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044 セリフが露骨に棒読みっぽい
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――残り時間1:53
大陸中央にある大きな岩山。
オレの目測だと、富士山と同じかそれ以上の高さだ。
その山頂よりやや下方――八合目付近には、人工の要塞のような建造物があった。
本来は頑丈な門扉で防がれていただろうその入り口は、破壊された残骸が脇に積まれ、ポッカリと口を開けていた。
リスティアに従いフェニックスの背から飛び降りたオレは、寒さに身体を震わせた。
フェニックスに乗っている間は魔法のバリアのおかげで風や寒さを感じずに済んだけど、この高所に薄着は堪える。
ドラゴンの洞窟の凍えつく程の寒さではないけど、寒いことは寒い。我慢でなんとかなるレベルをこえた寒さだった。
「さっみ~~~~~」
オレが縮こまって震えていると、
「はいっ、勇者さま~」
リスティアが『収納』からフワモコで暖かそうなローブを取り出して、渡してくれる。
「おっ、ありがと」
さっそく、腕を通す。
おお、あったけえ――それに、むちゃくちゃいい匂いする。
甘くて、蕩けそうになっちゃういい匂いだ。
香水かなんかの匂いかな?
「あっ、まちがえちゃった。それ、ワタシがいつも着てるヤツだった。えへ。ごめんね、勇者さま~」
リスティアが自分用にもう一着のローブを取り出しながら、とぼけたようにカワイく微笑んだ。
ということは……これは、普段からリスティアが着ているローブってことで…………この匂いはリスティアの匂いで……………………。
「全然オッケーだよ。もう、着ちゃったからね。わざわざ交換するのも面倒だしね。オレはこのままでいいよ」
「えへへへへへ~~~」
ノープロブレムだ。
オレ的には全く問題なし。
むしろ、最初からこっちが正解だ。
リスティアの「まちがえちゃった」ってセリフが露骨に棒読みっぽいけど、そんなのすら気にならない。
もう絶対にこのローブ脱がないもんね!
そんな感じで身体も心もヌクヌクになったオレは悪魔城とやらの入り口らしき場所を眺める。
「ここが悪魔城?」
「そだよ~」
相変わらず軽いノリのリスティア。
「ねえ、これ最後のミッションだけど、コイツが魔王? これを封印すればいいの?」
オレは『攻略ガイド』に描かれたモンスターらしき落書き、もとい、イラストを指差す。
オレがこの冒険をはじめてまだ4時間ちょい、制限時間は6時間って言ってた気がするけど、まだ3分の2ちょいしかたっていない。残り時間も2時間くらいある。
魔王とのご対面はまだまだ先の話かと思っていたから、全然心の準備ができていない。
「もう、勇者さまったら~」
「ん?」
「冗談が上手いんだから~」
「へっ!?」
なにがツボったのか、リスティアは腹を抱えてコロコロと笑っている。
オレはなにかボケたつもりも、面白いことを言ったつもりもない。
なのに、リスティアは大爆笑してる。
「なんか可笑しかった?」
「だってえ~。魔王とガリアスを間違えるなんて~。3歳時でもありえないよ~」
「そんなこと言ったってなあ…………」
オレは魔王もそのガリアスってやつも知らんし。
そもそも知っていたところで、あの落書きじゃ区別つかんだろ。
よし、後でイーヴァに見せて訊いてみよう。
「あっ、わかった~。場を和ませようっていう勇者さまの気遣いなんでしょ~」
「……………………おう」
もう、そういうことでいいや。
でも、このやり取りで和んだのは事実だ。
決戦直前かと思って気を張っていたけど、リスティアのおかげで気が抜けた。
「じゃあ、行こっか~」
【後書き】
次回――『フローラルでいい感じ』
大陸中央にある大きな岩山。
オレの目測だと、富士山と同じかそれ以上の高さだ。
その山頂よりやや下方――八合目付近には、人工の要塞のような建造物があった。
本来は頑丈な門扉で防がれていただろうその入り口は、破壊された残骸が脇に積まれ、ポッカリと口を開けていた。
リスティアに従いフェニックスの背から飛び降りたオレは、寒さに身体を震わせた。
フェニックスに乗っている間は魔法のバリアのおかげで風や寒さを感じずに済んだけど、この高所に薄着は堪える。
ドラゴンの洞窟の凍えつく程の寒さではないけど、寒いことは寒い。我慢でなんとかなるレベルをこえた寒さだった。
「さっみ~~~~~」
オレが縮こまって震えていると、
「はいっ、勇者さま~」
リスティアが『収納』からフワモコで暖かそうなローブを取り出して、渡してくれる。
「おっ、ありがと」
さっそく、腕を通す。
おお、あったけえ――それに、むちゃくちゃいい匂いする。
甘くて、蕩けそうになっちゃういい匂いだ。
香水かなんかの匂いかな?
「あっ、まちがえちゃった。それ、ワタシがいつも着てるヤツだった。えへ。ごめんね、勇者さま~」
リスティアが自分用にもう一着のローブを取り出しながら、とぼけたようにカワイく微笑んだ。
ということは……これは、普段からリスティアが着ているローブってことで…………この匂いはリスティアの匂いで……………………。
「全然オッケーだよ。もう、着ちゃったからね。わざわざ交換するのも面倒だしね。オレはこのままでいいよ」
「えへへへへへ~~~」
ノープロブレムだ。
オレ的には全く問題なし。
むしろ、最初からこっちが正解だ。
リスティアの「まちがえちゃった」ってセリフが露骨に棒読みっぽいけど、そんなのすら気にならない。
もう絶対にこのローブ脱がないもんね!
そんな感じで身体も心もヌクヌクになったオレは悪魔城とやらの入り口らしき場所を眺める。
「ここが悪魔城?」
「そだよ~」
相変わらず軽いノリのリスティア。
「ねえ、これ最後のミッションだけど、コイツが魔王? これを封印すればいいの?」
オレは『攻略ガイド』に描かれたモンスターらしき落書き、もとい、イラストを指差す。
オレがこの冒険をはじめてまだ4時間ちょい、制限時間は6時間って言ってた気がするけど、まだ3分の2ちょいしかたっていない。残り時間も2時間くらいある。
魔王とのご対面はまだまだ先の話かと思っていたから、全然心の準備ができていない。
「もう、勇者さまったら~」
「ん?」
「冗談が上手いんだから~」
「へっ!?」
なにがツボったのか、リスティアは腹を抱えてコロコロと笑っている。
オレはなにかボケたつもりも、面白いことを言ったつもりもない。
なのに、リスティアは大爆笑してる。
「なんか可笑しかった?」
「だってえ~。魔王とガリアスを間違えるなんて~。3歳時でもありえないよ~」
「そんなこと言ったってなあ…………」
オレは魔王もそのガリアスってやつも知らんし。
そもそも知っていたところで、あの落書きじゃ区別つかんだろ。
よし、後でイーヴァに見せて訊いてみよう。
「あっ、わかった~。場を和ませようっていう勇者さまの気遣いなんでしょ~」
「……………………おう」
もう、そういうことでいいや。
でも、このやり取りで和んだのは事実だ。
決戦直前かと思って気を張っていたけど、リスティアのおかげで気が抜けた。
「じゃあ、行こっか~」
【後書き】
次回――『フローラルでいい感じ』
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