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55.フィオルさんの両親と会う
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いよいよフィオルさんのご両親と会う日。
お二人は、私を見てどう思うだろうか……。
一応頑張って、フィオルさんに見立ててもらって、それなりの格好はしてきたつもりだけど……あー、緊張する……。
「ミア、大丈夫か?」
「大丈夫デス……」
「大丈夫には見えないな……」
会っていきなり嫌われたらどうしよう……。
薄汚いとか、庶民のくせにとか、うちの息子に近づくなこの泥棒猫とか言われたら私泣くよ?
事実なんだけどさ……だってそうなったらもうフィオルさんと結婚できないじゃん……。
「安心しろ、うちの親はミアが思うような怖い人じゃないよ。
俺を見てたらわかるだろ?」
「……フィオルさんも最初は怖かったし」
「そんなだったか!? ごめんごめん……ミアは可愛い、ミアは可愛い」
なんか、うまく誤魔化されてる気がする……。
「何にしても、これがはっきりしないと、俺はちっともミアを可愛がることができん……」
そのことは今は置いといて、もうすぐフィオルさんのご実家に着いてしまう……どうしよう、やっぱり三つ編みにしてきた方が良かった?
「フィオルさーん……」
「大丈夫だって、いつものありのままのミアを見せてやればいいよ」
フィオルさんに引っ張られながら歩いて行くと、結構大きな屋敷が見えてきた。
没落してたって聞いてたのに、しっかり貴族の家じゃん!
怖いよー、貴族の屋敷だよー……。
「今は使用人とかいないから、大きなだけでただの家だよ。
さあ、入ろう」
やばい、手汗が凄い……フィオルさん、よくこんな手握ってるな……。
「お帰りなさい」
顔を上げると、フィオルさんと同じ髪色の優しそうな顔をした婦人が立っていた。
この方が、フィオルさんのお母さん……?
「あ、あの、初めまして! ミアと申します!」
「私はフィオルの母、セルフィアです」
「母さん、彼女が俺の大事な人だよ」
緊張して、うまく喋れない……変な人って思われたかな……。
「安心して、落ち着いてお話ししましょう」
「は、はい……」
「普段はこんなんじゃ無いんだけどな……父さんは?」
「奥の部屋にいるわ。呼んできましょうか?」
「いや、今はいいよ。まずはミアを落ち着かせないと」
もっとちゃんと話したいのに、言葉が出てこない……こんなんじゃ印象悪いよね、きっと……。
「ミアちゃん?」
「母さん、子供じゃ無いんだからちゃん付けは……」
「何言ってるの、ミアちゃんはうちの子になるのよ?
そんなの私の娘も同然じゃない、ねぇミアちゃん?」
「あ、えっと……」
うちの子になるって、私を養子にしてくれるってこと?
まだ、何もまともに話せて無いのに?
「私はね、フィオルが可愛くないわけじゃないけど、ずっと娘が欲しかったの。でも、体が悪かったから、もうこれ以上は産めなくて……」
「体が悪いって……何かご病気なんですか?」
「当時はね。誰かさんのグランド・ヒールが届いて患ってた病気も治ってしまったわ」
「母さんは昔から腰が悪くてうまく歩けなかったんだ。
だから、俺もシャキシャキ歩いてる母さんを見たときはびっくりしたよ」
グランド・ヒール……ここまで届いてたんだ。
あの時は夢中で、効果の範囲とか何も考えて無かったから……。
「私がこうして歩けるようになったのも、あなたのおかげ。感謝してる」
「そんな、たまたまです」
「おお、その子がミワさんか。私はフィオルの父、ルドルフだ」
この人が、フィオルさんのお父さん……?
「は、初めまして、ミアです。私は孤児院出身なので……」
「そんなことは気にしなくていい。私たちは君を歓迎するよ」
がっしりとした体型で優しい目をした人。
どことなく雰囲気がフィオルさんに似てるような気がするけど、お父さんはブロンドヘアだし、外見はお母さん似なのかな?
「どれ、その顔をよく見せておくれ」
フィオルさんのお父さんにじっと見つめられる。
その表情を見ていると、なんとなく緊張が解けてきたような気がする。
「父さん、ミアのこと見過ぎ……」
「いや、すまない。私も娘ができるのが嬉しくてな。
母さんは特に娘が欲しかったみたいで、ついお前にそんな名前を付けてしまった」
「俺がこの名前になったのそのせいかよ!
