上 下
26 / 381
vs. 過去の女。

その昔。

しおりを挟む
と、ゆーワケで。

あれは、私が今よりお子様だった頃の話。
どのあたりの町だったか覚えてないけど、確か寒い町だったと思う。
こー、厚着してた記憶がうっすらと……。

その頃、定住するのに良さそーな町を探しながら、組合おススメの仕事をしてたんだよね、おやじ殿。
母と私は、そんなおやじ殿にくっついていく形で。
母は、ちょっと手先が器用だったから、レース編みとか刺繍とかして家計の足しにしつつ私を育ててくれてた。
おやじ殿も遠出するよーな仕事は避けて、基本日帰りメインでね。

その町はちょっと良いカンジの町だったから、しばらく暮らしてみて住むかどーか決めるつもりだったらしい。

その見極めしてる最中に、あの女冒険者がどっかの町から流れて来た。

おやじ殿って、あの手の──こー、他人をいいように利用して、寄生して楽して生きよーってヤツ、嫌いだからさ。
自分からは一切近づかなかったんだけど。
まぁ、あの通りの目立つ外見じゃない?
今でもおやじ殿の気を引きたい女が何人も居るけど、当時はもっと居たらしいよ。
母も私も地味に嫌がらせされたもの。
……そーゆーのがイヤで、いろんな町を転・転々としたんだけどね。



で。
あの女冒険者。
寄生する男を見つくろってた時に、組合ですれ違っただけのおやじ殿に、勝手に運命感じちゃったらしい。
それから、一方的におやじ殿にまとわりついて言うことにゃ。

「アタシと組もう」
「同じ依頼を受けよう」
「将来的には一緒に暮らして、子供は──」

……とかナンとか。

勝手に人生設計まで始めてたそーだよ。

おやじ殿は、はっきりきっぱり切り捨てたそーなんだけど。
俺には家族が居るから……ってさ。

言い方が弱かったんじゃね?

「あの女、まったく聞いてなかった」
「「「うわ~……」」」

組合員の皆様は、ウンザリした顔をして、続きを待ちわびている。

「なんかさ。自分が惚れたオトコが、自分を好きにならないハズがない……って」
「……何を言ってんだか」

ホントに、ね。



私を含めて、その場に居た全員が乾いた笑いを洩らした。
気付いたら、奥の部屋で書類仕事していたハズの先輩方や、組合長までこっちに出てきてて。
組合長なんかは。

「……まぁ、良くある話よね」

なんて言いながら、ウンウン頷いてる。
いや、納得されても……。
なんか、困るね。

まだまだ先があるんだけどさ。
……話、続けていいかな?










しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

側妃に追放された王太子

基本二度寝
ファンタジー
「王が倒れた今、私が王の代理を務めます」 正妃は数年前になくなり、側妃の女が現在正妃の代わりを務めていた。 そして、国王が体調不良で倒れた今、側妃は貴族を集めて宣言した。 王の代理が側妃など異例の出来事だ。 「手始めに、正妃の息子、現王太子の婚約破棄と身分の剥奪を命じます」 王太子は息を吐いた。 「それが国のためなら」 貴族も大臣も側妃の手が及んでいる。 無駄に抵抗するよりも、王太子はそれに従うことにした。

私、実は若返り王妃ですの。シミュレーション能力で第二の人生を切り開いておりますので、邪魔はしないでくださいませ

もぐすけ
ファンタジー
 シーファは王妃だが、王が新しい妃に夢中になり始めてからは、王宮内でぞんざいに扱われるようになり、遂には廃屋で暮らすよう言い渡される。  あまりの扱いにシーファは侍女のテレサと王宮を抜け出すことを決意するが、王の寵愛をかさに横暴を極めるユリカ姫は、シーファを見張っており、逃亡の準備をしていたテレサを手討ちにしてしまう。  テレサを娘のように思っていたシーファは絶望するが、テレサは天に召される前に、シーファに二つのギフトを手渡した。

