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本編
17:お弁当タイム
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「まずは、アスレチックから行ってみようか」
「おう、お前が班長だ。おれ達をリードしてくれ」
伊藤くんを先頭に、わたし達は歩きだした。
アスレチックって言ったら、なんかロープで出来た遊具とかだよね。
普通の公園にはないから、ああいうので遊ぶのってわくわくするよね。
通りがけ、他のクラスの女子達が伊藤くんを見てくる。
相変わらずイケメンパワーすごいな。
なんとなくだけど、こういうの見てるとファンクラブは存続しそうな気がする。
佐島さんを倒しても、第2、第3の佐島さんが……それはそれで怖い。
「お、滑車があるぜ! 名前は知らないけど、大きな公園によくある滑車!」
「それは、ターザンロープって言うんですよ。
似たようなものに、ジップラインとかスカイランナーがあります」
これって、そんな名前がついてるんだ。
沢木くんは物知りさんだね。
「よーし、伊藤! おれと勝負しようぜ!」
「面白そうだな!」
西田と伊藤くんの勝負が始まってしまった。
どうやってあれで勝負するのかは知らんけど。
「玲美ちゃん、あっちに鉄棒があるよ」
「うん、あるね」
「一緒に逆上がりしない?」
「しないよ?」
由美ちゃんは天然かわいい。
「全然進まないぞ、これ!」
「なかなか難しいな」
滑車を必死に動かそうと、クネクネ動いてる西田が笑える。
ちょっと、わたしもやってみようかな。
「いってーっ! キン〇マはさんだ!」
やだ、西田くんったらはしたないわ。
「それはコツがあるんですよ。やってみましょうか」
沢木くんはそういうとロープの上の方をつかんで勢いを付けて滑り出した。
その姿はまるでメガネを付けたターザン。
ロープを前後に揺らし、うまくバランスを取っている。
そして、ガシャンと反対側に到着し……あ、落ちた。
ゴールしたところまではよかったのに。
「沢木くん、大丈夫!?」
沢木くんは落ちていたメガネを拾って、ふらふらしながら立ちあがった。
「え、ええ……、ちょっとびっくりしました」
「ビックリしたのはこっちだぜ! お前、やるなぁ!」
「沢木くん、すごいね。西田なんてクネクネしてキン〇マ痛めただけなのに」
「玲美ちゃん、お下品」
「た、たいしたこと、ないです」
「……負けない」
あれ? 伊藤くん、何でそんなに対抗意識燃やしてんの?
まだやるの? そろそろ他のアスレチック回りたいんだけど。
その後、伊藤くんがターザンロープをマスターするのに時間はかからなかった。
「よし、もう沢木くんに負けないぞ!」
負けず嫌いだこの人。
「次は、そこにある雲梯に行ってみようか」
「おう、勝負だ!」
「雲梯はアスレチックじゃなーいー」
もっとこう、紐が網目になってて登るやつとか、紐でつるされた木を渡るとか。
わたし、ああいう紐系ので遊びたいんだけど。
「誰が一番早いか勝負しようぜ」
「おれと西田の勝負になりそうだな」
「伊藤くん、なめてます? わたしのこと」
なんかムカついたので、ぶっちぎりでわたしが勝利してやった。
こういうのって、なにげに得意。幼稚園時代の雲梯の女王の名は伊達じゃない。
「……猿か」
西田、さすがにそれは傷付く。
「玲美ちゃん、楽しいね」
「雲梯って、そんなに楽しかった?」
「ううん、みんなとこうやって遊ぶのが楽しいの」
その後、アスレチックをいくつか回って、勝負したり、おしゃべりしたり、先生に写真を撮ってもらったり。
あんなことがあってどうなることかと思ったけど、みんなと遊んでたら楽しくて、あっという間に時間が過ぎていった。
