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恋する乙女にアドバイス
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「あの、エスタさん」
「はいっ」
目がらんらんとしはじめてるエスタに、
「私から言えるのは、あきらめなさいともあきらめるなとも言えない」
私はどっちつかずな返事をしたが。
「あのね、あなたは好きなお相手のどこが好きなの?」
真面目な声で聞いてみた。
だいたい、王太子に恋する学生は多い。なんせイケメン王子様なんだもの。だけど、カロリーナという婚約者を目の前にしたら早々にあきらめるものだ。
だから以前のエマってすごいのよねえ。
エスタは、もじもじすると、
「えっと、それは素敵な方で」
「お話したことはあるの?」
「それは、その」
「ランドルフ王太子様は素敵な方だと思います」
私はそう言い切ると、真剣な顔を向けた。って言っても顔のほとんどは隠れているが。
「だけどね、本当のその人のことは表面だけではわからない」
「それはそうですけど。素敵な人には間違いない、はずです」
「うんうん、私もそう思います、だけど、あなたは今、熱に浮かされてるの」
私はエスタの手をそっととった。
両手で手のひらを包む。
とても熱く感じる手から熱を取るイメージ。手から手に熱が伝わってくるそんなイメージを持つ。
「1歩後ろに下がって、冷静な目で王太子を観察してみて」
「観察?」
「そうよ、あなたはこれから、ランドルフ王太子を対象とした記者になるんです!」
「きしゃ?」
「そうです。新聞はわかるでしょう? 新聞を作っている人と同じように王太子を見つめなおすんです」
「それをすればどうなるんでしょう? 私にもチャンスが? それとも」
「そうね、チャンスがわかるか、すっぱりあきらめるか、どちらがくるかはわからないけど、もっと別の進む道が見つかるかもしれないし。どうですか? 今は来た時より冷静になってはいませんか」
はっとした表情を浮かべたエスタは、
「すごい、私、何だか、すっとしています。言われたように王太子様を記者してみます」
うーん、通じているかはわからないけど、少しは冷静になれたかな。
私は「また何かあったら生徒会に伝えてくださいね」と伝えた。
ぺこぺことお辞儀をして帰っていったけど。大丈夫よね、たぶん。
もう終わりでいいかな。
すっかり日も傾いている。
「お疲れ様」
テントを出て驚いた。
「デリク様?」
デリクがテントの前にいた。
外を見ると、ほとんどのブースから人がいなくなっていて、帰っていく生徒たちの姿があちこちに見える。
「後輩たちを連れてきすぎて疲れたんじゃないかと、何か運ぶものがあれば手伝うよ」
私はあわてて首を横に振った。
「大丈夫です。明日も午前中までするつもりだし、身一つですから」
来ていたマントをほらと広げた。
くすっと笑ったデリクの笑顔はなんだかかわいい。いとこだけあってカロリーナに似ていて綺麗な顔立ちなんだ、とあらためてみつめてしまう。
「あの、今日は本当にありがとうございました」
何考えてんの、私、と焦って頭を下げた。
「たくさんの人を連れてきてくださって、とても勉強になったし。あ、みなさん、具合は大丈夫でしたか?」
「ああ、それは、みんな感謝してたよ。こちらこそありがとう」
笑顔のデリクは、
「エマ嬢はみんなを元気にする力があるんだなあ」
なんて言い出した。
「そんな、まさか。まだまだ癒し魔法の力は弱いし、何の役にも立てないし」
だいたい魔法の基本すらなってない。
デリクは「そうかなあ」と言うと、
「さっきの女の子」
「ああ、エスタ様のことですか?」
「彼女、最初は暗い顔してテントに入っていったけど、出るときは明るく元気になってでてきてたよ」
魔法と言うより話を聞いただけみたいなもんだが。
「あんなふうに元気にさせるなんてすごいと思うけどなあ」
デリクはにこりとすると、
「明日も頑張って。片付けは手伝うよ」
と言ってくれた。
いい人なんだなあ、きっと。
