上 下
30 / 381
vs. 過去の女。

黒いあんちくしょう。

しおりを挟む
「あの女個人にも、組合出てく前にちょっとした嫌がらせ仕掛けといたし」

特定の人にとっては、死ぬほどイヤかもしれない、ちょっとした呪いを、な。
ふふふふふ。

私が、にたあ……と笑っていると。

「……具体的に、何ヤラかしたか教えろ」

おやじ殿、ちょっと落ち着いたらしい。
ぎゅうぎゅう締めあげていた腕をゆるめてくれた。
まぁ、まだ目はどっかりと床に座り込んだみたいになったまんまだけど、な。

周囲の組合員達もサワサワしている。
え?
そんなに気になる?
……それでは。
私があの女冒険者に、こっそり仕掛けた呪いの詳細をば……。

「何故かしら……。イヤな予感しかしないわ」

話す前から、おねーさまがドン引いている。

やだな~。
気が早いぞ?
ふふふふふ。

私は全開の笑みを浮かべて、話し始めた。

「1日に最低でも一回、いろんな大きさの各種『御器被り』に接近遭遇します。家庭内害虫の、黒くて素早いあんちくしょう、な」

たまに茶色いのも混じってるよね~。

そう軽~く言ったところ。
組合員達が顔色を変えてザワめいた。

「……接近遭遇?」
「え、物理的に?」
「幻覚じゃなくて?」
「いろんな大きさって……そんなにデカいのは、街中にゃ居ないだろ?」

……居るかもよ?

ニヤニヤしながら、私は更に具体的に語ってみた。

「朝、目覚めてすぐ枕元に。道を歩いていて、ふ、とした拍子に。入浴中に、ふ、と壁に目を向けたそこに。寝ようとして布団をめくったそこに。……いつ、どこに、どんな風に湧いて出るのか分からない。絶妙に、視界の隅っこを横切って。……ああ、今日は見なかった……と、気を抜いたところに。そっと這い寄り寄り添うように……」
「「「止めろーっ! 想像するだろーっ!?」」」

その場に居た全員が、嫌そーに叫んだ。
老若男女、一切区別なく。

……えー?

おやじ殿は、スッゴい良い笑顔で。
でかした! と、いわんばかりに拳を握って親指立ててる。
私も同じ仕草をおやじ殿に返した。
良い笑顔で、な。

「……地味だけど、イヤな呪いがまた1つ、か……」

おにーさまがコメカミに指先を当て、首を左右に振っていた。
ん~。
やっぱり好き嫌いハッキリ出るよね、御器被りって。

「「「アレが好きなヤツなんか、どこにも居ねぇよっ!」」」

なにも、みんな仲良く声を揃えて叫ばなくてもいいと思う。
うん。



「……コール。アンタだってイヤでしょう? 家庭内害虫なんか……」
「すでに家庭内の範囲を逸脱してるんじゃないかの……?」

おねーさまと組合長が、ゲンナリしている。
本気でイヤそーだ。

……え、私?

「生きてそこに居る……って事実の方がイヤだから、見かけたら即行潰すけど」

生かしちゃおかねーよ?

サラッと言ったら、その場に居た半数は私と同意見だったらしい。
うんうん頷いている。

残りは──。

「え、ヤダよオレ。触りたくない……」
「おれ速攻逃げる」
「……ヤツら飛ぶじゃん。飛んでくるじゃん。……コール、そんな時どーすんだ?」

え、また私?

「叩き落として踏み潰す」

きっぱり。

「あ、実際やってたな」

おやじ殿も証言。

うえ~……とさわさわするおっさんども。
少数の姐さん達ならともかく。
おっさんがナニ言ってんだか。







しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

側妃に追放された王太子

基本二度寝
ファンタジー
「王が倒れた今、私が王の代理を務めます」 正妃は数年前になくなり、側妃の女が現在正妃の代わりを務めていた。 そして、国王が体調不良で倒れた今、側妃は貴族を集めて宣言した。 王の代理が側妃など異例の出来事だ。 「手始めに、正妃の息子、現王太子の婚約破棄と身分の剥奪を命じます」 王太子は息を吐いた。 「それが国のためなら」 貴族も大臣も側妃の手が及んでいる。 無駄に抵抗するよりも、王太子はそれに従うことにした。

