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~悪役令嬢とヒロインの物語~
8(最終話)
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長く続いた通路は、とうとう行き止まりに到達した。そこには上に上がる階段が降りてきた時と同じように作ってあった。
上っていくと、小さな蓋のような扉があり、なかなか開かなかったが2人して思いっきり押すと上にぎぎぎーっと音を立てて開き、頭上には月が輝いていた。
「ここ、教会?」
きょろきょろとあたりを見回した。
月明かりの元、十字架を掲げた三角の屋根でいつもの教会だとわかる。
地下の通路から出たとこは教会の墓地の近く、花が沢山咲いているそば、真四角切り取ったような空間がぽっかりと空いている。2人して開けた蓋は土と草におおわれていて、はた目には地下に続く入り口があるようには見えないし、わからないだろう。
「まさかこんなところに続いているなんて」
ねえ、とレラ様を見ると、彼女は空間にさっき拾って持ってきた人形を差し出している。
え? まさか。
「さあ、どうぞ。これを探していたんでしょう?」
差し出した人形が空間に浮いた。
え? え? 嘘!?
ぼんやりとした霞のようなふわふわとしたものが人の形になっていく。
「マリーベル?」
人形を手渡された女の子。まだまだ小さい、5歳くらいだろうか。ふんわりとした髪に形と同じ赤いリボンを頭につけているかわいい子だ。
「コルヴィン商会の」
隣にいるレラ様がこくりとうなづいた。
女の子の人形だったんだ。
たぶん、家族はあの通路を使って逃げたのだろう。だが、出た先、ここで殺されてしまった。人形は逃げる時に女の子の手を離れ落ちたまま。
女の子のそばには寄り添うようにお母さんらしい女性と、お父さんだろう男性。2人はいとおしそうに女の子を見つめている。
その2人がこちらに頭を下げた。
思わずこちらも頭を下げた。
顔を上げると、3人は、徐々に上へ、空中を上へと上がっていく。
その姿は月明かりの中、徐々にうすくなっていった。
私とレラ様は3人の姿を消えていく姿をずっと見送っていた。
ぎゅっと手をつないで。
「あの人形を探していたんですか」
「ええ、そうみたいです」
2人で夜道を歩いて帰った。
「さっき、通路に入ろうと言ったのは、見えていたんですか?」
レラ様はにこりとすると、
「幽霊のお父さんが必死に穴を指さしていたので何かあるんだろうなあと思いまして」
「はあ。レラ様、本当に見える人なんですね」
「あら、フェリシア様もみえたでしょ」
確かに月明かりの中、3人の姿ははっきりと見えた。
「……あんなにかわいいときに。かわいそうでしたね」
「ええ、でも3人でずっと一緒だから」
「今は天国ですかね」
「そうでしょう」
2人して空を見上げた。星が降ってきそうなほどにたくさん輝いている。
「明日も晴れですね」
「ええ。明日も一緒に本の整理しませんとね」
「そうですね。明日も明後日も」
「ずっと一緒に、ですわね」
お互いに顔を見合わせた。どちらからともなく笑顔になる。
手をぎゅっと握ると、握り返してきたレラ様の手を引っ張った。
「さあ、帰りましょう」
と見えてきた私たちの家に向かって駆け出した。
※フェリシアとレラのお話はここで終わりとなります。
ですが、もうしばらくおまけの話が続きます。
主人公はレラのお母さん。レラとフェリシアが家を出たあとのお話です。
よかったらもうしばらくお付き合いください。
上っていくと、小さな蓋のような扉があり、なかなか開かなかったが2人して思いっきり押すと上にぎぎぎーっと音を立てて開き、頭上には月が輝いていた。
「ここ、教会?」
きょろきょろとあたりを見回した。
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地下の通路から出たとこは教会の墓地の近く、花が沢山咲いているそば、真四角切り取ったような空間がぽっかりと空いている。2人して開けた蓋は土と草におおわれていて、はた目には地下に続く入り口があるようには見えないし、わからないだろう。
「まさかこんなところに続いているなんて」
ねえ、とレラ様を見ると、彼女は空間にさっき拾って持ってきた人形を差し出している。
え? まさか。
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差し出した人形が空間に浮いた。
え? え? 嘘!?
ぼんやりとした霞のようなふわふわとしたものが人の形になっていく。
「マリーベル?」
人形を手渡された女の子。まだまだ小さい、5歳くらいだろうか。ふんわりとした髪に形と同じ赤いリボンを頭につけているかわいい子だ。
「コルヴィン商会の」
隣にいるレラ様がこくりとうなづいた。
女の子の人形だったんだ。
たぶん、家族はあの通路を使って逃げたのだろう。だが、出た先、ここで殺されてしまった。人形は逃げる時に女の子の手を離れ落ちたまま。
女の子のそばには寄り添うようにお母さんらしい女性と、お父さんだろう男性。2人はいとおしそうに女の子を見つめている。
その2人がこちらに頭を下げた。
思わずこちらも頭を下げた。
顔を上げると、3人は、徐々に上へ、空中を上へと上がっていく。
その姿は月明かりの中、徐々にうすくなっていった。
私とレラ様は3人の姿を消えていく姿をずっと見送っていた。
ぎゅっと手をつないで。
「あの人形を探していたんですか」
「ええ、そうみたいです」
2人で夜道を歩いて帰った。
「さっき、通路に入ろうと言ったのは、見えていたんですか?」
レラ様はにこりとすると、
「幽霊のお父さんが必死に穴を指さしていたので何かあるんだろうなあと思いまして」
「はあ。レラ様、本当に見える人なんですね」
「あら、フェリシア様もみえたでしょ」
確かに月明かりの中、3人の姿ははっきりと見えた。
「……あんなにかわいいときに。かわいそうでしたね」
「ええ、でも3人でずっと一緒だから」
「今は天国ですかね」
「そうでしょう」
2人して空を見上げた。星が降ってきそうなほどにたくさん輝いている。
「明日も晴れですね」
「ええ。明日も一緒に本の整理しませんとね」
「そうですね。明日も明後日も」
「ずっと一緒に、ですわね」
お互いに顔を見合わせた。どちらからともなく笑顔になる。
手をぎゅっと握ると、握り返してきたレラ様の手を引っ張った。
「さあ、帰りましょう」
と見えてきた私たちの家に向かって駆け出した。
※フェリシアとレラのお話はここで終わりとなります。
ですが、もうしばらくおまけの話が続きます。
主人公はレラのお母さん。レラとフェリシアが家を出たあとのお話です。
よかったらもうしばらくお付き合いください。
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