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既に番外編じゃあない。72
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元の世界でのゴタゴタのせいか、うっかりハニートラップに引っ掛かりかけた……だのなんだの、いろいろモロモロ愚痴ったからなのか(あ、でもヤッてないからね! だってさ。そこまで聞いてないって)。
加藤は、どこかスッキリした顔になった。
「帰るか残るか、ゆっくり……と言っても時間は限られてるけどさ。その範囲内で考えてみるよ。女房はともかく、子供の顔は見たいからね」
「あぁ。おれも家族に会いたいから帰るって決めたんだ。もう真言に話通したしな。……あんたは、あんたの思うようにすればいいよ。どんな結論出そうとも、あんたが自分で決めた事なら納得出来るはずだからな。……ちょっとだけ、1人になって考えてみちゃどうだ?」
そんな冬至の言葉に、加藤はうん……うん……と、ゆっくりと何度か頷いて。
「そうさせてもらうよ……。ありがとうね、佐伯さん。なんだかスッキリした気分だよ」
そう言って、加藤は食堂を出て行った。
多分、部屋にこもってこれから先の事を考えるのだろう。
そんな加藤の後ろ姿を眺めながら、冬至は。
……ダブル不倫って……。
おれは嫁さんひとすじだからな~。
ありがたい事に、嫁さんの方もそんな感じだし。
正直、おれには理解不能な世界だ。
そんな事を、ぼー……っと考えていたらば。
「……な~、佐伯のおっさん。ちょっといいかな……?」
次の迷える子羊……じゃなかった、相談希望の勇者が1人。
眉間にくっきりとシワを寄せて、悩んでます! と、顔中に落書きしまくったよーな顔で、恐るおそる冬至に声を掛けてきた。
ゑ? と思いつつ、冬至がそちらに目を向けると。
……なんというコトでしょう。
勇者達がおとなしく1列に並んで、お悩み相談の順番待ちをしてるじゃ、あーりませんか……。
「……まぁ、いいけど。……真言や和樹、尚人は何処に行きやがった」
ちなみに。
春香と千里は行列の整理をしていたり……。
どんな立ち位置だ。
メンドー事は、大人にお任せってコトかな。
ガンバれ冬至。
実質30人居ないからな。
完全にこっちに残留決定した残念な大人達以外にも、残留希望者は居るよーだぞ。
……単に、オカシなプライドに振り回されてるだけの、職能勇者の4人、なんてのも相談には来てないけどな。
さて。
引きこもった真言と和樹はともかくとして。
尚人と悟はどーしてるかというと。
なんとなく、2人で一緒に大書庫に絶賛避難中だった。
「賢者殿! 帰還術式は、いったいどのような物でしょうか!」
と、なんだか勘違い甚だしい魔術師連中に追い回されて、流れで2人で大書庫のばあ様の元へと逃げ込んでいた。
が。
まんまと見つかり、大書庫内での賢者&過去見の勇者VS魔術師連中……となった。
「僕に異世界転移の術式がどーの……って、解るワケ無いじゃないですか。僕に聞くだけムダですよ。アレは、紅林が1人で見つけて(?)、1人で準備を進めたシロモノですよ? だいたい……説明されたとして、理解出来るんですかね?」
魔術師連中と、真っ向勝負で言い合いになる尚人。
悟は、さりげなくばあ様こと大書庫の管理者の背後に隠れている。
なんつーか、もれなく瞳孔開いたままで、鼻息も荒く迫ってくる魔術師連中が怖かったらしい。
尚人の横で、悟の盾にされたばあ様だったが。
じろり、と尚人に詰め寄る魔術師連中を見やり、慇懃無礼に。
「これはこれは……。魔術師殿達がこの書庫にいらっしゃるのは、何年……いや、何十年振りかのう? お主ら、求めるモノはここには無い、などと言うて、一歩なりともこの場所に、踏み入る事などなかったものを……」
「……あ、ホントだ」
ばあ様の言葉は、過去見が保証した。
悟の眼は、ここじゃない、どこか遠くを見ていた。
尚人は、2人の言葉を聞いて、驚いて言った。
「え? 紅林はこの3ヶ月、ずーっとここに入り浸ってましたよ? その間、魔術師の人達は一度もここに来なかったんですか? 調べ物とかしなかったんですか?」
尚人が目を向けると、魔術師連中は。
「……」
すっ……と視線を反らす者、苦々しい顔で見返してくる者、逆にばあ様を睨み付けてくる者……。
魔術師って、ホントかな?
