笑顔でナニ言ってんですか？

vs. 王族あんど……。

なかなかの修羅場。

ブランシェット侯爵家の別館に、あり得ないほどに湧いて出る黒いあんちくしょう。
っつーか、家庭内害虫Gこと御器被り。
大きさも色ツヤも様々。
物陰から“こそっ”と様子を伺うヤツやら、堂々と『あ？』と言わんばかりに部屋の中央に、でん、と鎮座ましましてるヤツから……。
それに。

「きゃーっ！　飛んだわーっ！」
「奥様！　落ち着いて……」
「いやーっ！　こっちくるーっ！」
「「「うわーっ！！！」」」

……パニック。

そう、飛ぶんだよね、ヤツら。
音も無く、さ。

「もう、いやーっ！！！」



早々に、本館へと逃げ出した別館の住人達だったが。

「うわ！」
「なんでこっちにもいるのよ！」

もれなく後妻ローズマリーについてきた、らしい。

パニック再び。

そんな修羅場の中、喚きたてる母ローズマリーへ、恐るおそる声をかける娘マリアンヌ。

「お、お母様」

微妙に震える声。

「何よ！」
「お背中に……アレ・・が」

部屋の隅にあった姿見に映ったモノは──。

「……？　……！」

そこには、それはそれはデッカい──と、言っても所詮は虫だから、まぁ……たかが知れるワケだが──黒々とした御器被り。

「いーやーっ！！！」




いや、だから言っただろ？

伝染うつるんです。