笑顔でナニ言ってんですか？

vs. お貴族サマ。

……まだ居るの？

あの、ワケの分からない……っつーか。
むしろ理解したくないお貴族サマの使いっぱどもが姿を消して……２週間、か？

冒険者組合、オンタリオ皇国サンタンジェロ支部は、通常業務中。
いつものように、いろんな依頼が持ち込まれ、組合員達がその依頼を解決していく。

私は普通に職員として働いていて。
おやじ殿は、日帰りできる依頼ばかり受注している。
めっちゃ警戒している。
……あの黒服どもが、また舞い戻ってくるって思っている。

金髪黒服のおっさんの方は、早々に国に帰ったようだけどさ。

「……あの茶髪の方、まだ居るよね？」

茶髪黒服本人は、完璧に自己隠蔽してるつもりらしい。
姿も気配も消した上で、組合周辺をウロチョロしてる。
……隠蔽が甘いね。
未熟者だね。

……ここ、サンタンジェロ支部の支部長は、元超級冒険者だぞ？
ぶっちゃけ、人の姿をした天災だぞ。
そんな、人間ヤメました的な人がトップに君臨して、下の者どもにニラミきかせてるんだ。
下の──一般組合員達も、それなりにお役立ちってゆーか。
目端がきくってゆーか……。

つまり。
組合員全員が、茶髪黒服がコソコソしながらこっちの様子を伺ってるコトを知ってたりする。



なんなんだろうね？
あの茶髪、私の見張りでもしてるつもりなのかね？
どこかに逃げ出したりしないように、圧力でも掛けてるのか？
ちょっと脅迫してるつもり？
見張ってるぞー……って、さ。

……うわ。
なんか、地味にムカつく。
呪ってやろうか、この野郎。
こう……折を見て、隙を見て。
……ふふ、ふ。

「そこで、具体的に呪術系統の悪だくみ始めてるコムスメ。ちょ～っと落ち着け～」

窓の外から顔半分だけ出して、こっち見ちゃあ引っ込む……ってのを何度も何度も繰り返してる、茶髪黒服。
そんな、うっとーしい事この上もなし、なヤツを。
私は受付に座ったまま、半眼になって見据えながらブツクサと呟いていた。
ら。
ナガツキさんに、軽～く頭をシバかれた。
こう、ぺしってカンジで。

そんな私らを見ていた周囲の組合員達は、なんとなくお子サマ──年齢一ケタ──が、ジャレてるのを見守るよーな目線を私らに向けていた。
が。
ナガツキさんは、たしかおやじ殿と同年代。
三十路のおっさんのハズなんだが、そのあたりはどーなのよ？

……って、まぁ、この人。
見た目だけなら10代後半から20代前半？ってカンジなんだが。
これは、童顔ってヤツなのか。
とっちゃんぼー……。

「お前、なんか余計なコト考えてない？」

ぎく。

……ナガツキさんも、おねーさまや組合長と同じように、いわゆるひとつのサトリのバケモノってヤツですか？

「そんな人種は居ないわよ、コール」
「サトリって、アレだよねぇ。たしか、東輝蘭に居るとか居ないとか言われてる、人の心を読むバケモノ」

うっわ～。
おねーさまとおにーさまが、２人仲良く登場したよ。

……そーいや、ウチのおやじ殿はどこ行った？