目標:撤収

庭にハニワ

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撤収!

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さて。
俺らの拠点跡地にやって来て、さぁ帰還術式を……って時に、思い出した。

結局、銀竜はどーするワケ?

どことなく、すがるよーな目で見てるジェイの視線を受け流しつつ銀竜は。
一度目を閉じてから、心の底を吐露するように。

「叶うのであれば、あるじ様と共に、いつまでも何処までも……と、願うのですが。どうやらそれは、不可能なようですので。支部長様さえよろしければ、マドゥーニーギルドにお世話になりたく思います」

銀竜は、ものスゴ~く残念そうだ。
が、前置きな決断を下したよーで、なにより。

……うん。
元の世界との繋がり──血縁的な、DNA 的なモンが無いと、次元間移動の際にどの辺で、どんな風になるか……皆目見当がつかないんだよな。
移動人数で言ったら、マクリールで聖女ならぬ性女になった、JKの分があるよな?と、調べたんだが。
これ、この術式。
あくまでも帰還術式なんだよ。
帰るっつーか、元に戻すっつーか。
あるべきところに返すだけ。
まったくもって、融通のきかない術式だった。

……親父……。
異世界から、余計なナマモノ持ち込むなってコトかよ。

まぁ、しょーがない。
とりあえず、俺が持っててもしょーがないモノは、全部銀竜にやろう。
俺らが帰った後、それをどうするか、どう使うかはお前の自由だぞ、銀竜。

俺は、俺らが使ってた《壺中天(笑)》、魔改造馬車。
ドランク系のサルどもとか、サメとかエビとかカニとか……。
いろんな素材を丸っと全部。
コピーした異次元倉庫にごっそりと入れて、プレゼントだ。
ある意味、報酬かな?
まぁ、とりあえず。
銀竜よ。
パンダが手ぐすね引いて待ち構えてるから、気をつけろよー。



さて。
帰るにあたって、俺らは拉致られ当時の
格好をしてるワケだが。
久しぶりに制服着たら、モノすげ~違和感。
学ランの首んトコのカラーが、擦れて痛い。
ギルド長は、見馴れない服に興味津々だ。

「……上質な布地に、この縫製技術……。異世界って、凄いわね~」

あの国、たびたび異世界から召喚という名の拉致を繰り返してんだから、少しくらい異世界知識が民間に流出してても……。

「……次代の王族の結婚相手として拉致するんだよ? がっちり抱え込んで、情報は一切洩らさないのが普通じゃないかな?」

あー。
ミヤさんの言うとーりカモな。
あのJK、完璧に隔離されてたしな。

……どーでもいいけどな。



スズとリッカさんは、リドラさんや猫科親子と別れを惜しんでいる。
ミヤさんは、ギルド長とお話中だ。
リーランさんが、鼻息荒く俺の行動すべてを、まばたきすらせず食い入るよーに見詰めているのがなんとなく怖い。
間近で、じゃないのは、銀竜がパンダを押さえてるからだな。
……最後まで済まんな銀竜。



じゃ、そろそろ始めるとするか。

俺は、魔素をたっぷりと取り込んで、真っ黒に染まったペンダントを外して地面に置いた。
丁度《壺中天(笑)》を展開していた中心部あたり、この辺かな? と見当つけてな。

スズにミヤさん、リッカさん。
別れの挨拶は、もう良いか?

左足だけ裸足になって。
俺は皆に声を掛けた。

リドラさんが俺の前に来て。

「……寂しくなるよ、コウ……」

そう言ったリドラさんに、思いっ切りハグされた。
……なかなかの腕力ですな。
地味に痛い。
そして離さない。
離れない。

リドラさん、元気でな。
ギルド長と仲良く……は、俺が言うまでもないか。

ハグっつーよりも、子供が親にしがみついて離れない的な雰囲気のリドラさんの背中を、ポンポンと叩いて。
よーやくリドラさんが離れたと思ったら、猫又母を頭に乗っけたジェイにも。

「お前のおかげで、母者とおれは自由になれた。ありがとう」
「にゃあ」

きゅ、と一回ハグして。

その後ギルド長とリーランさんにもハグされて。
スズ達も、ハグし合って。

最後に銀竜が。

「あるじ様」

思い切りには、本当にいろいろと世話になったな。
元気でやれよな。

「……もったいないお言葉です……」

涙目の銀竜。
気付けば、あっちもこっちも涙目だ。



俺は、裸足の左足──足の裏にある魔法陣が触れるよーに──で、ペンダントを踏み砕き、鍵となる言葉を言った。

「撤収」







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