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どっちの世界が本当?
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「よかった、出てくれて。覚えてるよね、俺だよ」
俺俺詐欺かと思ったが、電話の向こうから聞こえてくるこの声は雄大だ。
元の婚約者。
その声がスマホから聞こえてくる。
「まさかL&4Sグループのパーティで会うなんてなあ。あそこの部長と知り合いなの? あのときは英莉が失礼な態度をとったかもしれないけど他意はないんだ。だから、部長とコンタクト取ってほしくて」
いつも頼みごとをするときの眉を下げた顔が浮かんでくる。
「うちの会社、あのグループとの取引がなくなったらやばいんだよ。美里ならわかるよね」
L&4Sグループというと、身の回りのものから食品等々、衣食住から娯楽まで人に関わるもの広く扱っている。エコがさけばれるよりも前から自然と人との関わりに重点を置いていて、今になって注目度を上げている。
確かに私が働いていた会社の大きい取引先だ。そこのパーティって……私、何してるんだろ? 関連会社に就職したのかしら。そんなとこのお偉いさんと知り合いなのかなんなのか、雄大が必死ということは何かしらあったんだろうが。
「……あの時は悪かったって思ってるんだ」
小さな声で「でも」と続ける。
「母さんと英莉に言われて仕方なかったんだよ」
眉を下げ口の端を曲げ弱ったような顔の雄大が頭に浮かぶ。
「別れたくはなかったんだ」
ああ。
こういう人だったっけ。
「本当なんだよ、信じてくれるよね」
自分は悪くないんだ、という声まで聞こえてくる気がする。
付き合ってた時はやさしい人だと思ってたけど。
「今でも」
とぐちぐちと言い続ける声を聴き続ける気持ちにはなれなかった。
ぶちっと電話を切った。
以前なら電話を切ることも縁を切ることもできずに言うことを聞いていたんだろう。
「私もどうかしてたのかも。頼られたら助けなきゃなんて必死になってたもんなあ」
息を吐きだすとスマホの側面を押して電源自体を切ってテーブルに置いた。
本当の優しさもわからないなんて。
と、ふとテーブルに置いたままのゲーム機に目がいった。
ゲーム機を持ち上げると、暗かった画面が明るくなってゲームのスタート画面が現れた。
そこには。
「こ、これ、にじげー!?」
以前、私がやっていたゲーム。さっきまでいたと思っていた場所。
「虹のゲート!」
そういいつつボタンを押すとゲーム画面からキャラクターのスチルが画面にかわる。
「これ、フェリシアだ」
目の前で会ったフェリシアと同じ姿のキャラクターがお花を手一杯に抱えて微笑んでいる。
「ちょっと本物とは違う清純さを感じるわね」
と本人が聞いたら怒りそうなことを言いつつゲーム機のボタンを操作しそうになったが、その指がぴたりと止まった。
「これ」
フェリシアはお屋敷にいるのだろう、バックに大きなお屋敷らしい建物と、庭が見える。
更に、遠くからフェリシアを優し気に見つめて立っている二人の男女。
「これ、バロワン伯爵だわ」
小屋で会ったフェリシアの叔父さまの姿そのままだ。その横に立つのは、奥様のバロワン伯爵夫人ということになるはずだが。
「これが、あの夫人?」
黒髪に大きな瞳、長いまつ毛に赤い唇。女が見ても色気というか独特なオーラを感じる女性。
だったよね。レラのお家で初めて会ったのは。
だけど、スチルに描かれたフェリシアの叔母は、緑がかった茶色系の髪をまとめ、緑色の目をしている。旦那様と並んで幸せそうに微笑む姿は。
「私? いや、これミーガンだ」
あっちの世界のミーガンがそこには描かれている。つまりは私なんだけど。でも。
「な、なんで? フェリシアの義理の叔母さんがミーガンだなんて。ミーガンは魔女なんじゃないの? 私がいたあの世界では魔女だったはずなのに」
いや、まって、あれは夢だったの? 何だったの?
ここが現実であれは長いリアルな夢? フェリシアもレラも、ふわふわな手触りのクロも夢なの?
