笑顔でナニ言ってんですか？

vs. 王族あんど……。

わしっとつかむ。

もう腱鞘炎になってもおかしくないって勢いで、ひたすらパンケーキ焼きまくった。
タネの残り少なくなって、どーせなら……と、水分追加して、クレープ焼いたりもしたんだが。
材料あるからね。
ミルクレープ作ってみたりもして。

……ヒマだったんだよ。



部屋中に、甘い……つか、甘ったるい匂いが充満してる。
そんなところに、妙に気疲れしたっポいお貴族サマ方が戻ってきた。
お付きの２人は、なんかやってるのか、一緒じゃないね。

……一応は護衛の有象無象ども？
一応仕事はした、らしいよ？
お貴族サマが部屋に戻ったので、ヤツら部屋前で交替で待機！　するらしい。
故に。
グロリアに、焼きたてでシンプルなパンケーキと、ホイップクリーム＆ほろ苦カラメルソースを持ってってもらった。
交替で食うがいい。

……言うコトきかせるには、胃袋わしづかみが一番有効なんだよな～。



で。
なんだかお疲れらしいので。
仕方ない。
お貴族サマ方にも出してやろう。

シンプルにホイップクリームだけ？
ほろ苦カラメルソース？
フルーツ盛り？
盛り盛りにする？
まさかの全部のせ？

食う当人に希望を聞いてみたところ、セリス伯爵は目を白黒させて。

「え、”盛り“ってナニ？」

……そこからか。
説明しなきゃダメか？
そこはニュアンスで。

侯爵の方は、さっきまでうっすら疲労が漂ってたのに。

「え！　コーラル、お父さんの為に甘い物用意してくれたの!?」

いきなりのテンションMAX状態。
なんか、うざい。

「いや、違うが」

と、あっさりと否定したんだが。
侯爵は。

「だって、こんな大変な……わざわざ作ってくれたんでしょ？　これはもう、お父さんの為に頑張ってくれたんだよね！」

と、こっちの意見はまったく聞いちゃいない。
本当に、自分に都合の良いように受けとるんだな。

私はちょっと……かなり呆れながら。

「いや、単なるヒマ潰しだし、ウチオンタリオじゃこのくらいは子供でも作れるし」

子供のおやつだもんな、パンケーキ。
甘くない、お食事パンケーキってのもまぁ、あるっちゃあるケド。

冷めきった目で、ざっくりと浮かれる侯爵を切り捨てた。

侯爵は、またまた～……と言いながら、ナガツキさんとグロリアに。

「これ、この美味しそうなパンケーキ？　は、コーラルが、お父さん──ボクの為に一生懸命作ってくれたモノだよね？」

確認をするんじゃない。

余計な事しなきゃいいのに。

「え？　コールは不審者が周囲をうろついてるようだから、部屋から出たくないって言って、引きこもる間の暇潰しに作ってたぞ」
「お嬢様は、それはもう大量にパンケーキを焼いてらっしゃいましたわ。僭越ながら、アテクシお手伝いさせていただきましたもの。それに、護衛の方々にも先ほど差し入れとしてお持ち致しましたわよ」
「つまり、特別じゃない、と」
「さようでございますわね。鼻唄まじりで気軽に作っていらっしゃいましたわ」

案の定、２人がかりでめった打ちにしてた。
容赦無いな。