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vs. 王族あんど……。
原因の1つ……っつーか、1人。2
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昼間っから『その服(というか、身体に巻き着けた布)は夜着ではないか?』と疑いたくなる薄い生地の、身体のラインもあらわなドレス(とはとても言えない)姿で。
ローズマリーは『まさかそんなバカな事、本気で言ってるわけじゃないわよね?』と言外に漂わせながら、妙に色めいた視線を既に名ばかりの夫に向けた。
もう興味の失せた男、のはずであったが。
ちょっとだけ昔を懐かしく思い起こした故である。
そう、それは昔の事。
あの女と婚姻する前に、夫が自分に向けてきた顔だ。
このわたくし、カルギリア公爵令嬢ローズマリー・カルギリアがわざわざ声を掛けてあげたというのに、愚かにも拒絶してきた時の表情だ。
そして、そんな夫の表情に芋づる式にあの忌々しい女を思い出してしまい、一瞬顔を歪めたローズマリー。
いつも辛気くさい顔をして、ただ黙っているだけの──。
何が、『たおやかで儚げな乙女』か。
なんの主張もせずに、すべてを諦めていただけの弱者ではないか。
そんな女が、婚約者に過剰に愛されているのが気に入らなかった。
同時に。
そんな風に自分だけを見つめる人が欲しかった。
だから邪魔者を排除して、夫を手に入れた。
ブランシェット侯爵家の家人を手懐けて、憎い女を誘拐させ。
手頃な破落戸者どもに、『高貴な婦人が馬車に1人きりでやってくる』と情報を流し。
襲撃させた。
まさか、逃げ続けて崖の上から谷底に馬車ごと転がり落ちるとは思わなかったが。
拐わせて、どこか適当なところに売り飛ばして、二度と陽の目を見ない境遇になればいい、とは思ったが。
まぁ、あの高さから落ちたのならば助かるまい。
目的は、達した。
カルギリア公爵家主催の夜会にて、愛妻を亡くし、落ち込むテオドールを甘く優しい言葉で慰め、ちょっとだけ素直になる薬(ただの媚薬)を使って既成事実をでっち上げ。
──テオドールはモノの役に立たなかったし、その時すでにローズマリーの胎内には命が宿っていた(父親は分からない)──
翌日目覚めて慌てるテオドールの側で、涙にくれる傷ついた令嬢の演技をして周知の事実を作り上げ。
男として責任を取る、という形で。
まんまと愛に一途な男を我がモノとした。
そして時が過ぎ、娘が生まれ。
娘共々一心に愛されて、幸せの絶頂にあったのに……。
すべてが、発覚した。
ローズマリーは『まさかそんなバカな事、本気で言ってるわけじゃないわよね?』と言外に漂わせながら、妙に色めいた視線を既に名ばかりの夫に向けた。
もう興味の失せた男、のはずであったが。
ちょっとだけ昔を懐かしく思い起こした故である。
そう、それは昔の事。
あの女と婚姻する前に、夫が自分に向けてきた顔だ。
このわたくし、カルギリア公爵令嬢ローズマリー・カルギリアがわざわざ声を掛けてあげたというのに、愚かにも拒絶してきた時の表情だ。
そして、そんな夫の表情に芋づる式にあの忌々しい女を思い出してしまい、一瞬顔を歪めたローズマリー。
いつも辛気くさい顔をして、ただ黙っているだけの──。
何が、『たおやかで儚げな乙女』か。
なんの主張もせずに、すべてを諦めていただけの弱者ではないか。
そんな女が、婚約者に過剰に愛されているのが気に入らなかった。
同時に。
そんな風に自分だけを見つめる人が欲しかった。
だから邪魔者を排除して、夫を手に入れた。
ブランシェット侯爵家の家人を手懐けて、憎い女を誘拐させ。
手頃な破落戸者どもに、『高貴な婦人が馬車に1人きりでやってくる』と情報を流し。
襲撃させた。
まさか、逃げ続けて崖の上から谷底に馬車ごと転がり落ちるとは思わなかったが。
拐わせて、どこか適当なところに売り飛ばして、二度と陽の目を見ない境遇になればいい、とは思ったが。
まぁ、あの高さから落ちたのならば助かるまい。
目的は、達した。
カルギリア公爵家主催の夜会にて、愛妻を亡くし、落ち込むテオドールを甘く優しい言葉で慰め、ちょっとだけ素直になる薬(ただの媚薬)を使って既成事実をでっち上げ。
──テオドールはモノの役に立たなかったし、その時すでにローズマリーの胎内には命が宿っていた(父親は分からない)──
翌日目覚めて慌てるテオドールの側で、涙にくれる傷ついた令嬢の演技をして周知の事実を作り上げ。
男として責任を取る、という形で。
まんまと愛に一途な男を我がモノとした。
そして時が過ぎ、娘が生まれ。
娘共々一心に愛されて、幸せの絶頂にあったのに……。
すべてが、発覚した。
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