*****
そして、お待ちかねのお弁当の時間がやってきた。
もう、お腹ペコペコ。
わたし達は川の近くにレジャーシートを敷き、そこでお弁当を食べることにした。
「由美ちゃんのシート、かわいいね」
うさぎのキャラがプリントされた、かわいらしいシートだ。
「玲美ちゃんのは……ああ、うん……」
ええ、普通のシートです。いいんです。使えたらそれで。
「お前、おれと一緒じゃねーか」
「むっ、それはイヤ」
伊藤くんのは、黒と白のチェック柄のなんかかっこよさそうなやつ。
こういうところまでオシャレなのか、このイケメンは。
沢木くんのは、お寿司屋さんの包むやつみたいな感じ。
そういう素朴なのも、わたしは好きよ。
「それじゃあ、いただきまーす」
「「「「いただきまーす」」」」
おむすびおいしい。
お母さん、わたしの好きな昆布入れてくれたんだ。
唐揚げとたまご焼き、ウインナーも、わたしの好きなものばかり。
帰ったら、お母さん孝行しなきゃ。
由美ちゃんはサンドイッチ。
さすが由美ちゃん、お弁当もかわいらしい。
「ね、玲美ちゃん。サンドイッチとその唐揚げ、交換する?」
「うん。でも唐揚げでいいの?」
「いいよいいよ。わたし、こんなに食べ切れないし。
じゃあ、はい。あーんして」
「あーん……なにこれ、すっごいおいしい!
由美ちゃんも、あーん」
「唐揚げもおいしいよ!」
このサンドイッチは由美ちゃんのお母さんが作ったのかな?
定食屋さんだもんね。そりゃおいしいよ。
また、お父さんにお願いして食べに行かなきゃね。
「日高さん、そのたまご焼きと私のこのシューマイ交換いたしませんか?」
沢木くんのキャラがおかしい。
別にいいけど、さすがにあーんはしないよ?
「じゃあ、はい」
「ふむ……これはこれは……むう! だしのきいた、ただのたまご焼きかと思えば、中にはちりめんなどの魚介が!
子供のことを思って母親のカルシウムも摂ってね! という温かい心配りに加え、絶妙にバランスのとれた醤油加減……これは……すばらしい!」
すっごいしゃべる。
ちなみに、それ神主さんがくれた玉子ね。
食べるとなにかご利益あるかもしれないよ。知らんけど。
シューマイもおいしいです。
「沢木、お前面白いやつだな」
「大人しいだけのやつかと思ってたけど、沢木くんのいろんな面が見れて楽しいよ」
「そ、そうですか? ……ううむ」
恥ずかしそうに顔を伏せる沢木くん。
ちょっと変な子だけど、沢木くんなりにわたし達を楽しませようと一生懸命考えたのかな。
この班の子は、みんないい子達だ。
伊藤くん達の班に入って良かったって、今なら思えるよ。
「日高さん、弁当食べたら雲梯に行こう。次は負けないよ」
「行かないよ?」
しょぼーんとする伊藤くん。
ほんと、負けず嫌いだなこの男。
それに、お弁当を食べ終わったら、いよいよお待ちかねのおやつタイムでしょうが。
さーて、いっぱい買ったし、どれから食べようかな。
*****
「ヨーグルトみたいなの、おいしー」
「うん、おいしいね」
そういえば、伊藤くんもこれ買ってたんだっけね。
「これって結局なんなんだろう」
「ヨーグルトっぽい何か」
「ヨーグルトっぽい何かね」
西田はう〇い棒をバリバリ食べてる。
結局そればっか買ってたな、お前。
ほら、こぼしすぎて鳩が来てついばんでるじゃないか。
「玲美ちゃん、このカラフルなチョコと何か交換しない?」
「じゃあ、コーラ味のグミと交換しよっか」
「うん!」
コーラづくしのわたしのおやつ。
おやつを交換すると、自分が買わなかったものも食べられるからいいよね。
これだけいっぱいあると全部は食べ切れないから、残りは家でゴロゴロしながら食べよっと。
「あ、ほんとだ。これ肉じゃないね」
伊藤くんが、あの時買ってたカツを食べながら言った。
「それは、魚のすり身ですよ」
