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vs. お貴族サマ。

ブランシェットの瞳術。

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※今回も、セリス伯爵の独白でお送りします。



コーラルが、オンタリオ皇国から出たくない理由は。
『他国のごはんに期待出来ない』という実に下らない……反面、切実な理由だった。

確かに、オンタリオ皇国と比べると、我がサルファー王国の料理は今一つかもしれない。
例え我々貴族階級のものでも、この皇国の一般庶民が日常的に食してる食事の方が……。
いや、改めて言うと、なんとなく悲しくなってくるね。
ダニエルも、ここの冒険者に言われたそうだしね。
サルファー王国って、良いモン食ってねぇんだな……って。

でも、それはどこの国に行っても同じ事だろう。
オンタリオ皇国は美食の国、と言っても過言ではないからね。

確か、コーラルは義父と共に天空魚狩りによく行くそうじゃないか。
ある意味じゃ、高級食材食べ放題じゃないかな。
羨ましいかぎりだね。

それに、オンタリオ皇国の中でも、ここサンタンジェロは海の街だ。
海の魚が安価で取り引きされている。
海の向こうの──東輝蘭や、その他の国々との交易も盛んだし。

……小国とはいえ、敵に回しちゃいけない国の一つなんだよね、オンタリオ皇国って。



そんな国で、何の不自由もなく平和に暮らしている一国民を、本人の同意無しに強引に連れ出す……っていうのは、立派な犯罪行為になるって事、テオドールは理解しているのかね?
テオドールは強引にでも、コーラルをサルファー王国に連れ帰ろうとしている。
けど、さ。
……無理なんじゃないかな。

ブランシェット家の血を引く者が国外に……っていうのはマズい。
サルファー王国の貴族として、そう考えるのは理解出来るけどね。
でも、もう何世代もただの人、しか生まれてきてないじゃないか。
今じゃもう、おとぎ話みたいなものだろう?
『ブランシェットの瞳術』なんて、さ。



『ブランシェットの瞳術』。
ブランシェット家の血を引く者だけに現れる、異能力。
魔法とも魔術とも違うソレは、モノの真贋を見抜くもの。
ものすごく分かりやすく言うと、嘘発見器みたいなものかな。
今じゃ、迷宮から稀に出土するらしいけどね。
サルファー王国の迷宮からは、一度しか出土しなかったようだし。
王宮の宝物庫で埃を被っているね。

……あぁ、王宮のヤツは一度使用されたね。
テオドールの……今、侯爵家の息女とされている娘の真贋を調べる為に。
そして、テオドールとの血の繋がりなんか無い、と確定したんだったね。
テオドールが、狂ったようにクラウディアの行方を探し始めたのは、それからだった。

ブランシェット家は、王の審判者、裁定者として国に重用されていたが、時が流れるにつれて異能力を継ぐ者が生まれなくなった。
いつの日か、先祖返りでもして、再び審判者が生まれる事を王国から期待されている。
……王国が、ブランシェット家にいろいろと便宜を図るのは、新たな審判者の誕生を期待して、の事もある。



今現在、ブランシェット家の血を引く子供は──多分、今目の前でテオドールの甘言をざっくりと切り捨てたコーラルだけ、かもしれない。
コーラル本人は、全力で拒否しているが、ね。









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