笑顔でナニ言ってんですか？

vs. 王族あんど……。

閑話。ざわざわざわ 2。

愚痴の内容は、主にブランシェット家の娘(予定)だけに限らず。
当然、共に現れた東輝蘭の青年と娘付きの淑女にも言及していた。

得体の知れない東輝蘭の青年。
妖しい笑みに魅了される者も少なくない。

曰く。

「あの東輝蘭の青年、あんな顔で特級冒険者という話だが、本当の事だろうか」
「なんでも、複数の頭を持つ大蛇を１人で討伐したとか……」
「事実であれば、何故そのような腕利きが小娘についているのか」
「……冒険者というのであれば、金銭でどうにか出来るのでは？」
「……あんな小娘に、あの方はもったいないですわ。是非当家に……いえ、わたくし個人に仕えていただきたいですわ」
「ちょっと待って下さい、抜け駆けは無しですよ？」

……等々。

そんな話をしている一方で。

「あの小娘付きの淑女は、ひょっとしたらブランシェット家の使用人の１人か？」
「……いや、あんな淑女は居なかったはず」
「小娘の教育係では？」
「ではセリス家が準備していた教師か」
「……オンタリオ皇国から共に来た、と聞いているが」

とかナンとか。

部屋のあちらこちらで、好き放題に言いたい放題。
声をひそめる訳でもなく、普通の音量でしゃべっている。

まとまりなんか、ひとっカケラもありゃしない。

まさに、烏合の衆。

それなり以上の立場に着いてる者達のハズなんだが、なんだかしょーもない連中である。




不意に。
ざわめきが収まらない部屋に、声が響いた。

「一同、しずまれ」

低い、響く声。
ピタリ、とざわめきが止んだ。

一喝したのは、老齢な割りにがっしりとした身体に圧力のある目力の持ち主。

「これは……盟主殿」

彼が、秘密結社『黒薔薇の系譜』の現在の盟主である。

ぶっちゃけて言うと、先代の王の弟──つまり、現王の叔父にあたる。

そりゃ、結社(笑)もやりたい放題するワケだよ。
なんせ、王族サマが組織のトップなんだから。

……トップというからには、この盟主サマもブランシェット家に何らかの遺恨がある、というコトだろうか。
多分、カビの生えたよーな古い話なんだろう。

……だって、盟主サマじーさんだもの。