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魔女の正体

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 黒マントの女性は、
「ったく、あいつらふたりとも役に立たないんだから」
 と悪態をつく。
 2人と言われ、ジュドを狙っていた黒づくめの男たち、怪しい行商の2人組を思い出す。

「あのふたり」
「そうよ。魔女の言葉にびびっちゃって。役に立たないったら。あんた魔女なんでしょう?」
 
 魔女。
 
 そういえば、ジュドが狙われたとき、ジュドが私に魔女と言ったら、ふたりはあわてて逃げていったっけ。そのことなのか。そうかあ、あのときは何で? と思ったが、私が魔女だってびびって逃げたのか。
 
 なーんだ、と思ったが。
 私が魔女?

 冗談じゃない。目の前の女のほうがよほど魔女っぽい。黒いマントなんて白雪姫や私の知ってる童話に出てくる魔女そのものじゃない。

 ふうっとため息をついた魔女は、

「まさか、そんな強い魔法を使えるとは思わなかったわ」
「え?」
「牢屋の壁には魔法封じのサインまで書いたのに」
 ジュドと捕まっていた牢屋のようなところの壁に何やら模様みたいなものが描かれていたが。あれのことか。
「あの幽閉騒ぎって」
 指をさすと、
「そうよ。あんたとジュドと2人ともしばらく行方不明にでもなってもらおうかと思ったのに。メイドにも薬を使ってうまくいってたのに」
 メイドさんが私が急用で帰ったと言ったとか。あれもこの人の仕業なの? 
「あっ! じゃあもしかして。メリ何とか嬢の様子がおかしかったけど」

「メリガレット嬢よ。あの子、本当にあんたに嫉妬してたのよ。だからそれを利用しようと思ったんだけど」
「頭痛がひどいって」
「それね、薬であんたを憎む気持ちの増大を図ったけど。やりたくない気持ちが勝ってたのかもねえ」
 魔女はふうっと息をついた。

「でもあんたが悪いのよ。いったいどんな魔法を使ったのよ」
「はい?」
「知らないとは言わせないわ。デヴィッドをどこへやったのよ」

 は? デヴィッド? 

「デヴィッドって王太子になるはずだった」
「そうよ! フェリシアと一緒になって何もかもうまくいくはずだったのに」

 フェリシアですって。
 ま、まさか。
 考えられる女性は一人しかいない。

「あなた、フェリシアのおばさん?」
「おばさんって名称は気に食わないけど。そうよ」
 うなづいた魔女はかぶっていたフードをずらした。

 マルガレータ・バロワン伯爵夫人! あの美魔女だよ。

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