マントにマスクという変な出で立ちの女と肩を並べて生徒会室に戻るデリクの横顔を見上げつつ、男なら絶対騎士団に入って親友の座をもらうのにと思っていた。
「はいっ」
目がらんらんとしはじめてるエスタに、
「私から言えるのは、あきらめなさいともあきらめるなとも言えない」
私はどっちつかずな返事をしたが。
「あのね、あなたは好きなお相手のどこが好きなの?」
真面目な声で聞いてみた。
だいたい、王太子に恋する学生は多い。なんせイケメン王子様なんだもの。だけど、カロリーナという婚約者を目の前にしたら早々にあきらめるものだ。
だから以前のエマってすごいのよねえ。
エスタは、もじもじすると、
「えっと、それは素敵な方で」
「お話したことはあるの?」
「それは、その」
「ランドルフ王太子様は素敵な方だと思います」
私はそう言い切ると、真剣な顔を向けた。って言っても顔のほとんどは隠れているが。
「だけどね、本当のその人のことは表面だけではわからない」
「それはそうですけど。素敵な人には間違いない、はずです」
「うんうん、私もそう思います、だけど、あなたは今、熱に浮かされてるの」
私はエスタの手をそっととった。
両手で手のひらを包む。
とても熱く感じる手から熱を取るイメージ。手から手に熱が伝わってくるそんなイメージを持つ。
「1歩後ろに下がって、冷静な目で王太子を観察してみて」
「観察?」
「そうよ、あなたはこれから、ランドルフ王太子を対象とした記者になるんです!」
「きしゃ?」
「そうです。新聞はわかるでしょう? 新聞を作っている人と同じように王太子を見つめなおすんです」
「それをすればどうなるんでしょう? 私にもチャンスが? それとも」
「そうね、チャンスがわかるか、すっぱりあきらめるか、どちらがくるかはわからないけど、もっと別の進む道が見つかるかもしれないし。どうですか? 今は来た時より冷静になってはいませんか」
はっとした表情を浮かべたエスタは、
「すごい、私、何だか、すっとしています。言われたように王太子様を記者してみます」
うーん、通じているかはわからないけど、少しは冷静になれたかな。
私は「また何かあったら生徒会に伝えてくださいね」と伝えた。
ぺこぺことお辞儀をして帰っていったけど。大丈夫よね、たぶん。
もう終わりでいいかな。
すっかり日も傾いている。
「お疲れ様」
テントを出て驚いた。
「デリク様?」
デリクがテントの前にいた。
外を見ると、ほとんどのブースから人がいなくなっていて、帰っていく生徒たちの姿があちこちに見える。
「後輩たちを連れてきすぎて疲れたんじゃないかと、何か運ぶものがあれば手伝うよ」
私はあわてて首を横に振った。
「大丈夫です。明日も午前中までするつもりだし、身一つですから」
来ていたマントをほらと広げた。
くすっと笑ったデリクの笑顔はなんだかかわいい。いとこだけあってカロリーナに似ていて綺麗な顔立ちなんだ、とあらためてみつめてしまう。
「あの、今日は本当にありがとうございました」
何考えてんの、私、と焦って頭を下げた。
「たくさんの人を連れてきてくださって、とても勉強になったし。あ、みなさん、具合は大丈夫でしたか?」
「ああ、それは、みんな感謝してたよ。こちらこそありがとう」
笑顔のデリクは、
「エマ嬢はみんなを元気にする力があるんだなあ」
なんて言い出した。
「そんな、まさか。まだまだ癒し魔法の力は弱いし、何の役にも立てないし」
だいたい魔法の基本すらなってない。
デリクは「そうかなあ」と言うと、
「さっきの女の子」
「ああ、エスタ様のことですか?」
「彼女、最初は暗い顔してテントに入っていったけど、出るときは明るく元気になってでてきてたよ」
魔法と言うより話を聞いただけみたいなもんだが。
「あんなふうに元気にさせるなんてすごいと思うけどなあ」
デリクはにこりとすると、
「明日も頑張って。片付けは手伝うよ」
と言ってくれた。
いい人なんだなあ、きっと。
マントにマスクという変な出で立ちの女と肩を並べて生徒会室に戻るデリクの横顔を見上げつつ、男なら絶対騎士団に入って親友の座をもらうのにと思っていた。
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