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~ジュド・ロックナーの恋愛事情~
王室図書館で
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「ジュド、大丈夫?」
顔を上げると、デヴィッドが積み上げられた書物の間から顔をのぞかせている。
ここは、王室図書館。多くの書物が集められて保存されている。使えるのは王室の人間や、許された一部の人間のみ。
デヴィッドはもともとここにいるのが好きでよくここにいるが、今はある研究テーマと本の作成で籠りきりになっている。
「ねえ、クオラソムプ伯爵家の夜会に参加したんでしょう?」
思わず飲みかけていた紅茶を吹き出しそうになった。
「まあそうだけど。それよりお前は? 招待状来ただろ」
「うん、来たよ」
明るく返された。
「夜会に参加してなかったろ」
「うん」
うん、ってお前。
顔に出てたのか、くすくすと笑ったデヴィッドは、
「今はありがたいことに忙しいからね、あまりそういうことに構ってる余裕はないんだ」
「伯母上も文句言えなさそうだな」
デヴィッドの母親、現王と俺の父親の姉だ。俺もデヴィッドもそろそろ婚約者がいてもおかしくないし、結婚していてもおかしくはない。
だが、俺もそうだが、デヴィッドも今はまだ自由にしていたいってとこなんだよな。
「いい方見つかった?」
またもや吹き出しそうになる。
「自分で探すって言っても出会いがないとだもんね。だから夜会を開いてもらってるんだって」
「それ、誰が言ってた」
俺のための夜会ってことかよ。
にこりとしたデヴィッドは「母君だけど、母君は叔父上から聞いたって」
「叔父? それどっちの」
王様か宰相をしている俺の父親か。
「両方」
「うっ」
眉を下げたデヴィッドは
「僕もついでにって言われたみたいだけど、これは国の仕事だしね」
と本をぽんっと叩いた。さすがに強くは言えなかったのか。くそ、うらやましい。ふらふらしてる俺には何も言い返すことができないし。
「まあまあ、ほらこれ、レラ様が持ってきてくれたんだ」
本の山から出てきたデヴィッドは皿に盛られたクッキーを差し出してきた。
「レラ嬢、こっちに来たの?」
「いや、僕の方からお邪魔したんだ。村にも用事があるから、そのついでに捨てるような本を寄付しに行ったんだ」
「トフ村か。あの、あいつは」
「あいつ?」
「あの、ほら、ディーンの」
「なんだ、ミーガンさんか」
「彼女なら森の家にいるよ」
「え?! そうなのか?」
てっきりディーンの側にいるものとばかり思っていた。
「あそこが一番落ち着くんだって。ディーンは通いまくってるし、兵士も常駐してるよ」
ミーガンの困った顔が浮かぶようだ。
「じゃあ、そろそろ行くわ」
「ジュド、ミーガンさんのとこに行くんだろ。あまり行くとディーンに怒られるよ」
「は? 怒られるようなことしないし」
ったく、とあきれた声を背中に聞きつつ図書館を後にした。
顔を上げると、デヴィッドが積み上げられた書物の間から顔をのぞかせている。
ここは、王室図書館。多くの書物が集められて保存されている。使えるのは王室の人間や、許された一部の人間のみ。
デヴィッドはもともとここにいるのが好きでよくここにいるが、今はある研究テーマと本の作成で籠りきりになっている。
「ねえ、クオラソムプ伯爵家の夜会に参加したんでしょう?」
思わず飲みかけていた紅茶を吹き出しそうになった。
「まあそうだけど。それよりお前は? 招待状来ただろ」
「うん、来たよ」
明るく返された。
「夜会に参加してなかったろ」
「うん」
うん、ってお前。
顔に出てたのか、くすくすと笑ったデヴィッドは、
「今はありがたいことに忙しいからね、あまりそういうことに構ってる余裕はないんだ」
「伯母上も文句言えなさそうだな」
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だが、俺もそうだが、デヴィッドも今はまだ自由にしていたいってとこなんだよな。
「いい方見つかった?」
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「それ、誰が言ってた」
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「叔父? それどっちの」
王様か宰相をしている俺の父親か。
「両方」
「うっ」
眉を下げたデヴィッドは
「僕もついでにって言われたみたいだけど、これは国の仕事だしね」
と本をぽんっと叩いた。さすがに強くは言えなかったのか。くそ、うらやましい。ふらふらしてる俺には何も言い返すことができないし。
「まあまあ、ほらこれ、レラ様が持ってきてくれたんだ」
本の山から出てきたデヴィッドは皿に盛られたクッキーを差し出してきた。
「レラ嬢、こっちに来たの?」
「いや、僕の方からお邪魔したんだ。村にも用事があるから、そのついでに捨てるような本を寄付しに行ったんだ」
「トフ村か。あの、あいつは」
「あいつ?」
「あの、ほら、ディーンの」
「なんだ、ミーガンさんか」
「彼女なら森の家にいるよ」
「え?! そうなのか?」
てっきりディーンの側にいるものとばかり思っていた。
「あそこが一番落ち着くんだって。ディーンは通いまくってるし、兵士も常駐してるよ」
ミーガンの困った顔が浮かぶようだ。
「じゃあ、そろそろ行くわ」
「ジュド、ミーガンさんのとこに行くんだろ。あまり行くとディーンに怒られるよ」
「は? 怒られるようなことしないし」
ったく、とあきれた声を背中に聞きつつ図書館を後にした。
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