笑顔でナニ言ってんですか?

庭にハニワ

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vs. 過去の女。

閑話。その末路。

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ごり、ごり、ごり……。
音が聞こえる。
硬いモノと固いモノがこすれ合う音だ。
ごり、と音がするたびに、アタシの身体が揺れる。
ごり。
痛みは、無い。
ごり、ごり。
身体を触られて──押さえつけられてるのは分かる。
ごりごり、ごり。
アタシが逃げないように、暴れたりしないように。
ごり、り。
押さえるというよりも。
ごり。
単にズレたりしないように、身体を固定してるだけだ。
ごり、り……ぶつ。
ナニかが千切れる音がした。
そして、誰か知らない男の声が。

「はぁ……。ようやくか」
「腕一本に、結構時間食ったよな。刃こぼれしてんじゃね?」
「あと3本だろ? 今のうちに研いどく方が、後々楽なんじゃね?」
「つか、道具一本しか用意してなかったのかよ……」
「肉切り包丁じゃなくて、ノコギリの方が早いんじゃね?」
「いや、そーすっと切り口の処置が面倒でな」
「あ~……。じゃ、しょーがねぇか」
「な~、骨切り用にノコギリ持ってくるついでに包丁、あと2・3本持ってくるか?」
「おー。じゃ、続き行くか」

ざしゅっ。
ぐちゃ。
……ごり、ごり……。

ナニを……ナニをしてるの……?
切って……腕?
誰の……?
アタシは渇いた唇を舌で舐めようとして……出来ない事に気付いた。
叫んでも、声が出ない。
アタシの口から出るのは、ヒューヒューとかすれた音だけ。
そして、目に入る天井には、真っ黒な御器被り……。

「……っ! ………っ!!」

黒いヤツは、アタシに向かって飛んでくる!
動けない、逃げられない!
イヤ!
なんでアタシがこんな目に……!!



アタシの事なんか一切無視して、男達はムダ口を吐きながら作業を続けて。
ヤメてよ……もう……。

「そーいや、コイツのせいで何人不幸になったって? 調査結果聞いた頭目が呆れてたんだけど」

ごり、ごり。

「直接被害被ったのは、17~8人か? コイツに関わったせいで潰れた裏組織は7つ、だったかな。あと被害者の関係者も入れると何百人……ってトコか」
「あ~」

ごり、り。

「被害者の家族親戚友人知人、全部合わせりゃそんくらいになるかー」
「友人は分かるけど、知人はどーよ?」
「いや、なんとなく?」

ナニ言ってるのよ。
アタシは誰にも迷惑なんか掛けて無いわよ……。
だから、もうヤメ……。

ごり、ごり、ごり……ぐちゅっ、ぶつ。

「お、2本目」
「あと足かー。……まぁ、本人は悪気なんかカケラも無いんだろーけどな」

ざく。
ざくざく……ごり。

「いや、コイツ追いかけて、他国の暗殺者が何人も入り込んできててな。とりあえず、その全員とおハナシしてのこの結果だ」
「なー」

何よそれ……知らないわよ……。

「頭目、頑張ったなー」
「ホントになー」
「まぁ、それ以上に本当に怒らせちゃいけないお人を怒らせたから、なんだけどな」

何人居るのか分からないけど、男達はペラペラとしゃべりながらアタシを……。

バラバラにした。



「よー、この切り取った手足どーするよ?」
「一応、魔法収納箱に放り込んどけ。なんでも、人肉食を好む特殊性癖のお貴族サマが、手ぐすね引いて待ってるそーだし」
「……おぉぅ……。食うのか……」
「……ケモノや魔物に食わせるんじゃなくて?」
「いや、オレには理解不能な世界だけどよ? 人間種のクセに人間の肉食いたいとか」
「分かんねぇな」
「むしろ分かりたくねえよ」
「いや、どこかの貴族サマが駄々コネて迷宮行って、死にかけてな。飢えてガマン出来なくて、そこにあった人間の死体を食って生き延びて……クセになった、とかナンとか」
「うわ」
「うげ」
「無いわー」
「……」
「……ま、オレらにゃ直接関係無い話だしな」
「そーだな……」

男達のムダ口は、際限なく続き。
アタシの意識は遠くなっていって……。

これが、夢であれば……。







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