らなくなってしまったのです。
だから、私は母を助けようと、森で食べ物を見つけることにしました。
私の住んでいる家の近くには、大きな森があります。
でも、そこは凶暴な魔物がたくさん生息している、危険な場所でした。
私は父や母に、絶対に森には近づくなと教えられてきました。
けれど、そんなことを言っている場合ではなかったので、私は覚悟を決めて、森の奥の方へと進んでいきました。
森の中は薄暗かったですが、意外と食べられそうな植物や、キノコが生えていたので、私はそれを採集しながら進んでいきました。
この時の私は、食べ物を探すのに夢中になっていて、周囲を警戒するのを忘れていました。
気がついた時、私は大きな狼の魔物に取り囲まれていました。
私は、持っていた荷物に魔力を込めてうんと硬くしてから、目の前の狼に思い切りぶつけます。
そして、閃光の魔法を使って狼たちの目をくらませてから、必死に走って逃げました。
でも、逃げるのに夢中で、私は目の前が崖になっていることに気が付きませんでした。
そして、そのまま私は、崖の底まで転げ落ちてしまいました。
「うわあああああ!!!」
狼はもう、追ってきませんでした。
でも、落ちた時に全身をぶつけたみたいで、私は身体中が痛くて動けなくなりました。
◇◇◇
あまりの痛さで意識が飛んでしまったようで、私は夢を見ていました。
夢の中の私はニホンという国で生活しています。
ここでは、現実の世界とは違って、食べ物が普通に食べられます。
夜はふかふかのベットで寝れますし、何故か魔物が一匹もいませんでした。
だから、夢の中の私は、まるで天国にいるような感覚でした。
……私一人で外を歩いていても、誰からも何もされなかったですし。
でも、これは夢だということがわかっていたから、私はとても悲しくなりました。
現実の私は、もうすぐ死んでしまう。
回復魔法をかけたところで、もう身体が持たないわ。
そう思うと、悔しくて、悔しくて、たまらなかった。
私たちが、何をしたの?
何故、私たちだけが、こんな目に合わなくてはならないの?
そう思うと、悔しすぎる気持ちでいっぱいです。
けれど、もう涙も出てきません。
全身が痛くて、そんな元気もなかったから。
◇◇◇
本当は、狼じゃなかったんです。
狼じゃなくて、身体が半分以上も魔物になっていた、大人の男たちが追いかけてきました。
私の身体も魔素の影響で、少しずつ魔物化していましたけど、彼らはそんな私から見ても、驚くぐらいに魔物化していて、まるで、モンスターのオークのようでした。
男たちは、いやらしい顔を浮かべて、逃げる私の後を追ってきます。
もう魔法を使う気力も無かった私は、それでも必死に逃げました。
でも、すぐに追いつかれてしまいました。
そのまま、私は男たちに無理やり押し倒されて、服を剥ぎ取られてしまいました。
そして……、男たちは私の身体の上に、かわるがわるのしかかってきました。
お腹の中がとても痛かったけど、私にはもう悲鳴をあげる気力も無かった。
私は、男たちに抵抗も出来ず、彼らにされるがままに、まるで子供がおもちゃを壊すように、乱暴に扱われていきました。
彼らは……、私のお腹の中から血が溢れ出してくるのを見て、なんだ、もう壊れたのかと、いやらしい顔でニヤニヤと笑っていました。
男たちの一人が、私の耳元で、お前は使い物にならなくなったから、もういらないよってつぶやきました。
それから、彼らは私を崖の下に放り投げたのです。
崖の底まで転げ落ちた私は、全身の痛みに耐えられずに、すぐに意識を失っていました。
そして、あのニホンという国で暮らす夢を見ました。
◇◇◇
もう、話す気力も無くなってきました。
あれ、私、誰に話しかけてたんでしょう?
もう、わからないです。
もう、どうでもいいです。
「……叶えてあげます」
えっ、今なんて?
「かわいそうなリサさん。最後に、私が願いを叶えてあげます。さあ、願いを言ってください」
私の目の前に、赤いメガネをかけた黒いショートヘアのお姉さんが現れて言いました。
……あなたは誰?
「私は、この世界を作った神様の代わりにあなたを助けに来た、ミソラです。残念ですが、あなたの命はまもなく終わりを向かえます。でも、その前に、私が一つだけあなたの願いを叶えてあげます。時間がありません。さあ、早く願いを言ってください」
私は……私は、夢で見たニホンという国で暮らしたいです!!!
私をニホンに転生してください!!!!!