何が本当かわからない。
どういうこと?!
俺俺詐欺かと思ったが、電話の向こうから聞こえてくるこの声は雄大だ。
元の婚約者。
その声がスマホから聞こえてくる。
「まさかL&4Sグループのパーティで会うなんてなあ。あそこの部長と知り合いなの? あのときは英莉が失礼な態度をとったかもしれないけど他意はないんだ。だから、部長とコンタクト取ってほしくて」
いつも頼みごとをするときの眉を下げた顔が浮かんでくる。
「うちの会社、あのグループとの取引がなくなったらやばいんだよ。美里ならわかるよね」
L&4Sグループというと、身の回りのものから食品等々、衣食住から娯楽まで人に関わるもの広く扱っている。エコがさけばれるよりも前から自然と人との関わりに重点を置いていて、今になって注目度を上げている。
確かに私が働いていた会社の大きい取引先だ。そこのパーティって……私、何してるんだろ? 関連会社に就職したのかしら。そんなとこのお偉いさんと知り合いなのかなんなのか、雄大が必死ということは何かしらあったんだろうが。
「……あの時は悪かったって思ってるんだ」
小さな声で「でも」と続ける。
「母さんと英莉に言われて仕方なかったんだよ」
眉を下げ口の端を曲げ弱ったような顔の雄大が頭に浮かぶ。
「別れたくはなかったんだ」
ああ。
こういう人だったっけ。
「本当なんだよ、信じてくれるよね」
自分は悪くないんだ、という声まで聞こえてくる気がする。
付き合ってた時はやさしい人だと思ってたけど。
「今でも」
とぐちぐちと言い続ける声を聴き続ける気持ちにはなれなかった。
ぶちっと電話を切った。
以前なら電話を切ることも縁を切ることもできずに言うことを聞いていたんだろう。
「私もどうかしてたのかも。頼られたら助けなきゃなんて必死になってたもんなあ」
息を吐きだすとスマホの側面を押して電源自体を切ってテーブルに置いた。
本当の優しさもわからないなんて。
と、ふとテーブルに置いたままのゲーム機に目がいった。
ゲーム機を持ち上げると、暗かった画面が明るくなってゲームのスタート画面が現れた。
そこには。
「こ、これ、にじげー!?」
以前、私がやっていたゲーム。さっきまでいたと思っていた場所。
「虹のゲート!」
そういいつつボタンを押すとゲーム画面からキャラクターのスチルが画面にかわる。
「これ、フェリシアだ」
目の前で会ったフェリシアと同じ姿のキャラクターがお花を手一杯に抱えて微笑んでいる。
「ちょっと本物とは違う清純さを感じるわね」
と本人が聞いたら怒りそうなことを言いつつゲーム機のボタンを操作しそうになったが、その指がぴたりと止まった。
「これ」
フェリシアはお屋敷にいるのだろう、バックに大きなお屋敷らしい建物と、庭が見える。
更に、遠くからフェリシアを優し気に見つめて立っている二人の男女。
「これ、バロワン伯爵だわ」
小屋で会ったフェリシアの叔父さまの姿そのままだ。その横に立つのは、奥様のバロワン伯爵夫人ということになるはずだが。
「これが、あの夫人?」
黒髪に大きな瞳、長いまつ毛に赤い唇。女が見ても色気というか独特なオーラを感じる女性。
だったよね。レラのお家で初めて会ったのは。
だけど、スチルに描かれたフェリシアの叔母は、緑がかった茶色系の髪をまとめ、緑色の目をしている。旦那様と並んで幸せそうに微笑む姿は。
「私? いや、これミーガンだ」
あっちの世界のミーガンがそこには描かれている。つまりは私なんだけど。でも。
「な、なんで? フェリシアの義理の叔母さんがミーガンだなんて。ミーガンは魔女なんじゃないの? 私がいたあの世界では魔女だったはずなのに」
いや、まって、あれは夢だったの? 何だったの?
ここが現実であれは長いリアルな夢? フェリシアもレラも、ふわふわな手触りのクロも夢なの?
何が本当かわからない。
どういうこと?!
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