18 / 57
018 神保町ダンジョン(3)
しおりを挟む
「ダンジョンヒーロー。変身ッ!!」
変身ポーズを決め、ダンジョンヒーローになる。
気持ちが切り替わり、ヒーローモードだ。
「悪しきモンスターから探索者を救うダンジョンヒーロー、ここに見参ッ!」
”キター”
”これが見たかった”
”見参ッ!”
さあ、狩りの季節の始まりだ――。
下層から大勢のスケルトンが犇《ひし》めき合って向かってくる。
「俺らが左、お前らは右だ。ひでおは邪魔にならないように引っ込んでろ」
「…………」
”えっ……”
”あっ……”
”なにコイツ”
”マジむかつく”
”何様だよ”
完全に役立たずだと思われてるな。
だが、俺は気にしない。
「構わない。ヒーローの出番は誰かがピンチになったときだ」
”うお、かっけええ”
”ヒーローの貫禄w”
”虎夫の小物感”
”ほら、ピンチ早よ”
”虎夫ボコボコになれ”
”スケルトン頑張れ!!”
”↑さすがにモンスター応援すんなよwww”
――良い連携だ。
『十二騎』は5人がひとつになって、波のように前後に移動しながら、スケルトン集団の勢いを上手く殺しながら戦っている。
虎夫は自分から突っ込むタイプかと思っていたから、以外だった。
回りに目を配り、連携の要になっている。
”おっ”
”虎夫以外とやるじゃん”
”口だけかと思ってた”
”連携上手い”
”態度悪いけど、やっぱり『十二騎』強えな”
一方の『らんらん探検隊』はエナが突っ込んで「らんらん~」とかき回し、他の3人が上手くサポートしている。
”らんらん~”
”らんらん~”
”らんらん~”
”らんらん~”
”エナちゃん、かわかっこいい”
”ノリノリだな”
”楽しそう”
”他の三人もイイ動きだね”
確かに、俺が加わったら逆効果だ。
連携を乱してしまう。
虎夫は単に俺を見下していただけかと思ったけど、ちゃんと考えての上だったのかもしれない。
とはいえ――。
視聴者の皆は、物足りないだろう。
なので、彼らの邪魔にならないように、ちょっと動いてみるか。
俺は戦いから離れている一体をターゲットに定める。
”ヒーロー動くか?”
”なになに?”
”なにすんだ?”
ヒーローコスチュームにはいくつかの収納スペースがついている。
そこに左手を突っ込んで、あるものを取り出す。
そのうちのひとつを右手の人差し指で弾き――。
「ヒーローフィンガーブレットォォォ!!!」
俺が指で弾いて飛ばしたのは小石だ。
普通の小石ではなく、ダンジョン内で拾える小石。
普通のより何倍もの強度を持っている。
ダンジョン小石は真っ直ぐに飛んで行き。
スケルトンの胸にある赤い核を貫き。
スケルトンはバラバラになって崩れ落ちる。
胸部の赤い核はスケルトンの弱点だ。
そこにダメージを与えればスケルトンは倒せる。
普通は刺突を狙うのだが、こういう倒し方も可能だ。
”…………”
”…………”
”…………”
”…………”
”…………”
”なにが……おこった”
”なにも見えんかった”
”スケルトン一体死んでね?”
”死んだ”
”ヒーロー、解説してくれ”
視聴者はなにが起こったか分かっていないようだ。
俺は左手を開いて、配信端末に向ける。
「ダンジョン小石を指で弾いて飛ばす。ヒーローフィンガーブレットだ」
”おおおお”
”かっけー”
”まったく見えなかったけどなw”
”小石ってwww”
”モンスターって小石で倒せるんですか?”
”無理”
”不可能”
”ダンジョンヒーローだけ”
コメント欄が盛り上がっている。
どうやら好評だったようだ。
視聴者は誰も見えなかったようだが、虎夫は気がついたようでこちらにチラリと視線を向け、顔を歪める。
「おら、本気出せっ、全力攻撃だ」
俺に触発されたようだ。
仲間を叱咤し、攻撃がよりいっそう激しくなる。
この調子なら、彼らは問題なくスケルトン軍団を倒すだろう。
”虎夫、負けず嫌いw”
”大人げないww”
”でも、ちゃんと倒せそうだな”
”口だけじゃないっぽい”
だが、もう一方――。
『らんらん探検隊』は苦戦している。
ピンチとまではいっていないが、徐々に押されつつある。
このままだと、ジリ貧――押し込まれるのも時間の問題だ。
”らんらん、頑張れ~!!”