「そう。それがあなたの願いなのね。わかったわ。それじゃあ、あなたをニホンに転生させてあげましょう」
そこで、私の意識は途絶えました。
◇◇◇
「起きなさーい。理沙。学校に遅刻するわよ」
「はーい。母さん、今行くー」
なんだ、夢だったのか。
昨日、ネット小説のサイトでお話を読みすぎたのがいけなかったのかな?
私の名前は理沙。
ニホンに住む十三歳の女の子です。
私の住む国では、誰も魔法が使えません。
だから、私たちは魔力の代わりに電気を使って生活しています。
魔道具の代わりに、電気を使って動く、電化製品が普及しているので、この国での生活は何も不自由がなく、快適です。
……でも、私は絶対に忘れないよ。
あの時の、あいつらの表情。
そして、あの時受けた痛みは、決して忘れないからね。
この世界で、私は復讐するんだ。
私とママを、ゴミみたいに弄んで捨てた、男たちにね。
ふふふ、この世界には魔法が無いけど、私は転生した時に魔法の力を受け継いでいるんだ。
この国の男たちが、幸せそうにしているのをみると。
……ムカつくんだよ。
みんなみんな、壊してやる。
私の魔法で、全部壊してやる。
私たちが受けた苦痛を、お前らも味わえ!!!
◇◇◇
「リサさん、好きにしていいですよー。だってここは私が作ったあなたのための世界ですからねー」
その様子を見ていた緑色の髪をした神様がつぶやいた。
「ちょっと、ヒスイさん。この間、あなたの代わりに王妃様を助けにいったじゃないですか。その時私、彼女にいきなりビンタされたんですよ。あの子ったら、私のメガネを吹っ飛ばすくらい本気で叩いてきたんです。だから今、私めちゃくちゃ切れてます。こう見えて私、本気で腹立っているんですよ。だってあれ、完全にパワーハラスメントですから。なので、私もあの子と一緒にこの世界壊すの、手伝わさせてもらいます!!!」
赤いメガネをかけた少女が、静かに怒りながらヒスイに返答した。
「ミソラさん、ごめんなさいですー。でも、やりすぎないでくださいよー」
「どうせ最後はあなたが跡形も無く消し去る世界なんだし、彼らは死んでもまた新しい世界に転生されるんだから、問題無いでしょう?」
「でも、あんまり好き勝手やると、私より偉い神様に怒られちゃうんですー。実際、一度怒られてるんで、ほどほどにお願いしますねー」
「あなたが怒られない程度にってことですか? この国を跡形も無く消し去ろうと思ったんですが、仕方ないですね。我慢することにします」
「はい。それでお願いしますー」
ヒスイは、申し訳なさそうにミソラに頼み込んだ。
(怒ったミソラさんは本当に怖いですー。なるべく怒らせないようにしないといけないですねー)
◇◇◇
リサを崖に投げ捨てた男たちの前に、黒いおかっぱ頭で、赤いメガネをかけた少女が現れた。
「くく、まさか次の獲物が向こうからやってくるとはなあ。今日はついてるぜ」
「ああ、それにこいつは、さっきのガキよりは腹が壊れずに持ちこたえそうだ。あのガキより年上みたいだからなあ。胸もでかいし、上物だ」
「ふふ、かわいいお嬢ちゃん。お前は俺たちが満足するまで、壊れるんじゃねえぞ」
少女を見た男たちは、ニヤニヤしながら彼女に近づいていった。
「あなたたち、本当に醜い見た目ですね。今日の私は、はらわたが煮えくりかえるほど怒っていますから。謝っても許してはあげませんよ」
おかっぱ頭の少女は、男たちを軽蔑するような、冷たい視線を向けながら語りかけた。
「はは、面白え冗談だ。お前、自分の置かれている状況がわかってねえようだなあ」
男の一人が、手に持った斧を振り上げて、少女を威嚇しようとした。
その時……。
「おい、ちょっと待て、なんだよあれ!!!」
男たちは、彼女の背後に、無数の大きな狼の魔物が現れたことに気づいた。
「この狼さんたちは、あなたたちが死ぬまで追いかけるのをやめませんよ。まあ、恨むならあの子に酷いことをした自分たちを恨んでくださいね。これで、少しは私の腹の虫が治るとよいのですが……」
狼たちは男たちを取り囲むと、一斉に攻撃を仕掛けた。
「くそっ、この狼ども、見た目よりずっと強いじゃねえか!! お前たち、ひとまず退却するぞ!!!」
しかし、狼たちは、逃げる男たちをどこまでも追いかけ続けた。
「くそっ!! しつこい犬っころだ!! あっちへい…………」
「あっ!?」
狼たちから必死に逃げていた男たちは、彼らの近くに崖があったことをすっかり忘れていた。
崖に気づくのが遅れた彼らは、勢いよく崖から転落した。
そして、そのまま底まで落ちて、絶命した。
「やっぱり大祇村の狼さんたちは強いですね。力を貸してくれて、ありがとうございます。後できちんとお礼しますからね」
「わおおおおおん」
ミソラが別世界から召喚した狼たちは、彼女に別れの遠吠えをあげると、元の世界へと帰っていった。
「でも、あまり心が晴れませんでした。やはり、彼らが醜い見た目だったのがいけなかったようですね」
