変身ダンジョンヒーロー! 正体不明の特撮ヒーローとして活躍するはずが、配信切り忘れで有名女配信者を助けてしまい、初回から身バレしてしまう

まさキチ

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030 仲間佑(2)

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「おう、風呂上がったぞ」
「うん」

 僕はディズプレイから目を離し、佑を見る。
 佑が風呂に入っている間、「良い話」の内容が気になって、ずっとソワソワしていた。
 だが、佑はいつも通りの遠慮ない態度で、タオルで髪を拭きながら戻って来た――。

「ちゃんと上も着てきなよ」
「5月だってのに、もう暑いな」

 佑は上半身裸姿だ。
 特に運動をしたり、ダンジョンに潜ったりはしてないはずなのだが、しっかりと引き締まった身体をしている。
 いくら同性とはいえ、少し気恥ずかしいので視線をそらして文句を言うが――。

「おう、すまんすまん」

 まったく気にしていない様子で、残っていたグァバジュースを飲み干す。
 そして、髪をガシガシと乾かしながら、冷蔵庫を開ける。

「おっ、エナドリ残ってるじゃん」
「まだ1ダース以上残ってるよ」

 青と銀色のエナドリは佑が持ち込んだもの。
 僕は飲まないので、いっこうに減らない。
 タンスだけではなく、冷蔵庫も佑に侵食されているのだ。

 プシュッという音。
 佑はゴクゴクと流し込む。
 独特なケミカルな匂いが伝わってくる。
 苦手な匂いだ。

「さてと――」

 ひと息ついた佑はTシャツを来て、ベッドに腰掛ける。

「ファストパス取れたぞ」
「えっ!? ファストパス!?」

 佑は何気ない調子で告げるが、あまりのことに大きな声が出てしまった。

「落ち着けよ。協会も注目してるし、あれだけ活躍したら当然だろ」
「それにしたって……」
狩りの季節ハンティング・シーズンの影響が凄かったからな。まさかの大物イレギュラーの被害を未然に防いだんだぜ。それに後押しもあったしな」
「後押し?」

 誰だろうか、ずっとソロでやってきたし、他の探索者とはあまり接点がないんだけど。

「『十二騎』に頼んだら、快諾してくれたぜ」
「『十二騎』って虎夫さんのところだよね。超大御所じゃないか。お礼に行かないと」
「何言ってんだ、向こうの方がお礼したいって言ってたぞ」
「えええ」
「虎夫を助けた件で、向こうから来るって言ってたけど、断っておいた」
「そっか」
「あからさまにホッとするなよ。勘違いしてると思うけど、お礼の件はなくなったわけじゃないぞ」
「えっ、もしかして……」
「イエス!」

 佑が笑顔で親指を立てる。

「俺たちが『十二騎』の本拠地に行くことになった。向こうは『こっちが出向くべきだ』ってなかなか譲らなかったけどな」
「気が重いよ」
「ひでおがこういうの得意じゃないって知ってる。だけど、今後のためには良い経験になる。いい機会だから受けた方が良いと思うぞ」
「そうだよね……まあ、佑がそう言うなら」

 佑は僕が本当に嫌がることはしない。
 今回もあまり気乗りしないが、絶対イヤというほどではない。
 それに佑が言う通り、良い経験になるのは間違いない。

「おっけ。じゃあ、日程調整しておくぞ」
「それは任せるよ」

 確かにファストパスが取れたのはいい話だ。
 だけど、『十二騎』の件は気が重いな。
 でも、佑がやってくれたことだし、佑の言う通り良い経験になるだろう。
 佑には感謝しないとな。

「でも、アレって申請とか、大変じゃなかったっけ?」
「みたいだな」
「わざわざありがとね」
「なに、今回のケースは特別だから、話は早かったみたいだな」
「なんか他人事みたいな言い方だけど?」
「実際の手続きは知り合いに任せたからな」
「誰? 僕の知っている人?」
「いや。でも、今度、紹介する」
「うん……」

 ヒーローだとバレてから、一気に人間関係が広がっている気がする。
 それまでは佑とのコミュケーションがほとんどすべてだったからね。

「それで、早速明日のリストだ」
【後書き】
次回――『仲間佑(3)』
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