一応貴族だったんだから、息子が生まれたことを喜べよ!」
「息子がうるさくてすまんな」
それは流石にフィオルさんが可哀想。
「さあ、歓迎会を始めよう! 私と母さんで腕を振るうから、二人とも座って待ってなさい」
「えっ……」
「だから、大丈夫だって言っただろ?
二人とも、ミアのこと話したら大喜びしちゃって……」
フィオルさんと一緒にテーブルの席に座って待っていると、フィオルさんのお父さんが大きなケーキを持ってきた。
「買ってきたもので申し訳ないんだが、これは私と母さんから娘になる君にバースデーケーキだよ」
大きなケーキ……こんなの、今まで見たことない。
まだ誕生日じゃないし、なんなら孤児の私の誕生日はアンナさんが私を見つけた日だから正確な誕生日ってわからないんだけど……だけど、嬉しい。
「ありがとうございます」
ケーキだけじゃない、他にもパスタとかローストチキンとか、色々……お二人とも、私のためにこんなに……。
「準備はできたな。よし、それじゃいただこう」
「俺が切り分けるよ」
フィオルさんが、大きなケーキを切り分けて私の前に置いてくれた。
部屋を暗くして、ロウソクに火を灯し、ご両親が私のためにバースデーの歌を歌ってくれる。
こんなことしてもらったの初めて……アンナさんもパンケーキは余分に焼いてくれたけど、お誕生日会もみんなと合同だったし……それでも十分に嬉しかったのに……全然誕生日じゃないのに……。
「ほら、ミアちゃん、冷めないうちにどうぞ」
フィオルさんのお母さんが、ローストチキンを切り分けてくれた。
めちゃくちゃ大きい。
フィオルさんがローストチキンを好きなのは、たぶんこういうことだったんだね。
「ありがとうございます」
「父さんと母さんは、ミアを養子に迎える気満々だ。
だけど、ミアはどうだ? 俺としてはミアの気持ちを優先したい」
「そうだな。養子になるということは、ミワさんも貴族になるということだ。もちろん我々も親としてサポートするし、夜会などは最低限の出席で構わない」
「あの……だけど、私のせいで貴族を無理に続けることになるのなら……」
「辞めたがってたのはフィオルだ。
どちらにしても、私の代までは続けるつもりだったし、息子には無理強いをするつもりは無かったが……」
そうだ、フィオルさんは本当に貴族を辞めるつもりだった。
私のせいでそれを続けさせるなんて……。
「俺は、正直どっちでも良かった。
庶民の暮らしに慣れて、既に自立していたってこともあったけど、男爵とはいえ長く続いてきた家系が俺の代で絶たれることに何も思わなかったわけじゃない。
ただ、俺の子供の時には没落具合が半端なくて碌な貴族としての教育も受けられなかったわけだが……」
「それは、父さんのせいだ……」
「私がちゃんと歩けなかったばかりに……」
「まぁ……フィオルには助けられっぱなしだな」
そういえば、没落を免れたのってフィオルさんが研究所に入ったおかげだったっけ……。
「だけど、所長の案でミアを養子にしたら結婚できると聞いて思ったんだ……ミアに、親の温もりを与えてあげたいって」
そうだ……私はいつだったか、娘を大事にするリカルドさんの話を聞いて、お父さんって羨ましいなと思ったことがあった。
お母さんはアンナさんがいるけど、アンナさんはみんなのお母さんだから……。
「俺はもう親離れしてるし、ミアは二人に甘えてもいいんだぞ」
「私ももう、甘える歳じゃないですよ……」
「そうか……もちろん、無理強いはさせないからミワさんが自分で決めたらいい」
だけど、もしお二人が私を養子として迎えてくれるのなら……。
「私も……お父さんとお母さんがほしいです……。
本当は、いつも羨ましかった……カエデの家族の話を聞いて……、外でお母さんと一緒に遊ぶ子供を見て……。
ずっと、そういうのに憧れてた……」
「ミアちゃん……」
「私たちで良ければ、君の両親にならせてくれ……」
「はい……よろしくお願いします……」
「ミワ、君は今日からうちの娘だ……!」
この日、私にお父さんとお母さんができた。
アンナさんにはもちろん恩があるし、私の育ての母親であることには変わりないけど……。
その後、お父さんとお母さんに、フィオルさんの小さい頃の話を聞いたり、領地にいる動物の話や、庭で育てているお花の話を聞いた。
お父さん……私の名前はミワじゃなくて、ミアです。
お二人は、私を見てどう思うだろうか……。
一応頑張って、フィオルさんに見立ててもらって、それなりの格好はしてきたつもりだけど……あー、緊張する……。
「ミア、大丈夫か?」
「大丈夫デス……」
「大丈夫には見えないな……」
会っていきなり嫌われたらどうしよう……。
薄汚いとか、庶民のくせにとか、うちの息子に近づくなこの泥棒猫とか言われたら私泣くよ?
