異世界魔王討伐RTA~6時間で魔王を倒せって言われたけど、ベリーイージーモードなんで楽勝だった。むしろ、姫様とのイチャイチャがメインでは?~

まさキチ

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039 このノリだったら、ふざけたフリで1モミや2モミくらいは許されるのではないか?

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 思い返してみても、ジェントルさんから『トルマリン・リング』を購入した際のリスティアの行動は不自然極まりなかった。

 向こうが提示した金額より高い金額で購入したし(逆なら分かるのだが)。
 「ひとつお願いがある」と耳打ちしてたし。
 オレが尋ねても、はぐらかしたし。
 『トルマリン・リング』の他にも、小箱を受け取っていたし。

「あん時、なに話してたの?」
「えへへ~、わるだくみだよ~」

 ふわぽよな表情でリスティアは黒いことを言う。
 状況から推測するに、差額で自分用のアクセをゲットってところかな?
 アクセサリーを欲しがるところは普通の女の子っぽくて可愛いとも思えるが、やってることは横領だ。

 立派な犯罪なんだろうけど、そんなカワイイ顔して見つめられたら、許したくなっちゃうじゃないか。

 ――よし、許すッ!

 だって、オレの金じゃないしな。
 それに魔王討伐っていう大仕事に比べれば、ちょっとした横領なんて誤差だ、誤差。
 細かいことキニスンナ!

「リスティアは悪い子だなあ~」
「えへへへへ~」
「そんな悪い子はオシオキしちゃうぞ~」
「ええ、オシオキされちゃうの~~。してして~~~」

 若干セクハラ気味なオレの発言だったが、リスティアは嬉しそうに目を潤ませてきた。ノリいいな、この子。
 さっきのフェニックス調教風景を見て、リスティアはオシオキする側だと思っていたけど、意外と逆もイケそうだ。
 このノリだったら、ふざけたフリで1モミや2モミくらいは許されるのではないか?

 ――想像したら、理性が一本プチっと切れた。

 いかんいかん。それはマズい。
 色即是空、空即是色。
 煩悩退散、煩悩退散。

 真面目な話を再開しよう。

「そうだ、リスティア」

 桃色になりかけた空気を払拭するため、ワザと大きめの声で話しかける。

「な~に、勇者さま~」
「研究所で女教師さ……研究員の女性が言ってたけど――」
「うんうん」

 あぶね。危うくオレの脳内呼称で呼んじゃうところだった。
 だって、理想の女教師さんにしか見えなかったし。
 それに、名前も聞いてなかったし。

「勇者に関する昔の文献をあさったんだって?」
「ん~、まあね~」
「勇者ってそんなに何回も召喚されているのか?」

 女教師さんが言うには、リスティアは文献から勇者の経験値テーブルを解析したそうだ。
 ということは、つまり、それだけのデータが取れるほど多くの勇者がいたってことだ。

「そだよ~」

 軽い口調でリスティアが肯定する。
 別に、隠す気もないようだ。
 今まで一度も「魔王を」とは言われていない。
 だから、オレも薄々は感づいていた。

 いきなりリスティアが真剣な表情になり、オレから身体を離した。
 そして、聖獣覚醒の儀を執り行ったときみたいに、厳かな声で語りだした――。

「魔王を殺すことは不可能なのです。魔王はこの世界と不可分な存在であり、魔王が死す時、この世界もまた終焉を迎える。我々にできるのは『封印』して、一時的にそのチカラを抑えこむことだけです」
「…………」
「魔王は世界と表裏一体。故に、この世界の住人である我らは、いくら強大な力を持ったとしても、魔王を封ずることは出来ません。そこで、魔王の封印が弱まり世界が危機に瀕するたび、我々は勇者召喚を行って参りました」
「…………」
「それが可能であるのは、この世界の理(ことわり)の外にある者だけ。異世界より召喚されし勇者のみが魔王を封印できる唯一にして無二の存在なのです」
「…………」
「そして――」

 リスティアの語る姿はまさに、召喚の巫女と呼べるものだった。
 彼女の神聖さに圧倒されたオレは、思わずゴクリとツバを飲み込んだ。

「――今回、勇者として選ばれたのが、勇者さま、貴方なのです」

 あらためて、大役を押し付けられたものだと実感する。
 いや、オレなんかただのフツーの大学生だぞ…………。

「どうか、この世界をお救い下さいませ、勇者さま」

 リスティアは胸の前で両手を組み、祈るように頭(こうべ)を垂れる。
 敬虔な聖女以外のなにものでもなかった。
 気圧されたオレは、「ああ」と漏らし、コクコクと頷くことしかできなかった――。

【後書き】
次回――『ワシは今回で4回目じゃよ』
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