変身ダンジョンヒーロー! 正体不明の特撮ヒーローとして活躍するはずが、配信切り忘れで有名女配信者を助けてしまい、初回から身バレしてしまう

まさキチ

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042 八王子ダンジョン(10)

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「ヒーローチェェェンジィィィィ!!!」

 俺が大声で叫ぶと全身が眩い光に包まれる――。

 音と光に、サルも探索者も動きを止めて、俺を見る。
 皆の視線を集める――これぞ、ヒーローだ。

 光が収まると同時に俺は変身していた――ボスザルそっくりの姿に。

 これが今回の切り札『ヒーローチェンジ』だ。
 その名の通り、相手の特定部位に1分間触れることによって変身できる。
 動物型モンスターの場合、その特定部位は頭だ。

 『ヒーローチェンジ』によって、俺はボスザルに変身した。
 姿だけでなく、スペックまでまったく同じだ。

 『ヒーローチェンジ』は格下モンスターだとスペックが下がるし、他にも色々と制約があるのだが、今回はこれで十分だ。
 なぜ、変身したのか――その理由はボスザルを倒した後に分かる。

「ウキキィーー」

 俺は威嚇するように吠える。
 ちょっと恥ずかしいけど、そこは我慢だ。
 ボスザルも呆気にとられていたが、俺の威嚇によって、ボスザルとしてプライドを取り戻したようだ。

 さあ、これからは同スペックのタイマン。
 格ゲーの同キャラ対戦のような状況で、戦闘技術だけで勝たなければならない。

 といっても、相手はただのモンスター。
 こっちは修練を積んだ探索者。

 戦いは一方的だ。
 相手に攻撃する隙を与えず、ボコボコに殴るだけ。
 ボスザルを倒すのは簡単だった。

 戦いが終わり、俺は再度吠える。

「ウキキィーー」

 俺はサルたちを見回す。
 目が合ったサルは口をパクパクと動かす。

 リップムーブメント――服従の合図だ。

 この瞬間、ボスは世代交代。
 俺がこの山のボスとなったのだ。

 そして――。

 離れていたメスザルが俺に駆け寄ってきて、一斉に抱きつく。
 彼女たちも俺をボスと認め、寵愛を受けようと必死なのだ。
 だが、メスザルに求愛されても、ちっとも嬉しくない。
 メスザルを引き剥がして――。

「ウキキィーー」

 戦闘を止めて、山に戻ってこいという合図――だと思う。
 変身機能によって、なんとなくサル語が理解できるような気がするのだ。

 実際、サルたちは俺の命令に従い、山に戻って来た。
 そこで、強そうなサルを数体を呼び寄せ――。

「ウキキィーー」

 そいつらは驚いた顔をする。
 俺の咆哮を人間の言葉にすると以下の通りだ。

 ――俺は旅に出る。次のボスはお前たちで決めろ。

 俺の言葉で次期ボス争いが始まった。
 こうなると、人間のことなんて視界に入らなくなる。
 そして、実際のサルと違って、コイツらのボス争いは殺し合いだ。
 これでサルたちの戦力が下がり、しばらくは今回のようなイレギュラーを起こさない。

 探索者がボスザルを倒した場合は、次期ボス争いよりも、探索者への怒りが上回る。
 サルどもは森へと飛び出し、手当たり次第に探索者を襲うのだ。
 これだけの数は俺たちで防げないし、初級探索者だとコイツらには勝てない。

 以上、俺がボスザルに変身した理由だ。
 ともあれ――。

 一件落着だ。

 血みどろの戦いを繰り広げるサルたち。
 それを横目にひっそりと山を下り。
 キョトンとしている探索者の間をすり抜け。
 森の中へと姿を消す。

 そして、誰からも見えなくなったところで、ヒーローへと戻る。
 それから、何食わぬ顔で探索者のところへ戻った。

「これでもう大丈夫だ」
「ヒーロー、すげえな、おい」
「さすがはダンジョンヒーロー様です」

 虎夫とリリスが興奮気味に話しかけてくる。
 他の探索者からも賞賛と感謝の言葉を浴びせかけられる。

 佑がくれた資料があって本当に良かった――。
【後書き】
次回――『打ち上げ(1)』
ハーレムだ!
やったね!

八王子ダンジョン編は長かったかな?
ひとつのダンジョンはもっと短い方がいいです?
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