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既に番外編じゃあない。19
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練兵場にて。
仕方なく、本っ当~に仕方なく、団長と手合わせする事になった真言。
上半身裸で、練兵場の中心あたりで対戦相手を待ちわびる団長を、イヤそーに眺めていると。
トコトコと真言の側にやって来た春香と千里がおもむろに。
「紅林君は、上、脱がないの?」
真言に集まるナニかを期待する女子達の目、目、目……。
一部、男子込み。
「脱いだ服、預かっててあげるよ~」
さぁ! と言わんばかりに、手を差し出す千里。
その手をパシッと叩いて。
「脱がねーよ、んな必要ねーだろ」
そう言って、残念そーな周囲をざっくりスルーして、真言は和樹に。
「俺が合図したら、不可視の結界頼んだ」
と言って、練兵場中央でワクワクしている団長の所へと向かった。
団長に群がっていた騎士達も下がり。
団長は、実に嬉しそうに腕の筋肉をピクピクさせて。
……その行動に、何の意味があるのか……。
真言はシラケた目を団長に向け。
「和樹。頼む」
和樹は結界を発動させた。
乳白色の、直径20メートル程の、ドーム状の結界。
……ミルクプリンとか、杏仁豆腐とか連想させる。
とぅるんっとしたカンジの……ちょっと美味しそーだな、おい。
不意に、乳白色の壁に周囲を取り巻かれ、狼狽える団長をそのままに。
真言は、和樹が張った結界の中に、更に一回り小さな結界を張った。
遮音結界。
音洩れ禁止、である。
不思議そうに、結界をつつきながら、団長は。
「……何もここまで外部から見えないモノを……」
「前にも言ったと思うが、な?」
真言は、年長者に対する敬語を放り投げて、言った。
「俺は、見世物になる気も、誰かの都合の良いコマになる気もねぇんだよ」
結界内の空気が変わった。
ひんやりとした、どこか冷たい空気が結界内を満たした。
真言に背を向けて、結界自体を調べて──と、いうか。
突っついたり叩いたりしていた団長の全身に、鳥肌が立つ程の威圧感が。
ナニが……?
どう考えても、この冷気と威圧感の発生源はすぐ後ろに居るはずの真言で。
おそるおそる、ゆっくりと後ろを振り返った団長は。
……見てはいけないモノを、見た。
見てしまった。
「さあ、OHANASHIの時間だ。物理的に。肉体言語的に」
そう言って、うっそりと笑う真言の目は一切笑っておらず。
口唇の両端を吊り上げて、にいぃ……と笑みの形を作っている、三日月のような口元。
威圧感は更に増し、団長よりも一回りは小さいはずの真言の体躯は、何倍も大きく見える。
あ、ひょっとして。
これ、手を出しちゃいけないモノに、手出ししちゃった感じ?
団長は。
今更ながら、心の底から後悔した。
青ざめる団長に、真言は温度の無い笑みを向けながら、言った。
「さあ、この国の上層部がナニを企んでるか。お前が知る限りの事を、洗いざらい吐いてもらおうか」
拒否は認めない。
言外にそう述べて。
呆然と立ち竦む団長に、三日月が近づいてくる。
ゆっくりと。
確実に。
その頃、結界の外では。
「なんじゃ!? これはいったい、何なんじゃ!」
魔術師長が、練兵場に出現した半円状で、乳白色の奇妙な物体に、驚愕の声をあげていた。
何の素材かまったく解らない、なかなか巨大な物体に、騎士達が寄ってタカって剣を振り下ろしたり、蹴りつけたりしている。
が。
ビクともしない。
魔術師達は皆、青い顔で。
「中が見えない!」
「音も聞こえないぞ!」
「中でナニが行われてるんだ!」
と、右往左往して。
アワ食って狼狽えてるのは、この世界の人間達のみで、勇者達──異世界人達は。
「へー、魔法であんなん作れんだ~」
「ゲームと同じ……とか言ってたな。……イメージか?」
と、それまでいくら講義しても、魔法のマの字も理解してなかったハズの魔法職達が、次々に魔法を成功させ始めた。
まぁ、中には。
「ちょ、恋愛系アプリゲームしかやった事ないのに!」
「スマホの乙女ゲームのどのあたりに魔法要素が……!」
と、憤る者も若干名居たりする。
……そんなコトまで知らんがな。
簡単なヒントだけで、わりとあっさりと魔法を使い出した勇者達に、愕然とする魔術師長。
「ワ……ワシらの教え方が間違ってたんじゃろうか……。それよりも!」
魔術師長は、頭を振りながら叫んだ。
「この、半円状のモノは何じゃ!」
どーやら和樹の展開した不可視の結界は、この世界の魔法ではあり得ないモノ、だったらしい。
「や、中が見えないよーにってリクエストされたけど。……オレは、音の方迄はイジってないぞ」
和樹がぽつり、と言った魔術師長は食い付いた。
「お主があの物体を作ったのか!?」
和樹にめっちゃ詰め寄って、叫んだ魔術師長。
近い。
じーさんが近い。
和樹は思わず冬至を盾にして。
「ナンか騒いでっけど、あれ、タダの結界ですよーっ! オレが付与したのは、不可視ってだけ! 中の音が聞こえないってんなら、中で真言がナンかやったんでしょうよ!」
「! 中に人が居るのか!?」
魔術師長は、間に入った冬至に詰め寄る。
おっさんとじーさんが、至近距離で見つめ合う……。
何の需要も無い。
そして、じーさん。
マジで近い。
和樹に盾にされた冬至が、どうしたらいいのか分からずにホールドアップ。
冬至の背中からちょっとだけ顔を出した和樹が、こそっと言った。
