異世界魔王討伐RTA~6時間で魔王を倒せって言われたけど、ベリーイージーモードなんで楽勝だった。むしろ、姫様とのイチャイチャがメインでは?~

まさキチ

文字の大きさ
上 下
44 / 61

044 セリフが露骨に棒読みっぽい

しおりを挟む
 ――残り時間1:53

 大陸中央にある大きな岩山。
 オレの目測だと、富士山と同じかそれ以上の高さだ。

 その山頂よりやや下方――八合目付近には、人工の要塞のような建造物があった。
 本来は頑丈な門扉で防がれていただろうその入り口は、破壊された残骸が脇に積まれ、ポッカリと口を開けていた。

 リスティアに従いフェニックスの背から飛び降りたオレは、寒さに身体を震わせた。
 フェニックスに乗っている間は魔法のバリアのおかげで風や寒さを感じずに済んだけど、この高所に薄着は堪える。
 ドラゴンの洞窟の凍えつく程の寒さではないけど、寒いことは寒い。我慢でなんとかなるレベルをこえた寒さだった。

「さっみ~~~~~」

 オレが縮こまって震えていると、

「はいっ、勇者さま~」

 リスティアが『収納』からフワモコで暖かそうなローブを取り出して、渡してくれる。

「おっ、ありがと」

 さっそく、腕を通す。
 おお、あったけえ――それに、むちゃくちゃいい匂いする。
 甘くて、蕩けそうになっちゃういい匂いだ。
 香水かなんかの匂いかな?

「あっ、まちがえちゃった。それ、ワタシがいつも着てるヤツだった。えへ。ごめんね、勇者さま~」

 リスティアが自分用にもう一着のローブを取り出しながら、とぼけたようにカワイく微笑んだ。

 ということは……これは、普段からリスティアが着ているローブってことで…………この匂いはリスティアの匂いで……………………。

「全然オッケーだよ。もう、着ちゃったからね。わざわざ交換するのも面倒だしね。オレはこのままでいいよ」
「えへへへへへ~~~」

 ノープロブレムだ。
 オレ的には全く問題なし。
 むしろ、最初からこっちが正解だ。
 リスティアの「まちがえちゃった」ってセリフが露骨に棒読みっぽいけど、そんなのすら気にならない。
 もう絶対にこのローブ脱がないもんね!

 そんな感じで身体も心もヌクヌクになったオレは悪魔城とやらの入り口らしき場所を眺める。

「ここが悪魔城?」
「そだよ~」

 相変わらず軽いノリのリスティア。

「ねえ、これ最後のミッションだけど、コイツが魔王? これを封印すればいいの?」

 オレは『攻略ガイド』に描かれたモンスターらしき落書き、もとい、イラストを指差す。
 オレがこの冒険をはじめてまだ4時間ちょい、制限時間は6時間って言ってた気がするけど、まだ3分の2ちょいしかたっていない。残り時間も2時間くらいある。
 魔王とのご対面はまだまだ先の話かと思っていたから、全然心の準備ができていない。

「もう、勇者さまったら~」
「ん?」
「冗談が上手いんだから~」
「へっ!?」

 なにがツボったのか、リスティアは腹を抱えてコロコロと笑っている。
 オレはなにかボケたつもりも、面白いことを言ったつもりもない。
 なのに、リスティアは大爆笑してる。

「なんか可笑しかった?」
「だってえ~。魔王とガリアスを間違えるなんて~。3歳時でもありえないよ~」
「そんなこと言ったってなあ…………」

 オレは魔王もそのガリアスってやつも知らんし。
 そもそも知っていたところで、あの落書きじゃ区別つかんだろ。
 よし、後でイーヴァに見せて訊いてみよう。

「あっ、わかった~。場を和ませようっていう勇者さまの気遣いなんでしょ~」
「……………………おう」

 もう、そういうことでいいや。
 でも、このやり取りで和んだのは事実だ。
 決戦直前かと思って気を張っていたけど、リスティアのおかげで気が抜けた。

「じゃあ、行こっか~」
【後書き】
次回――『フローラルでいい感じ』
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

異世界で快適な生活するのに自重なんかしてられないだろ?

お子様
ファンタジー
机の引き出しから過去未来ではなく異世界へ。 飛ばされた世界で日本のような快適な生活を過ごすにはどうしたらいい? 自重して目立たないようにする? 無理無理。快適な生活を送るにはお金が必要なんだよ! お金を稼ぎ目立っても、問題無く暮らす方法は? 主人公の考えた手段は、ドン引きされるような内容だった。 (実践出来るかどうかは別だけど)

ユーヤのお気楽異世界転移

暇野無学
ファンタジー
 死因は神様の当て逃げです!  地震による事故で死亡したのだが、原因は神社の扁額が当たっての即死。問題の神様は気まずさから俺を輪廻の輪から外し、異世界の神に俺をゆだねた。異世界への移住を渋る俺に、神様特典付きで異世界へ招待されたが・・・ この神様が超適当な健忘症タイプときた。

