目標:撤収

庭にハニワ

文字の大きさ
上 下
247 / 374

更に再登場。

しおりを挟む
ジェイの母親が猫又だった。
うん、予想外。
てっきり何らかの獣人の人だと思い込んでたわ。
いや、だってさ?
母親、で、尻尾、で、気まぐれで……。
あ、うん、猫だわ。
ウソは言ってねーわ、ジェイ。

そのジェイは三毛猫又を抱き抱えて、半泣きだ。
むしろ半泣きで踏みとどまっている。
……ここ、敵地だモンな。
三毛猫又は、ぐるぐるぐるぐる喉を鳴らしながら、ジェイの頬を流れ落ちた涙を舐め取ったり、鼻面をくっ付けたり……。
スズがものすごい羨ましそーに見ている。
でもな?
これ、親子の感動の対面じゃあなくて、迷子のペットと再会した飼い主の図、だな。

しかし、三毛猫又……捕らわれの50年のうちに、尻尾2本に増えたのかよ?
まあその辺の話とか、スズ達の大活躍とかは、後でな。
後でゆっくり、な。

とにかく。
お前ら、さっさと逃げろや。

「あ……でも、おれは……」

いーからいーから。
銀竜、任せた。

「御意」

銀竜は皆を連れて、館を後にした。
涙目のジェイも、強引に引きずっていった。



4人と一匹を見送って、改めて館攻略を目指す。

「……いや、正直なところ、ジェイを変態錬金術師に会わせる気は無かったんですよねぇ」
「ジェイにそんな気は無くても、変態が何か仕掛けてくるのに使われるって可能性、ゼロじゃないしね。それに……」

ミヤさんは、一旦口ごもり……でも続けて言った。

「正直、ジェイ使えない……と思ったのは、僕だけかな?」

う。

「……俺もあそこまで動けないとは思わなかったですけど……」

俺らは顔を見合せて、失笑。

「……まあ……。行こうか」
「……そーですね」

とにかく、妙な反応を潰していこう。
まずは3つ先のヤツか。

「いきなり本命だったら、楽っちゃ楽なんですけどねぇ」
「……その場合、地下は生き埋めかな」

などと話しながら、3つ先の部屋の前に移動。
中の反応は1つ。
大きさは普通。
っつか、一般人サイズ。

んじゃ……行きますかね?



ムダに立派な館に相応しい、ムダに豪奢な造りのドアを開けた。
何のためらいも無く、ガチャッと。

あ、開ける前に、ちゃ~んとチェック入れたぞ?
でも何の仕掛けも、魔法の痕跡も無かったからな。
普通に開けた。

部屋の奥には1人。
どこかで見たことある女……っつか、人ウサギが立っていた。

「あ、はぁ……久しぶりですねぇ……。待ってましたよぉ、おに~い、さん?」

……なんか……前よりもヤバいカンジだ。
病んでいる。
全体的に、病んでいる。
何がヤバいって、目がヤバい。
焦点が合ってない上に、瞳孔が開いている。
全身切り刻んで、バラバラにしたところをもう一度縫い合わせたよーな……よーするに、フランケンシュタインかブ○ック・○ャックみたいな容貌になっていた。