私、実は若返り王妃ですの。シミュレーション能力で第二の人生を切り開いておりますので、邪魔はしないでくださいませ

もぐすけ
ファンタジー
 シーファは王妃だが、王が新しい妃に夢中になり始めてからは、王宮内でぞんざいに扱われるようになり、遂には廃屋で暮らすよう言い渡される。  あまりの扱いにシーファは侍女のテレサと王宮を抜け出すことを決意するが、王の寵愛をかさに横暴を極めるユリカ姫は、シーファを見張っており、逃亡の準備をしていたテレサを手討ちにしてしまう。  テレサを娘のように思っていたシーファは絶望するが、テレサは天に召される前に、シーファに二つのギフトを手渡した。

婚約破棄された私は、処刑台へ送られるそうです

秋月乃衣
恋愛
ある日システィーナは婚約者であるイデオンの王子クロードから、王宮敷地内に存在する聖堂へと呼び出される。 そこで聖女への非道な行いを咎められ、婚約破棄を言い渡された挙句投獄されることとなる。 いわれの無い罪を否定する機会すら与えられず、寒く冷たい牢の中で断頭台に登るその時を待つシスティーナだったが── 他サイト様でも掲載しております。

タイムリープ〜悪女の烙印を押された私はもう二度と失敗しない

結城芙由奈 
恋愛
<もうあなた方の事は信じません>―私が二度目の人生を生きている事は誰にも内緒― 私の名前はアイリス・イリヤ。王太子の婚約者だった。2年越しにようやく迎えた婚約式の発表の日、何故か<私>は大観衆の中にいた。そして婚約者である王太子の側に立っていたのは彼に付きまとっていたクラスメイト。この国の国王陛下は告げた。 「アイリス・イリヤとの婚約を解消し、ここにいるタバサ・オルフェンを王太子の婚約者とする!」 その場で身に覚えの無い罪で悪女として捕らえられた私は島流しに遭い、寂しい晩年を迎えた・・・はずが、守護神の力で何故か婚約式発表の2年前に逆戻り。タイムリープの力ともう一つの力を手に入れた二度目の人生。目の前には私を騙した人達がいる。もう騙されない。同じ失敗は繰り返さないと私は心に誓った。 ※カクヨム・小説家になろうにも掲載しています

【コミカライズ決定】地味令嬢は冤罪で処刑されて逆行転生したので、華麗な悪女を目指します!~目隠れ美形の天才王子に溺愛されまして~

胡蝶乃夢
恋愛
婚約者である王太子の望む通り『理想の淑女』として尽くしてきたにも関わらず、婚約破棄された挙句に冤罪で処刑されてしまった公爵令嬢ガーネット。 時間が遡り目覚めたガーネットは、二度と自分を犠牲にして尽くしたりしないと怒り、今度は自分勝手に生きる『華麗な悪女』になると決意する。 王太子の弟であるルベリウス王子にガーネットは留学をやめて傍にいて欲しいと願う。 処刑された時、留学中でいなかった彼がガーネットの傍にいることで運命は大きく変わっていく。 これは、不憫な地味令嬢が華麗な悪女へと変貌して周囲を魅了し、幼馴染の天才王子にも溺愛され、ざまぁして幸せになる物語です。

【完結】妹に全部奪われたので、公爵令息は私がもらってもいいですよね。

曽根原ツタ
恋愛
 ルサレテには完璧な妹ペトロニラがいた。彼女は勉強ができて刺繍も上手。美しくて、優しい、皆からの人気者だった。  ある日、ルサレテが公爵令息と話しただけで彼女の嫉妬を買い、階段から突き落とされる。咄嗟にペトロニラの腕を掴んだため、ふたり一緒に転落した。  その後ペトロニラは、階段から突き落とそうとしたのはルサレテだと嘘をつき、婚約者と家族を奪い、意地悪な姉に仕立てた。  ルサレテは、妹に全てを奪われたが、妹が慕う公爵令息を味方にすることを決意して……?  

(完)聖女様は頑張らない

青空一夏
ファンタジー
私は大聖女様だった。歴史上最強の聖女だった私はそのあまりに強すぎる力から、悪魔? 魔女?と疑われ追放された。 それも命を救ってやったカール王太子の命令により追放されたのだ。あの恩知らずめ! 侯爵令嬢の色香に負けやがって。本物の聖女より偽物美女の侯爵令嬢を選びやがった。 私は逃亡中に足をすべらせ死んだ? と思ったら聖女認定の最初の日に巻き戻っていた!! もう全力でこの国の為になんか働くもんか! 異世界ゆるふわ設定ご都合主義ファンタジー。よくあるパターンの聖女もの。ラブコメ要素ありです。楽しく笑えるお話です。(多分😅)

側妃ですか!? ありがとうございます!!

Ryo-k
ファンタジー
『側妃制度』 それは陛下のためにある制度では決してなかった。 ではだれのためにあるのか…… 「――ありがとうございます!!」

処理中です...