上 下
306 / 381
vs. 王族あんど……。

原因の1つ……っつーか、1人。2

しおりを挟む
昼間っから『その服(というか、身体に巻き着けた布)は夜着ではないか?』と疑いたくなるうっすい生地の、身体のラインもあらわなドレス(とはとても言えない)姿で。
ローズマリーは『まさかそんなバカな事、本気で言ってるわけじゃないわよね?』と言外に漂わせながら、妙に色めいた視線を既に名ばかりの夫に向けた。

もう興味の失せた男、のはずであったが。
ちょっとだけ昔を懐かしく思い起こしたゆえである。



そう、それは昔の事。

あの女先妻と婚姻する前に、テオドールが自分に向けてきた顔だ。
このわたくし、カルギリア公爵令嬢ローズマリー・カルギリアがわざわざ声を掛けてあげたというのに、愚かにも拒絶してきた時の表情だ。

そして、そんな夫の表情に芋づる式にあの忌々しい女クラウディア・セリスを思い出してしまい、一瞬顔を歪めたローズマリー後妻
いつも辛気くさい顔をして、ただ黙っているだけの──。
何が、『たおやかで儚げな乙女』か。
なんの主張もせずに、すべてを諦めていただけの弱者ではないか。

そんな女が、婚約者に過剰に愛されているのが気に入らなかった。
同時に。
そんな風に自分だけを見つめる人が欲しかった。
だから邪魔者クラウディアを排除して、テオドールを手に入れた。



ブランシェット侯爵家の家人を手懐けて、憎い女クラウディアを誘拐させ。
手頃な破落戸者どもに、『高貴な婦人が馬車に1人きりでやってくる』と情報を流し。

襲撃させた。

まさか、逃げ続けて崖の上から谷底に馬車ごと転がり落ちるとは思わなかったが。

拐わせて、どこか適当なところに売り飛ばして、二度と陽の目を見ない境遇になればいい、とは思ったが。

まぁ、あの高さから落ちたのならば助かるまい。

目的は、達した。



カルギリア公爵家主催の夜会にて、愛妻を亡くし、落ち込むテオドールを甘く優しい言葉で慰め、ちょっとだけ素直になる薬(ただの媚薬)を使って既成事実をでっち上げ。
──テオドールはモノの役に立たなかったし、その時すでにローズマリーの胎内には命が宿っていた(父親は分からない)──

翌日目覚めて慌てるテオドールの側で、涙にくれる傷ついた令嬢の演技をして周知の事実を作り上げ。

男として責任を取る、という形で。
まんまと愛に一途な男テオドールを我がモノとした。

そして時が過ぎ、娘が生まれ。

娘共々一心に愛されて、幸せの絶頂にあったのに……。



すべてが、発覚した。











しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

側妃に追放された王太子

基本二度寝
ファンタジー
「王が倒れた今、私が王の代理を務めます」 正妃は数年前になくなり、側妃の女が現在正妃の代わりを務めていた。 そして、国王が体調不良で倒れた今、側妃は貴族を集めて宣言した。 王の代理が側妃など異例の出来事だ。 「手始めに、正妃の息子、現王太子の婚約破棄と身分の剥奪を命じます」 王太子は息を吐いた。 「それが国のためなら」 貴族も大臣も側妃の手が及んでいる。 無駄に抵抗するよりも、王太子はそれに従うことにした。

私、実は若返り王妃ですの。シミュレーション能力で第二の人生を切り開いておりますので、邪魔はしないでくださいませ

もぐすけ
ファンタジー
 シーファは王妃だが、王が新しい妃に夢中になり始めてからは、王宮内でぞんざいに扱われるようになり、遂には廃屋で暮らすよう言い渡される。  あまりの扱いにシーファは侍女のテレサと王宮を抜け出すことを決意するが、王の寵愛をかさに横暴を極めるユリカ姫は、シーファを見張っており、逃亡の準備をしていたテレサを手討ちにしてしまう。  テレサを娘のように思っていたシーファは絶望するが、テレサは天に召される前に、シーファに二つのギフトを手渡した。