事実なんだけどさ……だってそうなったらもうフィオルさんと結婚できないじゃん……。
「安心しろ、うちの親はミアが思うような怖い人じゃないよ。
俺を見てたらわかるだろ?」
「……フィオルさんも最初は怖かったし」
「そんなだったか!? ごめんごめん……ミアは可愛い、ミアは可愛い」
なんか、うまく誤魔化されてる気がする……。
「何にしても、これがはっきりしないと、俺はちっともミアを可愛がることができん……」
そのことは今は置いといて、もうすぐフィオルさんのご実家に着いてしまう……どうしよう、やっぱり三つ編みにしてきた方が良かった?
「フィオルさーん……」
「大丈夫だって、いつものありのままのミアを見せてやればいいよ」
フィオルさんに引っ張られながら歩いて行くと、結構大きな屋敷が見えてきた。
没落してたって聞いてたのに、しっかり貴族の家じゃん!
怖いよー、貴族の屋敷だよー……。
「今は使用人とかいないから、大きなだけでただの家だよ。
さあ、入ろう」
やばい、手汗が凄い……フィオルさん、よくこんな手握ってるな……。
「お帰りなさい」
顔を上げると、フィオルさんと同じ髪色の優しそうな顔をした婦人が立っていた。
この方が、フィオルさんのお母さん……?
「あ、あの、初めまして! ミアと申します!」
「私はフィオルの母、セルフィアです」
「母さん、彼女が俺の大事な人だよ」
緊張して、うまく喋れない……変な人って思われたかな……。
「安心して、落ち着いてお話ししましょう」
「は、はい……」
「普段はこんなんじゃ無いんだけどな……父さんは?」
「奥の部屋にいるわ。呼んできましょうか?」
「いや、今はいいよ。まずはミアを落ち着かせないと」
もっとちゃんと話したいのに、言葉が出てこない……こんなんじゃ印象悪いよね、きっと……。
「ミアちゃん?」
「母さん、子供じゃ無いんだからちゃん付けは……」
「何言ってるの、ミアちゃんはうちの子になるのよ?
そんなの私の娘も同然じゃない、ねぇミアちゃん?」
「あ、えっと……」
うちの子になるって、私を養子にしてくれるってこと?
まだ、何もまともに話せて無いのに?
「私はね、フィオルが可愛くないわけじゃないけど、ずっと娘が欲しかったの。でも、体が悪かったから、もうこれ以上は産めなくて……」
「体が悪いって……何かご病気なんですか?」
「当時はね。誰かさんのグランド・ヒールが届いて患ってた病気も治ってしまったわ」
「母さんは昔から腰が悪くてうまく歩けなかったんだ。
だから、俺もシャキシャキ歩いてる母さんを見たときはびっくりしたよ」
グランド・ヒール……ここまで届いてたんだ。
あの時は夢中で、効果の範囲とか何も考えて無かったから……。
「私がこうして歩けるようになったのも、あなたのおかげ。感謝してる」
「そんな、たまたまです」
「おお、その子がミワさんか。私はフィオルの父、ルドルフだ」
この人が、フィオルさんのお父さん……?
「は、初めまして、ミアです。私は孤児院出身なので……」
「そんなことは気にしなくていい。私たちは君を歓迎するよ」
がっしりとした体型で優しい目をした人。
どことなく雰囲気がフィオルさんに似てるような気がするけど、お父さんはブロンドヘアだし、外見はお母さん似なのかな?
「どれ、その顔をよく見せておくれ」
フィオルさんのお父さんにじっと見つめられる。
その表情を見ていると、なんとなく緊張が解けてきたような気がする。
「父さん、ミアのこと見過ぎ……」
「いや、すまない。私も娘ができるのが嬉しくてな。
母さんは特に娘が欲しかったみたいで、ついお前にそんな名前を付けてしまった」
「俺がこの名前になったのそのせいかよ!
