音楽を心に~music heart~

野良豚

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第1章

1-8「柊 ひとみ」

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作品に章をつけさせていただきました。
閑話の表示も変えているのでご容赦ください。

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  僕の2回目の投稿が終わった次の日。
またしても学校では暗神の噂が流れていた。
それも今回は柊 ひとみの歌を歌ったことで余計に騒がしい感じだ。

「おい!昨日の暗神さんの曲聴いたかよ!?」

「あぁ!もちろんだ!しかも柊ひとみの曲歌ってたよな!」

「「暗神さんまじパネェっす!!」」

  そんな会話を横で聞きながら健太が投稿してくるのを待った。
今日は健太とは一緒に登校していない。
理由は簡単だ。健太の寝坊である。

「健太がいないと身が持ちませんね…」

僕はボソッと呟くしかなかった。
健太が投稿してきたのはそれから10分後だった。
肩で息をしながら僕に話しかけてきた。

「いや~今回は確実に遅刻だと思った~」

「なんでまたこんなに遅くなったんですか?」

「昨日遅くまでSINglesの生配信しててさ~気がついたらもう4時だったわけ」

「まったく、遅くまで配信しているからそんな事になるんですよ」

「ていうか、昨日なんで見に来てくれなかったんだよ~」

「昨日は疲れたので帰ってすぐ寝ちゃったんですよ」

「お前らしいな」

  そんな会話をしていると先生が教室に入ってきた。
それからは授業を行い昼休みになった。
余談だが健太は授業中ずっと寝ていた。
昼休みになり健太と昼食を食べていた。

「そういえば、すごい反響だなお前の投稿」

「僕の投稿ではなく柊ひとみさんがすごいだけですよ」

  朝のクラスメイトの反応で僕の事とは分かっていたが
恥ずかしさから柊ひとみさんの曲がすごいことにしていた。

「お前、恥ずかしいから柊さんの名前を出したな」

「な、何を言ってるんですか!そんな訳ないじゃないですか」

「分かりやすいな~何年お前と親友やってると思ってんだよ」

「………」

  僕はそれ以上言葉が出てこなかった。
流石に健太には分かってしまったか。
そんな事を思っていると廊下の方が少し騒がしい。
クラスメイトが「おいあれ…」やら「まさか!?」やら話している。

「なんだ?えらく廊下の連中が騒がしいな」

  健太も気づいたようで廊下の方に目をやっていた。
僕も何なのかと廊下の方に目をやると2人の女子が教室前に立っていた。
明らかにこちらを見ている。
正確には健太の方を見ていた。

「すいませ~ん、ここに来栖くんいますか?」

1人の女子が健太がいるか聞いてきた。
もう1人の女子は何も喋らず腕組みをしながら立っていた。
あの腕を組んでる人見たことあるような気がするが思い出せない。
すると僕の横にいた健太が手を挙げていた。

「はいよ~来栖は俺だけど?」

「あぁ~あなたが来栖くん?ごめんね急に尋ねて~」

「別に構わないけどなんだ?」

「あのね~実は…「暗神の正体を知らないかしら!?」…優美ちゃん!?」

  黙っていた女子が口を開いたと思ったら凄い勢いで健太に聞いていた。
健太は少し引き気味になっている。
って!今なんて言った!?
僕には暗神と聞こえたんだけど。

「暗神?今SINglesで有名な?」

「そうよ!最初に暗神がフォローしていたのはあなただって言うじゃない!」

「はい?なんで俺が一番最初なんて分かるんだよ?」

「あれはフォローした順番に表示されるのよ!」

うそ!?そんな性能があったなんて知らなかった!どうしよう.......って!今、祇園 優美って言いました?
それって理事長の娘さん!?
しかも、なんかこの声...よく聴いてるような声だ。そう、SINglesで。
あれ?もしかして...

「クイーン…?」

  僕がボソッと呟くと3人がバッとこちらを向いた。
あ、聞こえてしまったと思った時には遅かったようだ。
健太が僕の肩に手をおいて話してきた。

「優里…今更何言ってんだよ」

「なにが?」

「この人がクイーンなんてこの学校じゃ周知の事実だぞ」

「そうね、知らない人がいるなんて私もまだまだね」

「逆に~知らない人の方が珍しいんじゃな~い?」

「し、知らなかったです...すいません...」

  僕は世間の流れって言うのに疎いらしい……
まぁ、そんな事は今はどうでもいいです!
何故そのクィーン様が僕というか、暗神を探しているんですか!?何か気に触ることでもしたんでしょうか!?
 
「謝ることなんてないわ。...話がれたわね。で、どうなの?暗神の正体知ってるの?」

クィーン、祇園さんは再度、健太の方を見て話し始めた。
ど、どうしよう。健太は僕の事を知っていますよね!?ここでバレるんですか!?

僕が心の中であたふたしていると健太がハッキリと「知らない」という声が聞こえてきた。

「俺は暗神って人が投稿した時、たまたまいい声だったからフォローしただけだよ」

「本当に?」

「そう思うなら見てみな、俺は暗神って人からフォローされてねぇだろ?」

そう言いながら、祇園さんにスマホを見せていた。
実は、投稿する前にバレたり怪しまれたりするといけないからと僕がフォローしていた人を全て外していたのですよ。
一応ということで健太のフォローも外した。

しかし、僕も他の人の歌が聴きたいと言うと違うアカウントを作れとアカウントをもう1つ作り全て今までの人をそっちでフォローするようにしたのです。
別のアカウントを作る理由はもう1つ。
聴いた人のアカウント名が投稿している人に分かってしまうからだとか。
僕が暗神で聴いてしまうと相手に曲を聴いたことがバレてしまう。
余計な不安は取り除くための別アカウントとのこと。

「確かに、相手にはフォローされていないようね」

「だろ?いくら俺がランキング上位者だからってクィーンが知らないことを俺が知ってるわけ無いじゃん」

「それも、そうね...」

「それに、そっちの女子も確かキタユカってアカウントで投稿とか配信してるランキング上位者だろ?」

「私~?そうだよ~!」

「なら、そっちの方が知ってるでしょ?」

「私と~来栖君の順位って大差ないから~知らないよ~」

「順位に大差がないなら俺も知ってるわけないよ」

「あ、それもそうか!」

「由佳...あなたねぇ~」

あれ?これは大丈夫そうですかね?
と言うか僕、完全に蚊帳の外なんですが...
僕が色んなことを考えているうちにまた廊下が騒がしくなってきた。

「どうしたんだ?えらく廊下が騒がしいな」

「さぁ、なんなんでしょう」

「ん~?な~んか人がいるよ~」

河北さんが指を指した先にスタイルの良い女性がコツコツと歩いてきた。

「あれ?あの人、もしかして?」

僕はその顔に見覚えがあった。
なぜなら、昨日その人の曲を投稿したばかりだからだ。
そう、彼女は…【柊 ひとみ】その人だからだ。
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