”エナちゃ~ん!!”
”ジオたん!!”
”トリアさまあ~!!”
”テセラん!!”
それは本人たちの方がよっぽど分かっている。
エナは俺を見て叫ぶ。
「ダンジョンヒーローさん、助けて」
「わかった。任せろ」
【後書き】
次回――『神保町ダンジョン(4)』
変身ポーズを決め、ダンジョンヒーローになる。
気持ちが切り替わり、ヒーローモードだ。
「悪しきモンスターから探索者を救うダンジョンヒーロー、ここに見参ッ!」
”キター”
”これが見たかった”
”見参ッ!”
さあ、狩りの季節の始まりだ――。
下層から大勢のスケルトンが犇《ひし》めき合って向かってくる。
「俺らが左、お前らは右だ。ひでおは邪魔にならないように引っ込んでろ」
「…………」
”えっ……”
”あっ……”
”なにコイツ”
”マジむかつく”
”何様だよ”
完全に役立たずだと思われてるな。
だが、俺は気にしない。
「構わない。ヒーローの出番は誰かがピンチになったときだ」
”うお、かっけええ”
”ヒーローの貫禄w”
”虎夫の小物感”
”ほら、ピンチ早よ”
”虎夫ボコボコになれ”
”スケルトン頑張れ!!”
”↑さすがにモンスター応援すんなよwww”
――良い連携だ。
『十二騎』は5人がひとつになって、波のように前後に移動しながら、スケルトン集団の勢いを上手く殺しながら戦っている。
虎夫は自分から突っ込むタイプかと思っていたから、以外だった。
回りに目を配り、連携の要になっている。
”おっ”
”虎夫以外とやるじゃん”
”口だけかと思ってた”
”連携上手い”
”態度悪いけど、やっぱり『十二騎』強えな”
一方の『らんらん探検隊』はエナが突っ込んで「らんらん~」とかき回し、他の3人が上手くサポートしている。
”らんらん~”
”らんらん~”
”らんらん~”
”らんらん~”
”エナちゃん、かわかっこいい”
”ノリノリだな”
”楽しそう”
”他の三人もイイ動きだね”
確かに、俺が加わったら逆効果だ。
連携を乱してしまう。
虎夫は単に俺を見下していただけかと思ったけど、ちゃんと考えての上だったのかもしれない。
とはいえ――。
視聴者の皆は、物足りないだろう。
なので、彼らの邪魔にならないように、ちょっと動いてみるか。
俺は戦いから離れている一体をターゲットに定める。
”ヒーロー動くか?”
”なになに?”
”なにすんだ?”
ヒーローコスチュームにはいくつかの収納スペースがついている。
そこに左手を突っ込んで、あるものを取り出す。
そのうちのひとつを右手の人差し指で弾き――。
「ヒーローフィンガーブレットォォォ!!!」
俺が指で弾いて飛ばしたのは小石だ。
普通の小石ではなく、ダンジョン内で拾える小石。
普通のより何倍もの強度を持っている。
ダンジョン小石は真っ直ぐに飛んで行き。
スケルトンの胸にある赤い核を貫き。
スケルトンはバラバラになって崩れ落ちる。
胸部の赤い核はスケルトンの弱点だ。
そこにダメージを与えればスケルトンは倒せる。
普通は刺突を狙うのだが、こういう倒し方も可能だ。
”…………”
”…………”
”…………”
”…………”
”…………”
”なにが……おこった”
”なにも見えんかった”
”スケルトン一体死んでね?”
”死んだ”
”ヒーロー、解説してくれ”
視聴者はなにが起こったか分かっていないようだ。
俺は左手を開いて、配信端末に向ける。
「ダンジョン小石を指で弾いて飛ばす。ヒーローフィンガーブレットだ」
”おおおお”
”かっけー”
”まったく見えなかったけどなw”
”小石ってwww”
”モンスターって小石で倒せるんですか?”
