あの子は深海魚

文字の大きさ
上 下
7 / 7

07 ずっと一緒

しおりを挟む
お風呂も入り、髪の毛を乾かし、スキンケアをすまし、歯磨きもした私達は一直線にベッドに向かった。

「ふ~快適!」
「もうそろそろ寝る?」
「寝る!寝れないかもしれないけどね!」
「なんで寝れないの?」
「よくわかんない。
けど、ここのところ私は眠れないんだ」
「そっか、寂しくないように手を繋いでねよう」
「うん」

彼女は安心したように微笑む。

「ん~やっぱねれない」
「外にでもいく?」
「行こう」

手を繋いだまま、扉を開け、外に出た。
彼女がどこに向かって歩いているのか、私には分からない。

「どこに向かってるの?」
「海」
「なんで?」
「死のうよ」
「りんと私ならずっと生きていけるよ」
「私は永遠なんてないと思ってる。
いつか別れは来るし、人の気持ちはすぐ変わる。 
らんは、そう思わないの?」

彼女が何かを浮かべながら、寂しそうに言う。

「私だってそう思うときもある。
けどさ、りんと私なら…」
「ほら、海、着いたよ」
「待ってよ、りん」
「らんが私と死んでくれないなら一人で死ぬ」

りんの瞳は真っ黒だ。
出逢ったときと同じくらい、美しい。

りんの手を握りしめる。

「私は、小さい頃からずっと満たされなかった。
なにをしても、なにをされても。
いつも全部がなくなっちゃいそうでこわかった」
「なんで引き止めるの」
「引き止めないよ」
「こんな世界、嫌じゃないの?」
「嫌だよ。
私も本当は死んじゃいたかったな」
「二人、一緒ならどこまでもいけるよね」
「うん」

そう言いながら、私は彼女に微笑んだ。

彼女の手を強く握りしめ、崖から飛び降りた。
海の色が綺麗で綺麗で、仕方がなかった。
海って何色だっけ?青色?水色?白色?
私は水色にみえる。

底に沈む感覚がする。もうおわっちゃいそうだ
人が死ぬのって一瞬なんだなって今更思ったんだ。
生きていても、死んじゃっても。
彼女と一緒だった






あの子は深海魚 終わり

しおりを挟む

この作品の感想を投稿する

あなたにおすすめの小説

女子高生は卒業間近の先輩に告白する。全裸で。

矢木羽研
恋愛
図書委員の女子高生(小柄ちっぱい眼鏡)が、卒業間近の先輩男子に告白します。全裸で。 女の子が裸になるだけの話。それ以上の行為はありません。 取って付けたようなバレンタインネタあり。 カクヨムでも同内容で公開しています。

隣の人妻としているいけないこと

ヘロディア
恋愛
主人公は、隣人である人妻と浮気している。単なる隣人に過ぎなかったのが、いつからか惹かれ、見事に関係を築いてしまったのだ。 そして、人妻と付き合うスリル、その妖艶な容姿を自分のものにした優越感を得て、彼が自惚れるには十分だった。 しかし、そんな日々もいつかは終わる。ある日、ホテルで彼女と二人きりで行為を進める中、主人公は彼女の着物にGPSを発見する。 彼女の夫がしかけたものと思われ…

夫を愛することはやめました。

杉本凪咲
恋愛
私はただ夫に好かれたかった。毎日多くの時間をかけて丹念に化粧を施し、豊富な教養も身につけた。しかし夫は私を愛することはなく、別の女性へと愛を向けた。夫と彼女の不倫現場を目撃した時、私は強いショックを受けて、自分が隣国の王女であった時の記憶が蘇る。それを知った夫は手のひらを返したように愛を囁くが、もう既に彼への愛は尽きていた。

既に王女となったので

杉本凪咲
恋愛
公爵令息のオーウェンと結婚して二年。 私は彼から愛されない日々を送っていた。 彼の不倫現場を目撃した私は、離婚を叫び家を去る。 王女になるために。

恋人の水着は想像以上に刺激的だった

ヘロディア
恋愛
プールにデートに行くことになった主人公と恋人。 恋人の水着が刺激的すぎた主人公は…

ママと中学生の僕

キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。

初めてなら、本気で喘がせてあげる

ヘロディア
恋愛
美しい彼女の初めてを奪うことになった主人公。 初めての体験に喘いでいく彼女をみて興奮が抑えられず…

娼館で元夫と再会しました

無味無臭(不定期更新)
恋愛
公爵家に嫁いですぐ、寡黙な夫と厳格な義父母との関係に悩みホームシックにもなった私は、ついに耐えきれず離縁状を机に置いて嫁ぎ先から逃げ出した。 しかし実家に帰っても、そこに私の居場所はない。 連れ戻されてしまうと危惧した私は、自らの体を売って生計を立てることにした。 「シーク様…」 どうして貴方がここに? 元夫と娼館で再会してしまうなんて、なんという不運なの!

処理中です...