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伯爵夫人のしたこと

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「知ってたの?」
 口の端を上げたディーンは、
「俺は森の中で苦しくなって馬から落ちたんだ。気づいたら猫になっていた。伯爵夫人が俺の昼食に薬を入れていたんだ。パニックだったよ。森の中をうろついて、いつの間にか倒れていたらしい。それを助けてくれたのがクララさんだよ」
「そうだったんですか」

「クララさんは全部話してくれたんだ」
 自分が魔女の末裔であること。こんなことになった責任は妹のマルガリータにあること。ただ、なぜ猫になってしまったのかはクララにも謎だったらしい。
 妹にそんな薬を作る技量はなかったし、どちらかというと魔法は間違うことが多かった。もしかすると、薬の調合を間違った、偶然の産物かもしれないと言われた。

 ただ、自分たちよりも大昔に人を動物に変える魔法が存在して、治す方法も存在はしたのは本当で。今の自分には猫から人間に治すことはできないが、しばらく我慢してほしい、きっと大丈夫たから。
 その言葉を信じて猫として過ごしていた。

「じゃあ、マルガリータ夫人は眠らせるつもりの薬を作ったつもりでいたのかしら」
 本人が崖でそんなふうに言っていた。眠らせる薬のはずが猫になる薬を作ってしまったというわけだ。
「そうなんだろ。あまり出来のいい魔女ではなかった、と、これはクララさんが言ってたんだけどな」
 結果死んじゃうような薬ではなくてよかったというべきか。

「じゃあ、デヴィッド様も」
「ああ、あいつの場合は自分から薬を飲んで猫になったんだけど、気付いたら猫になってたって言ってたよ。身体のあちこちが痛くなって気絶していたところをクララさんに保護されて俺と引き合わされたんだ」

「クララおばあさん、全部知ってたんでしょうか」
「この森で狩りをするのに村で食事したんだよ。その時、女給に変装してた妹に気づいたらしい。で気にしていたらしいよ」
 それからずっと気にかけてくれていたのか。

「フェリシア嬢も大丈夫だろう。もう聞いてるよね? レラ嬢といるのは」
「ええ、この前会ったばかり」
 少しばかり目を細めたディーンは、
「で、ジュドが会いに来たんだろう?」
 と眉間にしわを寄せる。

「あ~そうよ、食料持ってきてくれたの」 
「ふーん」

 ん?
 何か怒ってる? 



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