完結【真】ご都合主義で生きてます。-創生魔法で思った物を創り、現代知識を使い世界を変える-

ジェルミ
ファンタジー
魔法は5属性、無限収納のストレージ。 自分の望んだものを創れる『創生魔法』が使える者が現れたら。 28歳でこの世を去った佐藤は、異世界の女神により転移を誘われる。 そして女神が授けたのは、想像した事を実現できる創生魔法だった。 安定した収入を得るために創生魔法を使い生産チートを目指す。 いずれは働かず、寝て暮らせる生活を目指して! この世界は無い物ばかり。 現代知識を使い生産チートを目指します。 ※カクヨム様にて1日PV数10,000超え、同時掲載しております。

【ヤベェ】異世界転移したった【助けてwww】

一樹
ファンタジー
色々あって、転移後追放されてしまった主人公。 追放後に、持ち物がチート化していることに気づく。 無事、元の世界と連絡をとる事に成功する。 そして、始まったのは、どこかで見た事のある、【あるある展開】のオンパレード! 異世界転移珍道中、掲示板実況始まり始まり。 【諸注意】 以前投稿した同名の短編の連載版になります。 連載は不定期。むしろ途中で止まる可能性、エタる可能性がとても高いです。 なんでも大丈夫な方向けです。 小説の形をしていないので、読む人を選びます。 以上の内容を踏まえた上で閲覧をお願いします。 disりに見えてしまう表現があります。 以上の点から気分を害されても責任は負えません。 閲覧は自己責任でお願いします。 小説家になろう、pixivでも投稿しています。

夢幻の錬金術師 ~【異空間収納】【錬金術】【鑑定】【スキル剥奪&付与】を兼ね備えたチートスキル【錬金工房】で最強の錬金術師として成り上がる~

青山 有
ファンタジー
女神の助手として異世界に召喚された厨二病少年・神薙拓光。 彼が手にしたユニークスキルは【錬金工房】。 ただでさえ、魔法があり魔物がはびこる危険な世界。そこを生産職の助手と巡るのかと、女神も頭を抱えたのだが……。 彼の持つ【錬金工房】は、レアスキルである【異空間収納】【錬金術】【鑑定】の上位互換機能を合わせ持ってるだけでなく、スキルの【剥奪】【付与】まで行えるという、女神の想像を遥かに超えたチートスキルだった。 これは一人の少年が異世界で伝説の錬金術師として成り上がっていく物語。 ※カクヨムにも投稿しています

凡人がおまけ召喚されてしまった件

根鳥 泰造
ファンタジー
 勇者召喚に巻き込まれて、異世界にきてしまった祐介。最初は勇者の様に大切に扱われていたが、ごく普通の才能しかないので、冷遇されるようになり、ついには王宮から追い出される。  仕方なく冒険者登録することにしたが、この世界では希少なヒーラー適正を持っていた。一年掛けて治癒魔法を習得し、治癒剣士となると、引く手あまたに。しかも、彼は『強欲』という大罪スキルを持っていて、倒した敵のスキルを自分のものにできるのだ。  それらのお蔭で、才能は凡人でも、数多のスキルで能力を補い、熟練度は飛びぬけ、高難度クエストも熟せる有名冒険者となる。そして、裏では気配消去や不可視化スキルを活かして、暗殺という裏の仕事も始めた。  異世界に来て八年後、その暗殺依頼で、召喚勇者の暗殺を受けたのだが、それは祐介を捕まえるための罠だった。祐介が暗殺者になっていると知った勇者が、改心させよう企てたもので、その後は勇者一行に加わり、魔王討伐の旅に同行することに。  最初は脅され渋々同行していた祐介も、勇者や仲間の思いをしり、どんどん勇者が好きになり、勇者から告白までされる。  だが、魔王を討伐を成し遂げるも、魔王戦で勇者は祐介を庇い、障害者になる。  祐介は、勇者の嘘で、病院を作り、医師の道を歩みだすのだった。

【書籍化決定】俗世から離れてのんびり暮らしていたおっさんなのに、俺が書の守護者って何かの間違いじゃないですか?

歩く魚
ファンタジー
幼い頃に迫害され、一人孤独に山で暮らすようになったジオ・プライム。 それから数十年が経ち、気づけば38歳。 のんびりとした生活はこの上ない幸せで満たされていた。 しかしーー 「も、もう一度聞いて良いですか? ジオ・プライムさん、あなたはこの死の山に二十五年間も住んでいるんですか?」 突然の来訪者によると、この山は人間が住める山ではなく、彼は世間では「書の守護者」と呼ばれ都市伝説のような存在になっていた。 これは、自分のことを弱いと勘違いしているダジャレ好きのおっさんが、人々を導き、温かさを思い出す物語。 ※書籍化のため更新をストップします。

[完結]異世界転生したら幼女になったが 速攻で村を追い出された件について ~そしていずれ最強になる幼女~

k33
ファンタジー
初めての小説です..! ある日 主人公 マサヤがトラックに引かれ幼女で異世界転生するのだが その先には 転生者は嫌われていると知る そして別の転生者と出会い この世界はゲームの世界と知る そして、そこから 魔法専門学校に入り Aまで目指すが 果たして上がれるのか!? そして 魔王城には立ち寄った者は一人もいないと別の転生者は言うが 果たして マサヤは 魔王城に入り 魔王を倒し無事に日本に帰れるのか!?

処理中です...