婚約破棄された私は、処刑台へ送られるそうです

秋月乃衣
恋愛
ある日システィーナは婚約者であるイデオンの王子クロードから、王宮敷地内に存在する聖堂へと呼び出される。 そこで聖女への非道な行いを咎められ、婚約破棄を言い渡された挙句投獄されることとなる。 いわれの無い罪を否定する機会すら与えられず、寒く冷たい牢の中で断頭台に登るその時を待つシスティーナだったが── 他サイト様でも掲載しております。

タイムリープ〜悪女の烙印を押された私はもう二度と失敗しない

結城芙由奈 
恋愛
<もうあなた方の事は信じません>―私が二度目の人生を生きている事は誰にも内緒― 私の名前はアイリス・イリヤ。王太子の婚約者だった。2年越しにようやく迎えた婚約式の発表の日、何故か<私>は大観衆の中にいた。そして婚約者である王太子の側に立っていたのは彼に付きまとっていたクラスメイト。この国の国王陛下は告げた。 「アイリス・イリヤとの婚約を解消し、ここにいるタバサ・オルフェンを王太子の婚約者とする!」 その場で身に覚えの無い罪で悪女として捕らえられた私は島流しに遭い、寂しい晩年を迎えた・・・はずが、守護神の力で何故か婚約式発表の2年前に逆戻り。タイムリープの力ともう一つの力を手に入れた二度目の人生。目の前には私を騙した人達がいる。もう騙されない。同じ失敗は繰り返さないと私は心に誓った。 ※カクヨム・小説家になろうにも掲載しています

【コミカライズ決定】地味令嬢は冤罪で処刑されて逆行転生したので、華麗な悪女を目指します!~目隠れ美形の天才王子に溺愛されまして~

胡蝶乃夢
恋愛
婚約者である王太子の望む通り『理想の淑女』として尽くしてきたにも関わらず、婚約破棄された挙句に冤罪で処刑されてしまった公爵令嬢ガーネット。 時間が遡り目覚めたガーネットは、二度と自分を犠牲にして尽くしたりしないと怒り、今度は自分勝手に生きる『華麗な悪女』になると決意する。 王太子の弟であるルベリウス王子にガーネットは留学をやめて傍にいて欲しいと願う。 処刑された時、留学中でいなかった彼がガーネットの傍にいることで運命は大きく変わっていく。 これは、不憫な地味令嬢が華麗な悪女へと変貌して周囲を魅了し、幼馴染の天才王子にも溺愛され、ざまぁして幸せになる物語です。

【完結】妹に全部奪われたので、公爵令息は私がもらってもいいですよね。

曽根原ツタ
恋愛
 ルサレテには完璧な妹ペトロニラがいた。彼女は勉強ができて刺繍も上手。美しくて、優しい、皆からの人気者だった。  ある日、ルサレテが公爵令息と話しただけで彼女の嫉妬を買い、階段から突き落とされる。咄嗟にペトロニラの腕を掴んだため、ふたり一緒に転落した。  その後ペトロニラは、階段から突き落とそうとしたのはルサレテだと嘘をつき、婚約者と家族を奪い、意地悪な姉に仕立てた。  ルサレテは、妹に全てを奪われたが、妹が慕う公爵令息を味方にすることを決意して……?  

(完)聖女様は頑張らない

青空一夏
ファンタジー
私は大聖女様だった。歴史上最強の聖女だった私はそのあまりに強すぎる力から、悪魔? 魔女?と疑われ追放された。 それも命を救ってやったカール王太子の命令により追放されたのだ。あの恩知らずめ! 侯爵令嬢の色香に負けやがって。本物の聖女より偽物美女の侯爵令嬢を選びやがった。 私は逃亡中に足をすべらせ死んだ? と思ったら聖女認定の最初の日に巻き戻っていた!! もう全力でこの国の為になんか働くもんか! 異世界ゆるふわ設定ご都合主義ファンタジー。よくあるパターンの聖女もの。ラブコメ要素ありです。楽しく笑えるお話です。(多分😅)

側妃ですか!? ありがとうございます!!

Ryo-k
ファンタジー
『側妃制度』 それは陛下のためにある制度では決してなかった。 ではだれのためにあるのか…… 「――ありがとうございます!!」

処理中です...