婚約破棄された私は、処刑台へ送られるそうです

秋月乃衣
恋愛
ある日システィーナは婚約者であるイデオンの王子クロードから、王宮敷地内に存在する聖堂へと呼び出される。 そこで聖女への非道な行いを咎められ、婚約破棄を言い渡された挙句投獄されることとなる。 いわれの無い罪を否定する機会すら与えられず、寒く冷たい牢の中で断頭台に登るその時を待つシスティーナだったが── 他サイト様でも掲載しております。

タイムリープ〜悪女の烙印を押された私はもう二度と失敗しない

結城芙由奈 
恋愛
<もうあなた方の事は信じません>―私が二度目の人生を生きている事は誰にも内緒― 私の名前はアイリス・イリヤ。王太子の婚約者だった。2年越しにようやく迎えた婚約式の発表の日、何故か<私>は大観衆の中にいた。そして婚約者である王太子の側に立っていたのは彼に付きまとっていたクラスメイト。この国の国王陛下は告げた。 「アイリス・イリヤとの婚約を解消し、ここにいるタバサ・オルフェンを王太子の婚約者とする!」 その場で身に覚えの無い罪で悪女として捕らえられた私は島流しに遭い、寂しい晩年を迎えた・・・はずが、守護神の力で何故か婚約式発表の2年前に逆戻り。タイムリープの力ともう一つの力を手に入れた二度目の人生。目の前には私を騙した人達がいる。もう騙されない。同じ失敗は繰り返さないと私は心に誓った。 ※カクヨム・小説家になろうにも掲載しています

【コミカライズ決定】地味令嬢は冤罪で処刑されて逆行転生したので、華麗な悪女を目指します!~目隠れ美形の天才王子に溺愛されまして~

胡蝶乃夢
恋愛
婚約者である王太子の望む通り『理想の淑女』として尽くしてきたにも関わらず、婚約破棄された挙句に冤罪で処刑されてしまった公爵令嬢ガーネット。 時間が遡り目覚めたガーネットは、二度と自分を犠牲にして尽くしたりしないと怒り、今度は自分勝手に生きる『華麗な悪女』になると決意する。 王太子の弟であるルベリウス王子にガーネットは留学をやめて傍にいて欲しいと願う。 処刑された時、留学中でいなかった彼がガーネットの傍にいることで運命は大きく変わっていく。 これは、不憫な地味令嬢が華麗な悪女へと変貌して周囲を魅了し、幼馴染の天才王子にも溺愛され、ざまぁして幸せになる物語です。

【完結】妹に全部奪われたので、公爵令息は私がもらってもいいですよね。

曽根原ツタ
恋愛
 ルサレテには完璧な妹ペトロニラがいた。彼女は勉強ができて刺繍も上手。美しくて、優しい、皆からの人気者だった。  ある日、ルサレテが公爵令息と話しただけで彼女の嫉妬を買い、階段から突き落とされる。咄嗟にペトロニラの腕を掴んだため、ふたり一緒に転落した。  その後ペトロニラは、階段から突き落とそうとしたのはルサレテだと嘘をつき、婚約者と家族を奪い、意地悪な姉に仕立てた。  ルサレテは、妹に全てを奪われたが、妹が慕う公爵令息を味方にすることを決意して……?  

(完)聖女様は頑張らない

青空一夏
ファンタジー
私は大聖女様だった。歴史上最強の聖女だった私はそのあまりに強すぎる力から、悪魔? 魔女?と疑われ追放された。 それも命を救ってやったカール王太子の命令により追放されたのだ。あの恩知らずめ! 侯爵令嬢の色香に負けやがって。本物の聖女より偽物美女の侯爵令嬢を選びやがった。 私は逃亡中に足をすべらせ死んだ? と思ったら聖女認定の最初の日に巻き戻っていた!! もう全力でこの国の為になんか働くもんか! 異世界ゆるふわ設定ご都合主義ファンタジー。よくあるパターンの聖女もの。ラブコメ要素ありです。楽しく笑えるお話です。(多分😅)

側妃ですか!? ありがとうございます!!

Ryo-k
ファンタジー
『側妃制度』 それは陛下のためにある制度では決してなかった。 ではだれのためにあるのか…… 「――ありがとうございます!!」

処理中です...