ミソラはふわりと空に飛び上がると、彼らの元へと降り立ち、全員が生き絶えていることを確認した。
「ふふ、身体が魔物化していても、やはりこの高さから落ちれば、生きてはいられないですよね。でも、こうやって、人が崖から転落するのをみると、なぎささん、あなたのことを思い出しますよ。ああ、少しだけ気分が晴れた。やっぱり彼らをやっつけて正解でした」
そう話すと、少しだけ笑顔になったミソラは、この世界から離脱した。
この国で、あの忌まわしい事故が起きるまでは――。
◇◇◇
こんにちは。
私の名前はリサ。
この国に住む十三歳の女の子です。
私の住む国では、みんな魔法が使えます。
この国の子供はみんな魔法学校にいって、魔法を学んでいるからです。
それに、魔法があまり上手ではない人でも、魔道具という魔力で動く機械があったので、問題なく生活ができました。
そして、この国には魔道炉という、魔力を作り出しているプラントが存在します。
その魔道炉から生成された魔力が使えるので、私の国では魔法も魔道具も使い放題なんです。
この頃の私たちは何も不自由がなく、快適に生活していました。
でも、ある時、この国の中央にある魔道炉で、大きな事故が発生してしまったのです。
その日、この国ではとてつもなく大きな地震が発生しました。
魔道炉は、悪意を持った人物の標的にされることもあり、魔法で何重にも強化されていて、頑丈な造りとなっています。
そのため、魔道炉の外壁は大きな地震にも耐えることが出来ました。
しかし、その内部では、地震の影響で魔力が暴走していて、圧力がどんどん上がっていき、最後は爆発を起こしてしまいました。
地震で大きな被害を受けたこの国は、魔道炉の爆発事故によって、魔力の元になる魔素という物質が国中に拡散してしまい、完全に崩壊しました。
魔素は、私たちの身体を蝕んで、魔物に変えてしまう恐ろしい物質だったからです。
私の国では魔素を大量に吸い込んで魔物化してしまう人がたくさん出てきてしまいました。
そして、みんな、魔物化するのを恐れて、心が病んでしまったのです。
そのせいで、この国の治安は急激に悪くなって、食べ物も手に入らなくなりました。
◇◇◇
私の父は、いつも優しい自慢のパパでした。
でも、魔素の影響で魔物化が進行してしまって、いつのまにか家を出ていってしまい、二度と帰ってはきませんでした。
優しかった父は、きっと、自分が魔物化して、私たちに迷惑をかけたり、危害を加えてしまうのが怖かったんだと思います。
父がいなくなってしまってからは、私の母が、街に行って働いて、なんとか食べ物を買ってきてくれました。
ですが、母は街に行くたびに、男の人たちからひどいことをされていました。
そうしないと、私たちは、食べることが出来ないから、仕方なくそうしてるのだと言っていました。
母は、街の男の人たちから、ひどいことをされ続けたせいで、心も身体もボロボロになっていきました。
そのせいで、私の母はどんどん元気を失くして、最後は、何も喋らなくなってしまったのです。
だから、私は母を助けようと、森で食べ物を見つけることにしました。
私の住んでいる家の近くには、大きな森があります。
でも、そこは凶暴な魔物がたくさん生息している、危険な場所でした。
私は父や母に、絶対に森には近づくなと教えられてきました。
けれど、そんなことを言っている場合ではなかったので、私は覚悟を決めて、森の奥の方へと進んでいきました。
森の中は薄暗かったですが、意外と食べられそうな植物や、キノコが生えていたので、私はそれを採集しながら進んでいきました。
この時の私は、食べ物を探すのに夢中になっていて、周囲を警戒するのを忘れていました。
気がついた時、私は大きな狼の魔物に取り囲まれていました。
私は、持っていた荷物に魔力を込めてうんと硬くしてから、目の前の狼に思い切りぶつけます。
そして、閃光の魔法を使って狼たちの目をくらませてから、必死に走って逃げました。
でも、逃げるのに夢中で、私は目の前が崖になっていることに気が付きませんでした。
そして、そのまま私は、崖の底まで転げ落ちてしまいました。
「うわあああああ!!!」
狼はもう、追ってきませんでした。
でも、落ちた時に全身をぶつけたみたいで、私は身体中が痛くて動けなくなりました。
◇◇◇
あまりの痛さで意識が飛んでしまったようで、私は夢を見ていました。
夢の中の私はニホンという国で生活しています。
ここでは、現実の世界とは違って、食べ物が普通に食べられます。
夜はふかふかのベットで寝れますし、何故か魔物が一匹もいませんでした。
だから、夢の中の私は、まるで天国にいるような感覚でした。
……私一人で外を歩いていても、誰からも何もされなかったですし。
でも、これは夢だということがわかっていたから、私はとても悲しくなりました。
現実の私は、もうすぐ死んでしまう。
回復魔法をかけたところで、もう身体が持たないわ。
そう思うと、悔しくて、悔しくて、たまらなかった。
私たちが、何をしたの?
