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禍垂という怪異
遭遇
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辺りは真っ暗で明かりが無いとほとんど見えない。俺は桑折が持っていた懐中電灯を借りて桑折の後ろを歩いていく。結構歩いているが桑折は一体どこに向かってるんだ?
「これってどこに向かってるんですか?」
「出口がどこにあるか分からないからとりあえず上ってる」
「え、出口分かってるんじゃないんですか?」
「いや?なんもわかんないよ」
助けてもらってる側が言うのもあれだが、こっちの方が心配になってきた。本当に大丈夫なのだろうか…。そんな考えを読んでか、桑折は俺の顔を見てドヤ顔で言う。
「私には第六感があるから」
第六感…?運が良い的なことだろうか。
「ライトも無しに暗闇を歩けるのもそれのお陰なんですか?」
「それは別。私暗闇でも目が効くから」
「目が効く?」
「うん。こんな変な所でも信じるかな」
そう言うと桑折はポケットから手のひらに収まるサイズの石の鳥居を取り出す。桑折がゆっくりと目を閉じると、鳥居が灰色の薄い光を纏い始めた。すると中から同じ光を纏った狐が出てきた。光が煙のようにゆっくり消えると狐は本当に生きているかのような仕草で桑折の傍に座った。
「私狐憑きなんだ。お稲荷様の御加護みたいな感じ?」
狐憑き。一時期怪談が好きで調べていたから知っているけど本当に存在していたのか。狐憑きは狐、お稲荷様に憑かれた人間で動作が狐っぽくなったりするというものだったはず。というかこの狐は実際に生きているのか?狐憑きと言っても本当に狐を召喚するイメージはないんたが…。そんなことを考えている間に、俺達は拓けた場所に出ていた。
「多分ここらへんにいると思うんだよね………いた。」
桑折の目線の先を見ると一本の背の高い木があり、この世のものでは無いような雰囲気を纏っていた。
何この呪われてるみたいな木。近づくのも嫌なんですけど。
「木の一番上、見てみて」
「上…?」
上を向いて俺はハッとした。木の一番上に人のようなものが立っていてそこから禍々しいオーラを放っている。
「人が立ってる?」
「よく見て、あれは人でもないし立ってもいない。」
桑折は先程とは明らかに違う険しい顔をして木の上を睨んでいる。表情の変わりやすい人だな、と余計な事を少し考えながら桑折に言われた通りに目を凝らして見てみる。
じっとあいつを見ていると、俺はあることに気付いた。
「あいつ…木の上に立ってるんじゃなくて、ぶら下がってる?」
「気付いた?あいつ木の幹にぶら下がってて、下半身が無いの。」
本当だ。しっかり見て初めて気づいた。
下半身が無い事に気がつくと一気に気味が悪くなってくる。
「ここから帰るにはあいつを追い払わなきゃ。」
「追い払う?でもどうやって…」
「こうするの。」
そう言うと桑折は人の形をした紙を内ポケットから取り出す。初めて見た俺でもすぐ名前が分かった。払いごとの時に使われたりする神霊が依り憑く依り代の一種、形代というやつだ。漫画や小説で名前を聞いたことはあったが実物を見たのは初めてだ。
俺が一人で興奮しているのをよそに桑折は形代を手のひらに乗せ、目を閉じる。桑折が祈祷のようなものを口にするとゆっくり形代が浮き始め、今度は神々しいと表現されるような薄い金色の光を纏い始める。
「これ始めるとあいつが何してくるか分からないからちょっと離れてて。あとすぐに走ったり出来るように準備して。」
桑折の言う通りに後ろに離れて様子を見る。俺は正直助かる事よりもこの非現実的な状況を楽しんでいた。
こんな意味のわからない状況二度とないんだから楽しむしかない。
「じゃあ、いくよ。」
桑折は力強く木の上に向かって指を突き出した。
「これってどこに向かってるんですか?」
「出口がどこにあるか分からないからとりあえず上ってる」
「え、出口分かってるんじゃないんですか?」
「いや?なんもわかんないよ」
助けてもらってる側が言うのもあれだが、こっちの方が心配になってきた。本当に大丈夫なのだろうか…。そんな考えを読んでか、桑折は俺の顔を見てドヤ顔で言う。
「私には第六感があるから」
第六感…?運が良い的なことだろうか。
「ライトも無しに暗闇を歩けるのもそれのお陰なんですか?」
「それは別。私暗闇でも目が効くから」
「目が効く?」
「うん。こんな変な所でも信じるかな」
そう言うと桑折はポケットから手のひらに収まるサイズの石の鳥居を取り出す。桑折がゆっくりと目を閉じると、鳥居が灰色の薄い光を纏い始めた。すると中から同じ光を纏った狐が出てきた。光が煙のようにゆっくり消えると狐は本当に生きているかのような仕草で桑折の傍に座った。
「私狐憑きなんだ。お稲荷様の御加護みたいな感じ?」
狐憑き。一時期怪談が好きで調べていたから知っているけど本当に存在していたのか。狐憑きは狐、お稲荷様に憑かれた人間で動作が狐っぽくなったりするというものだったはず。というかこの狐は実際に生きているのか?狐憑きと言っても本当に狐を召喚するイメージはないんたが…。そんなことを考えている間に、俺達は拓けた場所に出ていた。
「多分ここらへんにいると思うんだよね………いた。」
桑折の目線の先を見ると一本の背の高い木があり、この世のものでは無いような雰囲気を纏っていた。
何この呪われてるみたいな木。近づくのも嫌なんですけど。
「木の一番上、見てみて」
「上…?」
上を向いて俺はハッとした。木の一番上に人のようなものが立っていてそこから禍々しいオーラを放っている。
「人が立ってる?」
「よく見て、あれは人でもないし立ってもいない。」
桑折は先程とは明らかに違う険しい顔をして木の上を睨んでいる。表情の変わりやすい人だな、と余計な事を少し考えながら桑折に言われた通りに目を凝らして見てみる。
じっとあいつを見ていると、俺はあることに気付いた。
「あいつ…木の上に立ってるんじゃなくて、ぶら下がってる?」
「気付いた?あいつ木の幹にぶら下がってて、下半身が無いの。」
本当だ。しっかり見て初めて気づいた。
下半身が無い事に気がつくと一気に気味が悪くなってくる。
「ここから帰るにはあいつを追い払わなきゃ。」
「追い払う?でもどうやって…」
「こうするの。」
そう言うと桑折は人の形をした紙を内ポケットから取り出す。初めて見た俺でもすぐ名前が分かった。払いごとの時に使われたりする神霊が依り憑く依り代の一種、形代というやつだ。漫画や小説で名前を聞いたことはあったが実物を見たのは初めてだ。
俺が一人で興奮しているのをよそに桑折は形代を手のひらに乗せ、目を閉じる。桑折が祈祷のようなものを口にするとゆっくり形代が浮き始め、今度は神々しいと表現されるような薄い金色の光を纏い始める。
「これ始めるとあいつが何してくるか分からないからちょっと離れてて。あとすぐに走ったり出来るように準備して。」
桑折の言う通りに後ろに離れて様子を見る。俺は正直助かる事よりもこの非現実的な状況を楽しんでいた。
こんな意味のわからない状況二度とないんだから楽しむしかない。
「じゃあ、いくよ。」
桑折は力強く木の上に向かって指を突き出した。
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