「とりあえず、あの中には団長と真言が居るけど」
「なんじゃと!?」
仕方なく、本っ当~に仕方なく、団長と手合わせする事になった真言。
上半身裸で、練兵場の中心あたりで対戦相手を待ちわびる団長を、イヤそーに眺めていると。
トコトコと真言の側にやって来た春香と千里がおもむろに。
「紅林君は、上、脱がないの?」
真言に集まるナニかを期待する女子達の目、目、目……。
一部、男子込み。
「脱いだ服、預かっててあげるよ~」
さぁ! と言わんばかりに、手を差し出す千里。
その手をパシッと叩いて。
「脱がねーよ、んな必要ねーだろ」
そう言って、残念そーな周囲をざっくりスルーして、真言は和樹に。
「俺が合図したら、不可視の結界頼んだ」
と言って、練兵場中央でワクワクしている団長の所へと向かった。
団長に群がっていた騎士達も下がり。
団長は、実に嬉しそうに腕の筋肉をピクピクさせて。
……その行動に、何の意味があるのか……。
真言はシラケた目を団長に向け。
「和樹。頼む」
和樹は結界を発動させた。
乳白色の、直径20メートル程の、ドーム状の結界。
……ミルクプリンとか、杏仁豆腐とか連想させる。
とぅるんっとしたカンジの……ちょっと美味しそーだな、おい。
不意に、乳白色の壁に周囲を取り巻かれ、狼狽える団長をそのままに。
真言は、和樹が張った結界の中に、更に一回り小さな結界を張った。
遮音結界。
音洩れ禁止、である。
不思議そうに、結界をつつきながら、団長は。
「……何もここまで外部から見えないモノを……」
「前にも言ったと思うが、な?」
真言は、年長者に対する敬語を放り投げて、言った。
「俺は、見世物になる気も、誰かの都合の良いコマになる気もねぇんだよ」
結界内の空気が変わった。
ひんやりとした、どこか冷たい空気が結界内を満たした。
真言に背を向けて、結界自体を調べて──と、いうか。
突っついたり叩いたりしていた団長の全身に、鳥肌が立つ程の威圧感が。
ナニが……?
どう考えても、この冷気と威圧感の発生源はすぐ後ろに居るはずの真言で。
おそるおそる、ゆっくりと後ろを振り返った団長は。
……見てはいけないモノを、見た。
見てしまった。
「さあ、OHANASHIの時間だ。物理的に。肉体言語的に」
そう言って、うっそりと笑う真言の目は一切笑っておらず。
口唇の両端を吊り上げて、にいぃ……と笑みの形を作っている、三日月のような口元。
威圧感は更に増し、団長よりも一回りは小さいはずの真言の体躯は、何倍も大きく見える。
あ、ひょっとして。
これ、手を出しちゃいけないモノに、手出ししちゃった感じ?
団長は。
今更ながら、心の底から後悔した。
青ざめる団長に、真言は温度の無い笑みを向けながら、言った。
「さあ、この国の上層部がナニを企んでるか。お前が知る限りの事を、洗いざらい吐いてもらおうか」
拒否は認めない。
言外にそう述べて。
呆然と立ち竦む団長に、三日月が近づいてくる。
ゆっくりと。
確実に。
その頃、結界の外では。
「なんじゃ!? これはいったい、何なんじゃ!」
魔術師長が、練兵場に出現した半円状で、乳白色の奇妙な物体に、驚愕の声をあげていた。
何の素材かまったく解らない、なかなか巨大な物体に、騎士達が寄ってタカって剣を振り下ろしたり、蹴りつけたりしている。
が。
ビクともしない。
魔術師達は皆、青い顔で。
「中が見えない!」
「音も聞こえないぞ!」
「中でナニが行われてるんだ!」
と、右往左往して。
アワ食って狼狽えてるのは、この世界の人間達のみで、勇者達──異世界人達は。
「へー、魔法であんなん作れんだ~」
「ゲームと同じ……とか言ってたな。……イメージか?」
と、それまでいくら講義しても、魔法のマの字も理解してなかったハズの魔法職達が、次々に魔法を成功させ始めた。
まぁ、中には。
「ちょ、恋愛系アプリゲームしかやった事ないのに!」
「スマホの乙女ゲームのどのあたりに魔法要素が……!」
と、憤る者も若干名居たりする。
……そんなコトまで知らんがな。
簡単なヒントだけで、わりとあっさりと魔法を使い出した勇者達に、愕然とする魔術師長。
「ワ……ワシらの教え方が間違ってたんじゃろうか……。それよりも!」
魔術師長は、頭を振りながら叫んだ。
「この、半円状のモノは何じゃ!」
どーやら和樹の展開した不可視の結界は、この世界の魔法ではあり得ないモノ、だったらしい。
「や、中が見えないよーにってリクエストされたけど。……オレは、音の方迄はイジってないぞ」
和樹がぽつり、と言った魔術師長は食い付いた。
「お主があの物体を作ったのか!?」
和樹にめっちゃ詰め寄って、叫んだ魔術師長。
近い。
じーさんが近い。
和樹は思わず冬至を盾にして。
「ナンか騒いでっけど、あれ、タダの結界ですよーっ! オレが付与したのは、不可視ってだけ! 中の音が聞こえないってんなら、中で真言がナンかやったんでしょうよ!」
「! 中に人が居るのか!?」
魔術師長は、間に入った冬至に詰め寄る。
おっさんとじーさんが、至近距離で見つめ合う……。
何の需要も無い。
そして、じーさん。
マジで近い。
和樹に盾にされた冬至が、どうしたらいいのか分からずにホールドアップ。
冬至の背中からちょっとだけ顔を出した和樹が、こそっと言った。
「とりあえず、あの中には団長と真言が居るけど」
「なんじゃと!?」
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