「まあ、相変わらずバランス悪いカラダしてるワケだが」

女であることを強調したよーな、どこか作りモノめいた身体。
今は狂気じみた雰囲気をかもし出して。

うん、ヤバい。



人ウサギの目はミヤさんに釘付けだ。

「おに~いさぁ~ん、今度こそ、わたしのモノになってくれますよ、ねぇ~?」

にたり、と笑うと人ウサギは。
ぬるぬるした動きで、俺らの方に近寄ってくる。

……キモい。

「コウ、アレの魔素はどうかな?」

ミヤさんは、魔刃を手に俺に聞いてきた。
どれ……うん。

「こいつ、マジで魔物化してますね。……なかなかの魔素量ですよ」
「そう……じゃあ」

ミヤさんは、ぬるぬる近づいてくる人ウサギを見据え。

「じゃあ、手加減無しで、いいかな」

冷たい目のままで、口元だけ笑っていた。



「あぁ……そういえば、アレは病原体のカタマリなんだっけ」

ミヤさんは、手に持っていた魔刃をしまい込んだ。
うふうふ笑いながら、人ウサギはぬるぬる近づいてくる。

どーすんだよミヤさん。
俺、殺ろうか?
なんか自然な形でミヤさんが殺る、みたいな状況になってるけど。

ミヤさんは、口元の笑いを強めると。

「まあ、見ててよ」

そう言って、何も持たない右手を人ウサギに向けた。

瞬間。

「う?」

人ウサギの、ぬるぬるした動きが、止まった。







しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

異世界で勇者をやって帰ってきましたが、隣の四姉妹の様子がおかしいんですけど?

レオナール D
ファンタジー
異世界に召喚されて魔王を倒す……そんなありふれた冒険を終えた主人公・八雲勇治は日本へと帰還した。 異世界に残って英雄として暮らし、お姫様と結婚したり、ハーレムを築くことだってできたというのに、あえて日本に帰ることを選択した。その理由は家族同然に付き合っている隣の四姉妹と再会するためである。 隣に住んでいる日下部家の四姉妹には子供の頃から世話になっており、恩返しがしたい、これからも見守ってあげたいと思っていたのだ。 だが……帰還した勇治に次々と襲いかかってくるのは四姉妹のハニートラップ? 奇跡としか思えないようなラッキースケベの連続だった。 おまけに、四姉妹は勇治と同じようにおかしな事情を抱えているようで……? はたして、勇治と四姉妹はこれからも平穏な日常を送ることができるのだろうか!? 

【完結】転生7年!ぼっち脱出して王宮ライフ満喫してたら王国の動乱に巻き込まれた少女戦記 〜愛でたいアイカは救国の姫になる

三矢さくら
ファンタジー
【完結しました】異世界からの召喚に応じて6歳児に転生したアイカは、護ってくれる結界に逆に閉じ込められた結果、山奥でサバイバル生活を始める。 こんなはずじゃなかった! 異世界の山奥で過ごすこと7年。ようやく結界が解けて、山を下りたアイカは王都ヴィアナで【天衣無縫の無頼姫】の異名をとる第3王女リティアと出会う。 珍しい物好きの王女に気に入られたアイカは、なんと侍女に取り立てられて王宮に! やっと始まった異世界生活は、美男美女ぞろいの王宮生活! 右を見ても左を見ても「愛でたい」美人に美少女! 美男子に美少年ばかり! アイカとリティア、まだまだ幼い侍女と王女が数奇な運命をたどる異世界王宮ファンタジー戦記。

Sランク昇進を記念して追放された俺は、追放サイドの令嬢を助けたことがきっかけで、彼女が押しかけ女房のようになって困る!

仁徳
ファンタジー
シロウ・オルダーは、Sランク昇進をきっかけに赤いバラという冒険者チームから『スキル非所持の無能』とを侮蔑され、パーティーから追放される。 しかし彼は、異世界の知識を利用して新な魔法を生み出すスキル【魔学者】を使用できるが、彼はそのスキルを隠し、無能を演じていただけだった。 そうとは知らずに、彼を追放した赤いバラは、今までシロウのサポートのお陰で強くなっていたことを知らずに、ダンジョンに挑む。だが、初めての敗北を経験したり、その後借金を背負ったり地位と名声を失っていく。 一方自由になったシロウは、新な町での冒険者活動で活躍し、一目置かれる存在となりながら、追放したマリーを助けたことで惚れられてしまう。手料理を振る舞ったり、背中を流したり、それはまるで押しかけ女房だった! これは、チート能力を手に入れてしまったことで、無能を演じたシロウがパーティーを追放され、その後ソロとして活躍して無双すると、他のパーティーから追放されたエルフや魔族といった様々な追放少女が集まり、いつの間にかハーレムパーティーを結成している物語!