一応貴族だったんだから、息子が生まれたことを喜べよ!」
「息子がうるさくてすまんな」
それは流石にフィオルさんが可哀想。
「さあ、歓迎会を始めよう! 私と母さんで腕を振るうから、二人とも座って待ってなさい」
「えっ……」
「だから、大丈夫だって言っただろ?
二人とも、ミアのこと話したら大喜びしちゃって……」
フィオルさんと一緒にテーブルの席に座って待っていると、フィオルさんのお父さんが大きなケーキを持ってきた。
「買ってきたもので申し訳ないんだが、これは私と母さんから娘になる君にバースデーケーキだよ」
大きなケーキ……こんなの、今まで見たことない。
まだ誕生日じゃないし、なんなら孤児の私の誕生日はアンナさんが私を見つけた日だから正確な誕生日ってわからないんだけど……だけど、嬉しい。
「ありがとうございます」
ケーキだけじゃない、他にもパスタとかローストチキンとか、色々……お二人とも、私のためにこんなに……。
「準備はできたな。よし、それじゃいただこう」
「俺が切り分けるよ」
フィオルさんが、大きなケーキを切り分けて私の前に置いてくれた。
部屋を暗くして、ロウソクに火を灯し、ご両親が私のためにバースデーの歌を歌ってくれる。
こんなことしてもらったの初めて……アンナさんもパンケーキは余分に焼いてくれたけど、お誕生日会もみんなと合同だったし……それでも十分に嬉しかったのに……全然誕生日じゃないのに……。
「ほら、ミアちゃん、冷めないうちにどうぞ」
フィオルさんのお母さんが、ローストチキンを切り分けてくれた。
めちゃくちゃ大きい。
フィオルさんがローストチキンを好きなのは、たぶんこういうことだったんだね。
「ありがとうございます」
「父さんと母さんは、ミアを養子に迎える気満々だ。
だけど、ミアはどうだ? 俺としてはミアの気持ちを優先したい」
「そうだな。養子になるということは、ミワさんも貴族になるということだ。もちろん我々も親としてサポートするし、夜会などは最低限の出席で構わない」
「あの……だけど、私のせいで貴族を無理に続けることになるのなら……」
「辞めたがってたのはフィオルだ。
どちらにしても、私の代までは続けるつもりだったし、息子には無理強いをするつもりは無かったが……」
そうだ、フィオルさんは本当に貴族を辞めるつもりだった。
私のせいでそれを続けさせるなんて……。
「俺は、正直どっちでも良かった。
庶民の暮らしに慣れて、既に自立していたってこともあったけど、男爵とはいえ長く続いてきた家系が俺の代で絶たれることに何も思わなかったわけじゃない。
ただ、俺の子供の時には没落具合が半端なくて碌な貴族としての教育も受けられなかったわけだが……」
「それは、父さんのせいだ……」
「私がちゃんと歩けなかったばかりに……」
「まぁ……フィオルには助けられっぱなしだな」
そういえば、没落を免れたのってフィオルさんが研究所に入ったおかげだったっけ……。
「だけど、所長の案でミアを養子にしたら結婚できると聞いて思ったんだ……ミアに、親の温もりを与えてあげたいって」
そうだ……私はいつだったか、娘を大事にするリカルドさんの話を聞いて、お父さんって羨ましいなと思ったことがあった。
お母さんはアンナさんがいるけど、アンナさんはみんなのお母さんだから……。
「俺はもう親離れしてるし、ミアは二人に甘えてもいいんだぞ」
「私ももう、甘える歳じゃないですよ……」
「そうか……もちろん、無理強いはさせないからミワさんが自分で決めたらいい」
だけど、もしお二人が私を養子として迎えてくれるのなら……。
「私も……お父さんとお母さんがほしいです……。
本当は、いつも羨ましかった……カエデの家族の話を聞いて……、外でお母さんと一緒に遊ぶ子供を見て……。
ずっと、そういうのに憧れてた……」
「ミアちゃん……」
「私たちで良ければ、君の両親にならせてくれ……」
「はい……よろしくお願いします……」
「ミワ、君は今日からうちの娘だ……!」
この日、私にお父さんとお母さんができた。
アンナさんにはもちろん恩があるし、私の育ての母親であることには変わりないけど……。
その後、お父さんとお母さんに、フィオルさんの小さい頃の話を聞いたり、領地にいる動物の話や、庭で育てているお花の話を聞いた。
お父さん……私の名前はミワじゃなくて、ミアです。
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