変身ダンジョンヒーロー! 正体不明の特撮ヒーローとして活躍するはずが、配信切り忘れで有名女配信者を助けてしまい、初回から身バレしてしまう

まさキチ

文字の大きさ
上 下
27 / 57

027 告知配信(1)

しおりを挟む

「おいおい、ギリギリだぜ」
「ごめん。ちょっとトラブルがあって」

 自宅に戻ったのは午後5時50分。
 告知配信の開始10分前だった。

 佑には合鍵を渡してあるので、僕より先に来て待っていたようだ。

「ほら、コレ」

 佑が皿を突き出す。
 バナナとゆで卵が山盛りだ。

「機材のスタンバイは済ませといたから、さっさと食っちゃえ」
「うん」

 急いで食べて、ミネラルウォーターを流し込む。

「ふぅ」

 ひと息ついて、配信端末の前に腰を下ろす。

 なんとか、間に合った。
 隣には佑が座っている。
 今日は二人での配信だ。

 「えつくすー」で配信告知をして、スタンバイ。
 すでに10万人以上が待機している。
 配信端末に俺だけが映るように角度に調整する。
 深呼吸して気持ちを落ち着かせ、配信時間になった――。

「こんばんは。ひでおのダンジョン配信チャンネルのひでおです。僕の配信にお越しいただき、ありがとうございます」

”ひでお~”
”待ってた”
”ヒーロー登場!”

「昨日お伝えしたように、今日はお知らせが2つあります」

”わくわく”
”なになに?”
”期待”

「ですが、その前に、スペシャルゲストの――」

”ゲスト!?”
”友人Aか?”
”まさかリリたん?”

 僕は配信端末を操作し、佑が映るようにする。

「助けるマン登場!」

 いきなりハイテンションでの顔見せだ。
 といっても、佑はお面を被っているので、素顔は見えない。

”!?!?”
”ヒーローのお面w”
”助けるマンww”
”お祭りの屋台で売ってる奴www”

「えーと、彼が前に話していた幼馴染みの友人です」

”やっぱり友人君か”
”さすがひでおの友人w”
”しょっぱなからテンション高すぎwww”

”誰?”
”何者?”
”ヒーロースーツやら、ひでおにガジェットを作ってる人”

「おう、俺が友人Aの助けるマンだぞ」

”声がイケメン”
”イケボ”
”抱いて”

「どうやら、俺に訊きたいことがいっぱいありそうだな。だけど、今日はそれは後回しだ。俺が登場したのは伝えたいことがふたつあるからだ。先にそっちを済ませるぞ」

”ひでおと全然タイプが違うw”
”だからこそ、仲良しなんだろうな”
”俺様すぎて惚れる”
”場慣れしすぎじゃない?”
”素人じゃないだろw”

「まず、ひとつ目。ヒーローアラート」

 タスクが腕輪を端末に近づける。

「名前の通り、ダンジョン内で危機を探知して通知するガジェットだ。次回のダンジョン配信で使ってみせるから楽しみにな」

”すげえの出て来た”
”まさにヒーローガジェット”
”これでピンチに駈けつけるのか”
”わくわく”
”次回が楽しみすぎる”

「ちなみに探索者協会が使っているあるガジェットを改造した俺作のオリジナル」

”ガジェットってそんなに簡単に作れるの?”
”いや、無理”
”ガジェット開発は大企業とか、研究機関の仕事だぞ”
”NDGIとかな”
”友人も凄い人?”
”ひでおに負けず劣らずの規格外”

「よし、いいか? ふたつ目はお金の話だ。俺が担当しているから、俺が説明する。みんなも思ってるだろうけど、ひでおはこういうの苦手だからな」

”確かに”
”物欲なさそう”
”配信とヒーローしか興味ないからな”

「ヒーローに似つかわしくない話だが、ここはちゃんとしておきたい」

”まあ、気になるところだな”
”ひでおクラスだと、大金だろ”
”4桁万円?”
”5桁いくんじゃね?”

「訊きたくない奴は俺が右手を挙げるまでミュートしとけ」

”友人くん、気遣いもできる”
”ミュートした”
”ミュート完了”
”俺は聴くぞ”
”私も”

「まず、収益化。こっちは週明けにでも申請が通る。スパチャをガンガン頼むぞ」

”スパチャきたー”
”待ち切れん”
”初回スパチャ凄そうw”
”リボ払い準備完了!”
”リボはやめとけwww”

「次は、切り抜き。今までのから金はとらないけど、今後は折半だ」

”まあ、妥当だな”
”えー、俺は反対”
”広まったのは切り抜きの影響が大きいからな”
”難しいよね。”
”私は賛成”

「おお、やっぱり反対の声が出るな。安心しろ、想定内だ」

”カッコイイ”
”俺も言ってみたい「想定内だ!」”
”友人、さっきからイケメン過ぎるw”

「これがお金に関する最後の話だ」

”なんだろ?”
”いい話か、悪い話か”

「ヒーロー活動による収益は必要経費――ひでおの生活費やら探索に必要な費用やら――それ以外は全額寄付だ。これでも文句あるか?」

”おおお”
”思い切ったな”
”さすがはヒーロー”
”太っ腹すぎる”
”物欲なさ過ぎだろw”