”無理”
”不可能”
”ダンジョンヒーローだけ”
コメント欄が盛り上がっている。
どうやら好評だったようだ。
視聴者は誰も見えなかったようだが、虎夫は気がついたようでこちらにチラリと視線を向け、顔を歪める。
「おら、本気出せっ、全力攻撃だ」
俺に触発されたようだ。
仲間を叱咤し、攻撃がよりいっそう激しくなる。
この調子なら、彼らは問題なくスケルトン軍団を倒すだろう。
”虎夫、負けず嫌いw”
”大人げないww”
”でも、ちゃんと倒せそうだな”
”口だけじゃないっぽい”
だが、もう一方――。
『らんらん探検隊』は苦戦している。
ピンチとまではいっていないが、徐々に押されつつある。
このままだと、ジリ貧――押し込まれるのも時間の問題だ。
”らんらん、頑張れ~!!”
”エナちゃ~ん!!”
”ジオたん!!”
”トリアさまあ~!!”
”テセラん!!”
それは本人たちの方がよっぽど分かっている。
エナは俺を見て叫ぶ。
「ダンジョンヒーローさん、助けて」
「わかった。任せろ」
【後書き】
次回――『神保町ダンジョン(4)』
0
お気に入りに追加
290
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。

婚約破棄?一体何のお話ですか?
リヴァルナ
ファンタジー
なんだかざまぁ(?)系が書きたかったので書いてみました。
エルバルド学園卒業記念パーティー。
それも終わりに近付いた頃、ある事件が起こる…
※エブリスタさんでも投稿しています

もしかして寝てる間にざまぁしました?
ぴぴみ
ファンタジー
令嬢アリアは気が弱く、何をされても言い返せない。
内気な性格が邪魔をして本来の能力を活かせていなかった。
しかし、ある時から状況は一変する。彼女を馬鹿にし嘲笑っていた人間が怯えたように見てくるのだ。
私、寝てる間に何かしました?

僕の秘密を知った自称勇者が聖剣を寄越せと言ってきたので渡してみた
黒木メイ
ファンタジー
世界に一人しかいないと言われている『勇者』。
その『勇者』は今、ワグナー王国にいるらしい。
曖昧なのには理由があった。
『勇者』だと思わしき少年、レンが頑なに「僕は勇者じゃない」と言っているからだ。
どんなに周りが勇者だと持て囃してもレンは認めようとしない。
※小説家になろうにも随時転載中。
レンはただ、ある目的のついでに人々を助けただけだと言う。
それでも皆はレンが勇者だと思っていた。
突如日本という国から彼らが転移してくるまでは。
はたして、レンは本当に勇者ではないのか……。
ざまぁあり・友情あり・謎ありな作品です。
※小説家になろう、カクヨム、ネオページにも掲載。
【完結】転生7年!ぼっち脱出して王宮ライフ満喫してたら王国の動乱に巻き込まれた少女戦記 〜愛でたいアイカは救国の姫になる
三矢さくら
ファンタジー
【完結しました】異世界からの召喚に応じて6歳児に転生したアイカは、護ってくれる結界に逆に閉じ込められた結果、山奥でサバイバル生活を始める。
こんなはずじゃなかった!
異世界の山奥で過ごすこと7年。ようやく結界が解けて、山を下りたアイカは王都ヴィアナで【天衣無縫の無頼姫】の異名をとる第3王女リティアと出会う。
珍しい物好きの王女に気に入られたアイカは、なんと侍女に取り立てられて王宮に!
やっと始まった異世界生活は、美男美女ぞろいの王宮生活!
右を見ても左を見ても「愛でたい」美人に美少女! 美男子に美少年ばかり!
アイカとリティア、まだまだ幼い侍女と王女が数奇な運命をたどる異世界王宮ファンタジー戦記。



家の庭にレアドロップダンジョンが生えた~神話級のアイテムを使って普通のダンジョンで無双します~
芦屋貴緒
ファンタジー
売れないイラストレーターである里見司(さとみつかさ)の家にダンジョンが生えた。
駆除業者も呼ぶことができない金欠ぶりに「ダンジョンで手に入れたものを売ればいいのでは?」と考え潜り始める。
だがそのダンジョンで手に入るアイテムは全て他人に譲渡できないものだったのだ。
彼が財宝を鑑定すると驚愕の事実が判明する。
経験値も金にもならないこのダンジョン。
しかし手に入るものは全て高ランクのダンジョンでも入手困難なレアアイテムばかり。
――じゃあ、アイテムの力で強くなって普通のダンジョンで稼げばよくない?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる