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vs. 王族あんど……。
その頃、あの夫人は。
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ローズマリー・カルギリア・ブランシェット侯爵夫人(後妻)は、自らが君臨するブランシェット家の別館──必要以上に費用を掛けた、ムダに豪奢できらびやかな建物だ──の一室、具体的には昼日中だというのに寝室で憤っていた。
1人、ではない。
夫人の姿は夜着のままで、寝室もついさっきまで使用していた、寝乱れたままで。
率直に言うと、だらしない。
「……忌々しい。あの女の血を引くというだけで、忌々しい。生きている事すら赦せないほど忌々しい……」
夫人は綺麗に整えられ、丁寧に色を染めた爪をガリリ……と噛んで、怒りを露にしている。
「コーネリア嬢と思われる娘は、旦那様とセリス伯爵に連れられて、冒険者組合の協力の元、我が国へと向かっているそうです。冒険者組合は、特級冒険者をコーネリア嬢に付けている模様で。あと……所属不明の婦人が1人、コーネリア嬢達と共に行動しているとか。あぁ、グレッグの所在は、未だ不明のままです」
怒れる夫人に報告するのは、夫人付きの執事。
執事にしては、見た目涼しい男前である。
夫人がブランシェット侯爵家に輿入れする際に、カルギリア公爵家から連れてきたうちの1人である。
グレッグ──今はグロリアだが、その事を夫人も執事も知らない──の同僚である。
「グレッグは、どこで何をしているのかしら? まだ務めを果たせずにあの小娘を狙っているのかしら? さっさと己が成すべき事を済ませて、あたくしの元に帰ってくるべきでしょう? アレは、グレッグはあたくしのモノなのだから」
相変わらず自分以外の人間は、人間とは思ってすらいない発言である。
執事は、そんな夫人の発言を華麗にスルーしながらも、更に報告を続ける。
「ところで、マリアンヌお嬢様ですが──」
「あぁ、あの子の事は別にどうでもいいわ」
腹を痛めて産んだ我が子の事だろうに、詳細を聞く前にばっさりと切り捨てた。
興味が無いにも程がある。
「あの小娘については、今までと同様に。せめて王都に入る前に始末なさい。……それよりも、ね?」
夫人は、執事の手を取り自らの胸へと押し付けた。
「……奥様」
「……ふふっ」
淫靡な笑みを洩らしつつ、夫人は執事の手を引くと、寝台の方へと……。
夫人の脳内の花畑は、更に絢爛豪華に咲き乱れているようだ。
1人、ではない。
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「コーネリア嬢と思われる娘は、旦那様とセリス伯爵に連れられて、冒険者組合の協力の元、我が国へと向かっているそうです。冒険者組合は、特級冒険者をコーネリア嬢に付けている模様で。あと……所属不明の婦人が1人、コーネリア嬢達と共に行動しているとか。あぁ、グレッグの所在は、未だ不明のままです」
怒れる夫人に報告するのは、夫人付きの執事。
執事にしては、見た目涼しい男前である。
夫人がブランシェット侯爵家に輿入れする際に、カルギリア公爵家から連れてきたうちの1人である。
グレッグ──今はグロリアだが、その事を夫人も執事も知らない──の同僚である。
「グレッグは、どこで何をしているのかしら? まだ務めを果たせずにあの小娘を狙っているのかしら? さっさと己が成すべき事を済ませて、あたくしの元に帰ってくるべきでしょう? アレは、グレッグはあたくしのモノなのだから」
相変わらず自分以外の人間は、人間とは思ってすらいない発言である。
執事は、そんな夫人の発言を華麗にスルーしながらも、更に報告を続ける。
「ところで、マリアンヌお嬢様ですが──」
「あぁ、あの子の事は別にどうでもいいわ」
腹を痛めて産んだ我が子の事だろうに、詳細を聞く前にばっさりと切り捨てた。
興味が無いにも程がある。
「あの小娘については、今までと同様に。せめて王都に入る前に始末なさい。……それよりも、ね?」
夫人は、執事の手を取り自らの胸へと押し付けた。
「……奥様」
「……ふふっ」
淫靡な笑みを洩らしつつ、夫人は執事の手を引くと、寝台の方へと……。
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