現れたな、歩く辞書・沢木。
酢昆布を食べながら、メガネをクイっと光らせる。
チョイスがしぶい。
「肉じゃないけどうまいな」
伊藤くんは満足そう。見てたら食べたくなってきた。
わたしも買えばよかった、あれ。
「日高さんも食べる? オレ、何個か買ってたから」
「いいの? じゃあ、コーラのラムネあげるよ」
伊藤くんともおやつ交換してしまった。
「そういえば疑問だったんだけど、伊藤くんの住んでたところって駄菓子屋なかったの?」
「オレが住んでたところは近所になくってさ。
あってもコンビニでう〇い棒とかベ〇ースターとか、メジャーなものくらいしか無かったんだよ」
「そうなんだ」
都会っ子は、おやつをコンビニでそろえるのか。
それでもいいんだけど、ちょっと味気ないかもしれない。
やっぱり遠足のおやつは、たくさんの種類からいろいろと選ぶのが楽しいから。
「引っ越してきてよかったな……こんなにいい友達とも出会えたし」
「友達……」
そっか……わたし達、もう友達なんだ。
由美ちゃんは当然だけど、伊藤くんも、西田も、沢木くんもみんないい人達。
おかげで、遠足がすごく楽しかった。
わたしも……みんなと会えてよかった。
「なあ、良かったら、オレ達みんな下の名前で呼び合わないか?」
「おっ、いいねえ! じゃあ、おれのことはたっちゃんと」
「呼ばないからね?」
西田をそんな呼び方したら、全国の某恋愛野球マンガのファンが怒るぞ。
「オレは、悠太郎って呼び捨てでいいよ」
「じゃあおれは、琢也と呼んでくれ」
「わたしは玲美でいいよ」
「わたしは由美って呼んでね」
「ぼ、ぼくは……、順です!」
………………。
……!?
「「「「えっ!?」」」」
全員一斉に声が出た。
「ま、まさか……皆さん、ぼくの名前……知らなかったんですか?」
「そ、そんなわけ……ないじゃないか……なあ?」
伊藤くんの目が泳いでいる。
「わ、わたしは驚いてないよ……」
わたしも思わず目をそらす。
「お、おう……知ってたぜ……」
西田、お前は知ってなきゃ駄目だろ。
1年と2年のとき、同じクラスだったって聞いたぞ。
「……ごめんね」
由美ちゃんがとどめを刺した。
「まぁ、仕方ないです……。ぼくって影薄いし……」
だって、男の子でもジュンって名前の子いるし、そうだって思うじゃん。
まさか、そんな読み方するなんて思わなかったわ……。
「……コホン、では改めまして。ぼくの名前は沢木順です。
よろしくお願いいたします」
友達になったわたし達は、そのあとも楽しくおしゃべりした。
進級して仲のよかった友達も何人か離れてしまったけど、またこうして新しい友達と出会えた。
うまく言えないけど、こういうのってすごく大切なことなんだって思う。
「それじゃあみんな、食事タイムも終わったし、川でも見に行こうか!」
そういえば、西田……じゃなかった、琢也がザリガニ取りたいって言ってたもんね。
ザリガニは取らないけど、せっかくだしわたしも川に入って遊ぼっと。
「おう、お前が班長だ。おれ達をリードしてくれ」
伊藤くんを先頭に、わたし達は歩きだした。
アスレチックって言ったら、なんかロープで出来た遊具とかだよね。
普通の公園にはないから、ああいうので遊ぶのってわくわくするよね。
通りがけ、他のクラスの女子達が伊藤くんを見てくる。
相変わらずイケメンパワーすごいな。
なんとなくだけど、こういうの見てるとファンクラブは存続しそうな気がする。
佐島さんを倒しても、第2、第3の佐島さんが……それはそれで怖い。
「お、滑車があるぜ! 名前は知らないけど、大きな公園によくある滑車!」
「それは、ターザンロープって言うんですよ。
似たようなものに、ジップラインとかスカイランナーがあります」
これって、そんな名前がついてるんだ。
