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王様の呼び出し
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数日後、王宮からお迎えがやってきた。
もしかしたら、と思ってはいたが。
町から来た行商さんから買った一張羅に着替えると馬車に乗って王宮へと向った。
なんたか処刑場に連れて行かれるような気分よね。この場にクロがいたら元気出るんたけど。
クロではなくディーンに会えるかな。崖の一件以来、噂話でしかその存在を確認できていない。
ついた場所は今まで行ったことのあるお屋敷の中でも一番大きなお屋敷というよりお城。
王様かいるお城だ。
馬車は広い庭を奥へと進んでいく。見ると、他にも馬車が立て込んでいて、停まった馬車からは着飾った令嬢が降りてきていた。
パーティでもあるのかな。
幾人ものご令嬢の姿に、自分の姿がみすぼらしく感じたが。
これだって町で流行ってるドレス、みたいなもんなんだから。気合を入れなおしていると、私の乗った馬車は、多くの馬車が停まっている場所を通り過ぎ、林のような中へと進んでいった。
広い庭にある林を抜けると野菜や花が育つ庭の中にある小さな家があらわれた。
その前に泊る馬車。馬車のドアを騎士らしい人が開けてくれた。
「こちらにどうぞ」
と家の中に促される。
赤い屋根の小さな家は街娘姿の私にはフィットしていて安心した。
中に入ると、まさに村にある家と同じ、木の椅子とテーブル。
その椅子に座る一人の人物。
「リヒャルト・ルクルット王、ミーガン様お連れしました」
!?
「よくいらしてくれた」
といって微笑んだ男性はリヒャルト・ルクルット王。なんとはなしに人間に戻ったクロ、ディーンに似ている感じがする。
だが、王様がひとりで、私と会うなんてどういうこと?
まずは何から? 貴族の挨拶をすべき?
カテーシーだっけ、とスカートを持ち上げようとしたがルクルット王は手のひらを向け、動きを止めさせた。
「ここには私とあなただけだ、礼儀にとらわれなくても良しとしましょう」
見ると、案内してくれた騎士も外に出たのかここにはいない。
「ところで、報奨金はいらないと聞きましたが本当ですか」
報奨金の話は本当だったのか。いきなり聞かれ驚いたが「はい」とうなづいて返した。
「何もいらないから伯爵夫人の刑を減刑してほしいと」
「はい」
いきなりの核心に声が小さくなる。
ジュドにお金や地位なんていらないから、刑を減刑してほしい。そう伝えてほしいと頼んだ。まさか王様に直に伝えたのかしら。
「あなたも命を狙われた。もしかしたら死んでいたかもしれないのに。それでも減刑を望むのですか」
困った。確かにそうなのだが。私は黙ったまま頷くと、ルクルット王は大きく息を吐きだした。
「すみません」
「なぜ謝るんですか」
王様を困らせてるなんて問題だが、お腹に力を入れた私は、
「王様からしたら、大事なお子様が狙われたわけですからとても許せないと思います」
と言った。
「もちろん、刑罰を受けるべきだとは私も思います」
とも。
「ですが、せめて死刑だけはやめてほしくて」
死刑になるだろう、とクララおばあさんは言っていた。原作通りなら、私は死刑となる魔女だった。レラは修道院に送られた。ということは、王様の姉、ロザリン夫人も。
「バロワン伯爵夫人は、命を奪うような薬ではなく、眠らせる薬を作ったつもりだったようなんです。もちろん、それでも許せることではありません。ですが」
にぎっていた両手にぎゅっと力が入っていた。
「今は反省されていると思います。それにロザリン・フェルプス公爵夫人も。デヴィッド様も行方不明になられて、事の重大さに気づかれてると思うんです。誰よりも深く悔やまれているんじゃないかと」
「バロワン伯爵夫人にしろロザリン様にしろ、愛している方のためを思っての行動が行き過ぎたんだと思うんです」
一息で言った私に、眉根を寄せて聞いていたルクルット王は、