尚人が悟に目を向けると、ちょっと虚ろな眼のままで。
「……確かに、ここ数十年は魔術師っポい奴は来てないな。うん」
余計なコト──この3ヶ月、真言もここには居なかった──は口に出さずに魔術師連中を追い込んだ。
尚人は、真言から聞かされていた設定を語った。
「紅林は、ここの書物をすべて読破した上で、帰還術式を組み上げたと言ってました(嘘だけど)。……あなた方は、ここにあるすべての書物の内容を理解している、とでも言うんですか?」
「すべて……?」
「この大量の書物を、すべて読破した、だと?」
魔術師連中は、信じられない、とばかりに首を、頭を振りながら言った。
「あり得ない……! この大量の書物をすべて……だと?」
「我々にすら読めない、文字の意味すら解らない書物もあるのに、何故異世界人が……!」
憤る魔術師連中。
……お前ら、なんだかんだで異世界人達を下に見ていたって、その言い草で分かるぞ。
フザケんなよ。
加藤は、どこかスッキリした顔になった。
「帰るか残るか、ゆっくり……と言っても時間は限られてるけどさ。その範囲内で考えてみるよ。女房はともかく、子供の顔は見たいからね」
「あぁ。おれも家族に会いたいから帰るって決めたんだ。もう真言に話通したしな。……あんたは、あんたの思うようにすればいいよ。どんな結論出そうとも、あんたが自分で決めた事なら納得出来るはずだからな。……ちょっとだけ、1人になって考えてみちゃどうだ?」
そんな冬至の言葉に、加藤はうん……うん……と、ゆっくりと何度か頷いて。
「そうさせてもらうよ……。ありがとうね、佐伯さん。なんだかスッキリした気分だよ」
そう言って、加藤は食堂を出て行った。
多分、部屋にこもってこれから先の事を考えるのだろう。
そんな加藤の後ろ姿を眺めながら、冬至は。
……ダブル不倫って……。
おれは嫁さんひとすじだからな~。
ありがたい事に、嫁さんの方もそんな感じだし。
正直、おれには理解不能な世界だ。
そんな事を、ぼー……っと考えていたらば。
「……な~、佐伯のおっさん。ちょっといいかな……?」
次の迷える子羊……じゃなかった、相談希望の勇者が1人。
眉間にくっきりとシワを寄せて、悩んでます! と、顔中に落書きしまくったよーな顔で、恐るおそる冬至に声を掛けてきた。
ゑ? と思いつつ、冬至がそちらに目を向けると。
……なんというコトでしょう。
勇者達がおとなしく1列に並んで、お悩み相談の順番待ちをしてるじゃ、あーりませんか……。
「……まぁ、いいけど。……真言や和樹、尚人は何処に行きやがった」
ちなみに。
春香と千里は行列の整理をしていたり……。
どんな立ち位置だ。
メンドー事は、大人にお任せってコトかな。
ガンバれ冬至。
実質30人居ないからな。
完全にこっちに残留決定した残念な大人達以外にも、残留希望者は居るよーだぞ。
……単に、オカシなプライドに振り回されてるだけの、職能勇者の4人、なんてのも相談には来てないけどな。
さて。
引きこもった真言と和樹はともかくとして。
尚人と悟はどーしてるかというと。
なんとなく、2人で一緒に大書庫に絶賛避難中だった。
「賢者殿! 帰還術式は、いったいどのような物でしょうか!」
と、なんだか勘違い甚だしい魔術師連中に追い回されて、流れで2人で大書庫のばあ様の元へと逃げ込んでいた。
が。
まんまと見つかり、大書庫内での賢者&過去見の勇者VS魔術師連中……となった。
「僕に異世界転移の術式がどーの……って、解るワケ無いじゃないですか。僕に聞くだけムダですよ。アレは、紅林が1人で見つけて(?)、1人で準備を進めたシロモノですよ? だいたい……説明されたとして、理解出来るんですかね?」
魔術師連中と、真っ向勝負で言い合いになる尚人。
悟は、さりげなくばあ様こと大書庫の管理者の背後に隠れている。
なんつーか、もれなく瞳孔開いたままで、鼻息も荒く迫ってくる魔術師連中が怖かったらしい。
尚人の横で、悟の盾にされたばあ様だったが。
じろり、と尚人に詰め寄る魔術師連中を見やり、慇懃無礼に。
「これはこれは……。魔術師殿達がこの書庫にいらっしゃるのは、何年……いや、何十年振りかのう? お主ら、求めるモノはここには無い、などと言うて、一歩なりともこの場所に、踏み入る事などなかったものを……」
「……あ、ホントだ」
ばあ様の言葉は、過去見が保証した。
悟の眼は、ここじゃない、どこか遠くを見ていた。
尚人は、2人の言葉を聞いて、驚いて言った。
「え? 紅林はこの3ヶ月、ずーっとここに入り浸ってましたよ? その間、魔術師の人達は一度もここに来なかったんですか? 調べ物とかしなかったんですか?」
尚人が目を向けると、魔術師連中は。
「……」
すっ……と視線を反らす者、苦々しい顔で見返してくる者、逆にばあ様を睨み付けてくる者……。
魔術師って、ホントかな?
尚人が悟に目を向けると、ちょっと虚ろな眼のままで。
「……確かに、ここ数十年は魔術師っポい奴は来てないな。うん」
余計なコト──この3ヶ月、真言もここには居なかった──は口に出さずに魔術師連中を追い込んだ。
尚人は、真言から聞かされていた設定を語った。
「紅林は、ここの書物をすべて読破した上で、帰還術式を組み上げたと言ってました(嘘だけど)。……あなた方は、ここにあるすべての書物の内容を理解している、とでも言うんですか?」
「すべて……?」
「この大量の書物を、すべて読破した、だと?」
魔術師連中は、信じられない、とばかりに首を、頭を振りながら言った。
「あり得ない……! この大量の書物をすべて……だと?」
「我々にすら読めない、文字の意味すら解らない書物もあるのに、何故異世界人が……!」
憤る魔術師連中。
……お前ら、なんだかんだで異世界人達を下に見ていたって、その言い草で分かるぞ。
フザケんなよ。
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