【完結】お花畑ヒロインの義母でした〜連座はご勘弁!可愛い息子を連れて逃亡します〜

himahima
恋愛
夫が少女を連れ帰ってきた日、ここは前世で読んだweb小説の世界で、私はざまぁされるお花畑ヒロインの義母に転生したと気付く。 えっ?!遅くない!!せめてくそ旦那と結婚する10年前に思い出したかった…。 ざまぁされて取り潰される男爵家の泥舟に一緒に乗る気はありませんわ! ★恋愛ランキング入りしました! 読んでくれた皆様ありがとうございます。 連載希望のコメントをいただきましたので、 連載に向け準備中です。 *他サイトでも公開中 日間総合ランキング2位に入りました!

僕の兄上マジチート ~いや、お前のが凄いよ~

SHIN
ファンタジー
それは、ある少年の物語。 ある日、前世の記憶を取り戻した少年が大切な人と再会したり周りのチートぷりに感嘆したりするけど、実は少年の方が凄かった話し。 『僕の兄上はチート過ぎて人なのに魔王です。』 『そういうお前は、愛され過ぎてチートだよな。』 そんな感じ。 『悪役令嬢はもらい受けます』の彼らが織り成すファンタジー作品です。良かったら見ていってね。 隔週日曜日に更新予定。

[完結]回復魔法しか使えない私が勇者パーティを追放されたが他の魔法を覚えたら最強魔法使いになりました

mikadozero
ファンタジー
3月19日 HOTランキング4位ありがとうございます。三月二十日HOTランキング2位ありがとうございます。 ーーーーーーーーーーーーー エマは突然勇者パーティから「お前はパーティを抜けろ」と言われて追放されたエマは生きる希望を失う。 そんなところにある老人が助け舟を出す。 そのチャンスをエマは自分のものに変えようと努力をする。 努力をすると、結果がついてくるそう思い毎日を過ごしていた。 エマは一人前の冒険者になろうとしていたのだった。

拾ったメイドゴーレムによって、いつの間にか色々されていた ~何このメイド、ちょっと怖い~

志位斗 茂家波
ファンタジー
ある日、ひょんなことで死亡した僕、シアンは異世界にいつの間にか転生していた。 とは言え、赤子からではなくある程度成長した肉体だったので、のんびり過ごすために自給自足の生活をしていたのだが、そんな生活の最中で、あるメイドゴーレムを拾った。 …‥‥でもね、なんだろうこのメイド、チートすぎるというか、スペックがヤヴァイ。 「これもご主人様のためなのデス」「いや、やり過ぎだからね!?」 これは、そんな大変な毎日を送る羽目になってしまった後悔の話でもある‥‥‥いやまぁ、別に良いんだけどね(諦め) 小説家になろう様でも投稿しています。感想・ご指摘も受け付けますので、どうぞお楽しみに。

おっさん料理人と押しかけ弟子達のまったり田舎ライフ

双葉 鳴|◉〻◉)
ファンタジー
真面目だけが取り柄の料理人、本宝治洋一。 彼は能力の低さから不当な労働を強いられていた。 そんな彼を救い出してくれたのが友人の藤本要。 洋一は要と一緒に現代ダンジョンで気ままなセカンドライフを始めたのだが……気がつけば森の中。 さっきまで一緒に居た要の行方も知れず、洋一は途方に暮れた……のも束の間。腹が減っては戦はできぬ。 持ち前のサバイバル能力で見敵必殺! 赤い毛皮の大きなクマを非常食に、洋一はいつもの要領で食事の準備を始めたのだった。 そこで見慣れぬ騎士姿の少女を助けたことから洋一は面倒ごとに巻き込まれていく事になる。 人々との出会い。 そして貴族や平民との格差社会。 ファンタジーな世界観に飛び交う魔法。 牙を剥く魔獣を美味しく料理して食べる男とその弟子達の田舎での生活。 うるさい権力者達とは争わず、田舎でのんびりとした時間を過ごしたい! そんな人のための物語。 5/6_18:00完結!

処理中です...