「あなたが崖から落ちて死んでしまうかもしれなくてもディーンを助けようとしたようにですか?」
と真剣な表情を向けてきた。
もしかしたら、と思ってはいたが。
町から来た行商さんから買った一張羅に着替えると馬車に乗って王宮へと向った。
なんたか処刑場に連れて行かれるような気分よね。この場にクロがいたら元気出るんたけど。
クロではなくディーンに会えるかな。崖の一件以来、噂話でしかその存在を確認できていない。
ついた場所は今まで行ったことのあるお屋敷の中でも一番大きなお屋敷というよりお城。
王様かいるお城だ。
馬車は広い庭を奥へと進んでいく。見ると、他にも馬車が立て込んでいて、停まった馬車からは着飾った令嬢が降りてきていた。
パーティでもあるのかな。
幾人ものご令嬢の姿に、自分の姿がみすぼらしく感じたが。
これだって町で流行ってるドレス、みたいなもんなんだから。気合を入れなおしていると、私の乗った馬車は、多くの馬車が停まっている場所を通り過ぎ、林のような中へと進んでいった。
広い庭にある林を抜けると野菜や花が育つ庭の中にある小さな家があらわれた。
その前に泊る馬車。馬車のドアを騎士らしい人が開けてくれた。
「こちらにどうぞ」
と家の中に促される。
赤い屋根の小さな家は街娘姿の私にはフィットしていて安心した。
中に入ると、まさに村にある家と同じ、木の椅子とテーブル。
その椅子に座る一人の人物。
「リヒャルト・ルクルット王、ミーガン様お連れしました」
!?
「よくいらしてくれた」
といって微笑んだ男性はリヒャルト・ルクルット王。なんとはなしに人間に戻ったクロ、ディーンに似ている感じがする。
だが、王様がひとりで、私と会うなんてどういうこと?
まずは何から? 貴族の挨拶をすべき?
カテーシーだっけ、とスカートを持ち上げようとしたがルクルット王は手のひらを向け、動きを止めさせた。
「ここには私とあなただけだ、礼儀にとらわれなくても良しとしましょう」
見ると、案内してくれた騎士も外に出たのかここにはいない。
「ところで、報奨金はいらないと聞きましたが本当ですか」
報奨金の話は本当だったのか。いきなり聞かれ驚いたが「はい」とうなづいて返した。
「何もいらないから伯爵夫人の刑を減刑してほしいと」
「はい」
いきなりの核心に声が小さくなる。
ジュドにお金や地位なんていらないから、刑を減刑してほしい。そう伝えてほしいと頼んだ。まさか王様に直に伝えたのかしら。
「あなたも命を狙われた。もしかしたら死んでいたかもしれないのに。それでも減刑を望むのですか」
困った。確かにそうなのだが。私は黙ったまま頷くと、ルクルット王は大きく息を吐きだした。
「すみません」
「なぜ謝るんですか」
王様を困らせてるなんて問題だが、お腹に力を入れた私は、
「王様からしたら、大事なお子様が狙われたわけですからとても許せないと思います」
と言った。
「もちろん、刑罰を受けるべきだとは私も思います」
とも。
「ですが、せめて死刑だけはやめてほしくて」
死刑になるだろう、とクララおばあさんは言っていた。原作通りなら、私は死刑となる魔女だった。レラは修道院に送られた。ということは、王様の姉、ロザリン夫人も。
「バロワン伯爵夫人は、命を奪うような薬ではなく、眠らせる薬を作ったつもりだったようなんです。もちろん、それでも許せることではありません。ですが」
にぎっていた両手にぎゅっと力が入っていた。
「今は反省されていると思います。それにロザリン・フェルプス公爵夫人も。デヴィッド様も行方不明になられて、事の重大さに気づかれてると思うんです。誰よりも深く悔やまれているんじゃないかと」
「バロワン伯爵夫人にしろロザリン様にしろ、愛している方のためを思っての行動が行き過ぎたんだと思うんです」
一息で言った私に、眉根を寄せて聞いていたルクルット王は、
「あなたが崖から落ちて死んでしまうかもしれなくてもディーンを助けようとしたようにですか?」
と真剣な表情を向けてきた。
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