何故、私たちだけが、こんな目に合わなくてはならないの?
そう思うと、悔しすぎる気持ちでいっぱいです。
けれど、もう涙も出てきません。
全身が痛くて、そんな元気もなかったから。
◇◇◇
本当は、狼じゃなかったんです。
狼じゃなくて、身体が半分以上も魔物になっていた、大人の男たちが追いかけてきました。
私の身体も魔素の影響で、少しずつ魔物化していましたけど、彼らはそんな私から見ても、驚くぐらいに魔物化していて、まるで、モンスターのオークのようでした。
男たちは、いやらしい顔を浮かべて、逃げる私の後を追ってきます。
もう魔法を使う気力も無かった私は、それでも必死に逃げました。
でも、すぐに追いつかれてしまいました。
そのまま、私は男たちに無理やり押し倒されて、服を剥ぎ取られてしまいました。
そして……、男たちは私の身体の上に、かわるがわるのしかかってきました。
お腹の中がとても痛かったけど、私にはもう悲鳴をあげる気力も無かった。
私は、男たちに抵抗も出来ず、彼らにされるがままに、まるで子供がおもちゃを壊すように、乱暴に扱われていきました。
彼らは……、私のお腹の中から血が溢れ出してくるのを見て、なんだ、もう壊れたのかと、いやらしい顔でニヤニヤと笑っていました。
男たちの一人が、私の耳元で、お前は使い物にならなくなったから、もういらないよってつぶやきました。
それから、彼らは私を崖の下に放り投げたのです。
崖の底まで転げ落ちた私は、全身の痛みに耐えられずに、すぐに意識を失っていました。
そして、あのニホンという国で暮らす夢を見ました。
◇◇◇
もう、話す気力も無くなってきました。
あれ、私、誰に話しかけてたんでしょう?
もう、わからないです。
もう、どうでもいいです。
「……叶えてあげます」
えっ、今なんて?
「かわいそうなリサさん。最後に、私が願いを叶えてあげます。さあ、願いを言ってください」
私の目の前に、赤いメガネをかけた黒いショートヘアのお姉さんが現れて言いました。
……あなたは誰?
「私は、この世界を作った神様の代わりにあなたを助けに来た、ミソラです。残念ですが、あなたの命はまもなく終わりを向かえます。でも、その前に、私が一つだけあなたの願いを叶えてあげます。時間がありません。さあ、早く願いを言ってください」
私は……私は、夢で見たニホンという国で暮らしたいです!!!
私をニホンに転生してください!!!!!
「そう。それがあなたの願いなのね。わかったわ。それじゃあ、あなたをニホンに転生させてあげましょう」
そこで、私の意識は途絶えました。
◇◇◇
「起きなさーい。理沙。学校に遅刻するわよ」
「はーい。母さん、今行くー」
なんだ、夢だったのか。
昨日、ネット小説のサイトでお話を読みすぎたのがいけなかったのかな?
私の名前は理沙。
ニホンに住む十三歳の女の子です。
私の住む国では、誰も魔法が使えません。
だから、私たちは魔力の代わりに電気を使って生活しています。
魔道具の代わりに、電気を使って動く、電化製品が普及しているので、この国での生活は何も不自由がなく、快適です。
……でも、私は絶対に忘れないよ。
あの時の、あいつらの表情。
そして、あの時受けた痛みは、決して忘れないからね。
この世界で、私は復讐するんだ。
私とママを、ゴミみたいに弄んで捨てた、男たちにね。
ふふふ、この世界には魔法が無いけど、私は転生した時に魔法の力を受け継いでいるんだ。
この国の男たちが、幸せそうにしているのをみると。
……ムカつくんだよ。
みんなみんな、壊してやる。
私の魔法で、全部壊してやる。
私たちが受けた苦痛を、お前らも味わえ!!!
