変身ダンジョンヒーロー! 正体不明の特撮ヒーローとして活躍するはずが、配信切り忘れで有名女配信者を助けてしまい、初回から身バレしてしまう

まさキチ

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036 八王子ダンジョン(4)

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 蔓に絡め取られ、身動きが取れない男性三人組みパーティー。
 そして、5体のワイルドモンキーが離れてところで「キャッキャッ」と浮かれ騒ぐ。
 一人が罠にかかり、慌てて助けようとして、残りの二人も引っかかった――というところだろう。

「たっ、助けて」
「もう、やめてくれ」
「ママ~」

 磔《はりつけ》にされた三人に向かって、ワイルドモンキーが石を投げつける。
 石が当たるたびに、奴らが喜ぶ。
 ワイルドモンキーは相手をいたぶって楽しむという悪趣味な性格をしている。

 すでに何度も石をぶつけられたようだ。
 三人の装備は傷つき、顔もボコボコだ。
 大怪我を負うわけではないが、逃げることも出来ず、一方的になぶられる――この恐怖は相当なものだろう。

 彼らは俺と同じくらい、高校生だろう。

「この若さでここまで来られるのは、なかなか優秀だ」

 しかし、彼らは罠にハマり泣き叫んでいる。
 ダンジョンで油断は大敵だ。

 だが、問題ない。
 ダンジョンヒーローが駈けつけたから。

「ダンジョンにヒーローがいる限り、悪のモンスターが栄えることはない。正義の味方ダンジョンヒーローここにありッ!」

 ワイルドモンキーの気を惹くように大声で叫ぶ。

「ダンジョンヒーローさん!」
「助けてください」
「ああ、心配するな。すぐに終わらせる」

 俺は飛び出し、ワイルドモンキーに近づく。
 奴らが反応する前に、一体を掴む。

「ヒーロージャイアントスイングゥゥゥ!!!」

 ワイルドモンキーの身体をぶん回し、残りの4体をぶっ飛ばす。
 4体は絶命。掴んでいたヤツも死んだ。

 呆気にとられている三人の元へ向かい、蔦を切る。
 解放された三人はその場にへたり込んだ。

「大丈夫か?」

 俺を見上げ、三人はホッとした表情を浮かべる。
 だが、まだ身体が震えている。
 よっぽどの恐怖だったのだろう。

「ポーションは持ってるか?」
「はい、あります」

 三人は自前のポーションを飲み、傷を癒やす。
 彼らが落ち着いてから、俺は変身を解除する。
 まだショックから立ち直れず、座ったままの彼らに話を聞く。

「八王子ダンジョンは何回目ですか?」
「今日が初めてです」
「では、罠にハマったのさっきのが初めてですか?」
「はい、そうです」

 やっぱりな。
 慣れていれば、最初の一人が罠にハマった時点で警戒する。
 慣れていないから助けようとして、二次被害を起こしてしまったのだ。

「この後はどうしますか? 必要ならば出口まで送りますけど」

 さっきの女性探索者は平気そうだったけど、彼らは心配で放っておけない。
 僕の問いかけに三人は顔を見合わせる。
 三人とも同じ気持ちのようだ。

「お願いします」
「わかりました。歩けるようになったら出発しましょう」

 三人の回復を待つ間、さっきの協会職員に連絡を入れる。
 彼らを送り届けるために、出口に向かうと伝えるためだ。

「もう、大丈夫です」
「では、出発しましょう」

 三人を連れて、歩き始める。

「あ、そうでした。さっきの救出シーンを録画していたのですが、動画に使ってもよろしいですか。ご希望でしたら、モザイクとボイスチェンジャーを入れてますので」

 僕が尋ねると、三人は相談を始めた?

「どうする?」
「恥ずかしいだろ」
「俺、ママって言っちゃったぜ」
「でも、モザイクかけてくれるって言ってるし」
「うーん、バレないかな?」
「バレたら絶対にからかわれるよな」
「彼女に『今日、八王子ダンジョンに行く』って言ってるしな」
「身内なら、分かりそうだよな」
「でも、記念っちゃあ記念だぜ」
「いや、でも……」

 三人はどっちつかずで悩んでいる。

「今日は5時までやってるので、一休みしてから協会の職員に伝えてもらえれば結構ですよ。連絡がなければ採用しませんので」
「ありがとうございます。三人で相談してみます」

 この一件はとりあえず保留ということで終わらせようとしたところ、一人から話しかけられた

「ダンジョンヒーローさん。お願いがあるのですが」
「ああ、今はひでおでいいですよ」
「ひでおさん、俺たちに――」
【後書き】
次回――『八王子ダンジョン(5)』
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