「寄付先はダンジョン協会。使途は探索者育成と探索者遺族支援。収支報告はちゃんと公開する。すでに税理士にも話し通してある」

”寄付先がまさにダンジョンヒーローだ”
”友人君、良いパートナー”
”最強のカップリング”
”薄い本出そうw”

”友人君、本当に高校生?”
”俺が高校生のときはおっぱいのことしか考えてなかった”
”おっぱいw”

「よし、お金の話はここまでだ」

 ひでおは右手を挙げて、しばらく待つ。

「ミュート解除したか?」

”聴いてなかった奴、アーカイブ観ろ”
”観なきゃ損”
”ますます印象が良くなる”
”聴いときゃ良かった……”
”なになに、気になる”

「以上。質問ある奴いるか?」

 佑の発言にコメントが一気に流れる。
【後書き】
次回――『告知配信(2)』
しおりを挟む
感想 4

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

Sランクパーティを引退したおっさんは故郷でスローライフがしたい。~王都に残した仲間が事あるごとに呼び出してくる~

味のないお茶
ファンタジー
Sランクパーティのリーダーだったベルフォードは、冒険者歴二十年のベテランだった。 しかし、加齢による衰えを感じていた彼は後人に愛弟子のエリックを指名し一年間見守っていた。 彼のリーダー能力に安心したベルフォードは、冒険者家業の引退を決意する。 故郷に帰ってゆっくりと日々を過しながら、剣術道場を開いて結婚相手を探そう。 そう考えていたベルフォードだったが、周りは彼をほっておいてはくれなかった。 これはスローライフがしたい凄腕のおっさんと、彼を慕う人達が織り成す物語。

【本編完結】転生したら第6皇子冷遇されながらも力をつける

そう
ファンタジー
転生したら帝国の第6皇子だったけど周りの人たちに冷遇されながらも生きて行く話です

冤罪だと誰も信じてくれず追い詰められた僕、濡れ衣が明るみになったけど今更仲直りなんてできない

一本橋
恋愛
女子の体操着を盗んだという身に覚えのない罪を着せられ、僕は皆の信頼を失った。 クラスメイトからは日常的に罵倒を浴びせられ、向けられるのは蔑みの目。 さらに、信じていた初恋だった女友達でさえ僕を見限った。 両親からは拒絶され、姉からもいないものと扱われる日々。 ……だが、転機は訪れる。冤罪だった事が明かになったのだ。 それを機に、今まで僕を蔑ろに扱った人達から次々と謝罪の声が。 皆は僕と関係を戻したいみたいだけど、今更仲直りなんてできない。 ※小説家になろう、カクヨムと同時に投稿しています。

転生幼女のチートな悠々自適生活〜伝統魔法を使い続けていたら気づけば賢者になっていた〜

犬社護
ファンタジー
ユミル(4歳)は気がついたら、崖下にある森の中にいた。 馬車が崖下に落下した影響で、前世の記憶を思い出す。周囲には散乱した荷物だけでなく、さっきまで会話していた家族が横たわっており、自分だけ助かっていることにショックを受ける。 大雨の中を泣き叫んでいる時、1体の小さな精霊カーバンクルが現れる。前世もふもふ好きだったユミルは、もふもふ精霊と会話することで悲しみも和らぎ、互いに打ち解けることに成功する。 精霊カーバンクルと仲良くなったことで、彼女は日本古来の伝統に関わる魔法を習得するのだが、チート魔法のせいで色々やらかしていく。まわりの精霊や街に住む平民や貴族達もそれに振り回されるものの、愛くるしく天真爛漫な彼女を見ることで、皆がほっこり心を癒されていく。 人々や精霊に愛されていくユミルは、伝統魔法で仲間たちと悠々自適な生活を目指します。

俺しか使えない『アイテムボックス』がバグってる

十本スイ
ファンタジー
俗にいう神様転生とやらを経験することになった主人公――札月沖長。ただしよくあるような最強でチートな能力をもらい、異世界ではしゃぐつもりなど到底なかった沖長は、丈夫な身体と便利なアイテムボックスだけを望んだ。しかしこの二つ、神がどういう解釈をしていたのか、特にアイテムボックスについてはバグっているのではと思うほどの能力を有していた。これはこれで便利に使えばいいかと思っていたが、どうも自分だけが転生者ではなく、一緒に同世界へ転生した者たちがいるようで……。しかもそいつらは自分が主人公で、沖長をイレギュラーだの踏み台だなどと言ってくる。これは異世界ではなく現代ファンタジーの世界に転生することになった男が、その世界の真実を知りながらもマイペースに生きる物語である。

クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?

青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。 最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。 普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた? しかも弱いからと森に捨てられた。 いやちょっとまてよ? 皆さん勘違いしてません? これはあいの不思議な日常を書いた物語である。 本編完結しました! 相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです! 1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…

国外追放だ!と言われたので従ってみた

れぷ
ファンタジー
 良いの?君達死ぬよ?

処理中です...