◇◇◇
「リサさん、好きにしていいですよー。だってここは私が作ったあなたのための世界ですからねー」
その様子を見ていた緑色の髪をした神様がつぶやいた。
「ちょっと、ヒスイさん。この間、あなたの代わりに王妃様を助けにいったじゃないですか。その時私、彼女にいきなりビンタされたんですよ。あの子ったら、私のメガネを吹っ飛ばすくらい本気で叩いてきたんです。だから今、私めちゃくちゃ切れてます。こう見えて私、本気で腹立っているんですよ。だってあれ、完全にパワーハラスメントですから。なので、私もあの子と一緒にこの世界壊すの、手伝わさせてもらいます!!!」
赤いメガネをかけた少女が、静かに怒りながらヒスイに返答した。
「ミソラさん、ごめんなさいですー。でも、やりすぎないでくださいよー」
「どうせ最後はあなたが跡形も無く消し去る世界なんだし、彼らは死んでもまた新しい世界に転生されるんだから、問題無いでしょう?」
「でも、あんまり好き勝手やると、私より偉い神様に怒られちゃうんですー。実際、一度怒られてるんで、ほどほどにお願いしますねー」
「あなたが怒られない程度にってことですか? この国を跡形も無く消し去ろうと思ったんですが、仕方ないですね。我慢することにします」
「はい。それでお願いしますー」
ヒスイは、申し訳なさそうにミソラに頼み込んだ。
(怒ったミソラさんは本当に怖いですー。なるべく怒らせないようにしないといけないですねー)
◇◇◇
リサを崖に投げ捨てた男たちの前に、黒いおかっぱ頭で、赤いメガネをかけた少女が現れた。
「くく、まさか次の獲物が向こうからやってくるとはなあ。今日はついてるぜ」
「ああ、それにこいつは、さっきのガキよりは腹が壊れずに持ちこたえそうだ。あのガキより年上みたいだからなあ。胸もでかいし、上物だ」
「ふふ、かわいいお嬢ちゃん。お前は俺たちが満足するまで、壊れるんじゃねえぞ」
少女を見た男たちは、ニヤニヤしながら彼女に近づいていった。
「あなたたち、本当に醜い見た目ですね。今日の私は、はらわたが煮えくりかえるほど怒っていますから。謝っても許してはあげませんよ」
おかっぱ頭の少女は、男たちを軽蔑するような、冷たい視線を向けながら語りかけた。
「はは、面白え冗談だ。お前、自分の置かれている状況がわかってねえようだなあ」
男の一人が、手に持った斧を振り上げて、少女を威嚇しようとした。
その時……。
「おい、ちょっと待て、なんだよあれ!!!」
男たちは、彼女の背後に、無数の大きな狼の魔物が現れたことに気づいた。
「この狼さんたちは、あなたたちが死ぬまで追いかけるのをやめませんよ。まあ、恨むならあの子に酷いことをした自分たちを恨んでくださいね。これで、少しは私の腹の虫が治るとよいのですが……」
狼たちは男たちを取り囲むと、一斉に攻撃を仕掛けた。
「くそっ、この狼ども、見た目よりずっと強いじゃねえか!! お前たち、ひとまず退却するぞ!!!」
しかし、狼たちは、逃げる男たちをどこまでも追いかけ続けた。
「くそっ!! しつこい犬っころだ!! あっちへい…………」
「あっ!?」
狼たちから必死に逃げていた男たちは、彼らの近くに崖があったことをすっかり忘れていた。
崖に気づくのが遅れた彼らは、勢いよく崖から転落した。
そして、そのまま底まで落ちて、絶命した。
「やっぱり大祇村の狼さんたちは強いですね。力を貸してくれて、ありがとうございます。後できちんとお礼しますからね」
「わおおおおおん」
ミソラが別世界から召喚した狼たちは、彼女に別れの遠吠えをあげると、元の世界へと帰っていった。
「でも、あまり心が晴れませんでした。やはり、彼らが醜い見た目だったのがいけなかったようですね」
ミソラはふわりと空に飛び上がると、彼らの元へと降り立ち、全員が生き絶えていることを確認した。
「ふふ、身体が魔物化していても、やはりこの高さから落ちれば、生きてはいられないですよね。でも、こうやって、人が崖から転落するのをみると、なぎささん、あなたのことを思い出しますよ。ああ、少しだけ気分が晴れた。やっぱり彼らをやっつけて正解でした」
そう話すと、少しだけ笑顔になったミソラは、この世界から離脱した。
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