沢木くんは物知りさんだね。
「よーし、伊藤! おれと勝負しようぜ!」
「面白そうだな!」
西田と伊藤くんの勝負が始まってしまった。
どうやってあれで勝負するのかは知らんけど。
「玲美ちゃん、あっちに鉄棒があるよ」
「うん、あるね」
「一緒に逆上がりしない?」
「しないよ?」
由美ちゃんは天然かわいい。
「全然進まないぞ、これ!」
「なかなか難しいな」
滑車を必死に動かそうと、クネクネ動いてる西田が笑える。
ちょっと、わたしもやってみようかな。
「いってーっ! キン〇マはさんだ!」
やだ、西田くんったらはしたないわ。
「それはコツがあるんですよ。やってみましょうか」
沢木くんはそういうとロープの上の方をつかんで勢いを付けて滑り出した。
その姿はまるでメガネを付けたターザン。
ロープを前後に揺らし、うまくバランスを取っている。
そして、ガシャンと反対側に到着し……あ、落ちた。
ゴールしたところまではよかったのに。
「沢木くん、大丈夫!?」
沢木くんは落ちていたメガネを拾って、ふらふらしながら立ちあがった。
「え、ええ……、ちょっとびっくりしました」
「ビックリしたのはこっちだぜ! お前、やるなぁ!」
「沢木くん、すごいね。西田なんてクネクネしてキン〇マ痛めただけなのに」
「玲美ちゃん、お下品」
「た、たいしたこと、ないです」
「……負けない」
あれ? 伊藤くん、何でそんなに対抗意識燃やしてんの?
まだやるの? そろそろ他のアスレチック回りたいんだけど。
その後、伊藤くんがターザンロープをマスターするのに時間はかからなかった。
「よし、もう沢木くんに負けないぞ!」
負けず嫌いだこの人。
「次は、そこにある雲梯に行ってみようか」
「おう、勝負だ!」
「雲梯はアスレチックじゃなーいー」
もっとこう、紐が網目になってて登るやつとか、紐でつるされた木を渡るとか。
わたし、ああいう紐系ので遊びたいんだけど。
「誰が一番早いか勝負しようぜ」
「おれと西田の勝負になりそうだな」
「伊藤くん、なめてます? わたしのこと」
なんかムカついたので、ぶっちぎりでわたしが勝利してやった。
こういうのって、なにげに得意。幼稚園時代の雲梯の女王の名は伊達じゃない。
「……猿か」
西田、さすがにそれは傷付く。
「玲美ちゃん、楽しいね」
「雲梯って、そんなに楽しかった?」
「ううん、みんなとこうやって遊ぶのが楽しいの」
その後、アスレチックをいくつか回って、勝負したり、おしゃべりしたり、先生に写真を撮ってもらったり。
あんなことがあってどうなることかと思ったけど、みんなと遊んでたら楽しくて、あっという間に時間が過ぎていった。
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そして、お待ちかねのお弁当の時間がやってきた。
もう、お腹ペコペコ。
わたし達は川の近くにレジャーシートを敷き、そこでお弁当を食べることにした。
「由美ちゃんのシート、かわいいね」
うさぎのキャラがプリントされた、かわいらしいシートだ。
「玲美ちゃんのは……ああ、うん……」
ええ、普通のシートです。いいんです。使えたらそれで。
「お前、おれと一緒じゃねーか」
「むっ、それはイヤ」
伊藤くんのは、黒と白のチェック柄のなんかかっこよさそうなやつ。
こういうところまでオシャレなのか、このイケメンは。
沢木くんのは、お寿司屋さんの包むやつみたいな感じ。
そういう素朴なのも、わたしは好きよ。
「それじゃあ、いただきまーす」
「「「「いただきまーす」」」」
おむすびおいしい。
お母さん、わたしの好きな昆布入れてくれたんだ。
唐揚げとたまご焼き、ウインナーも、わたしの好きなものばかり。
帰ったら、お母さん孝行しなきゃ。
由美ちゃんはサンドイッチ。
さすが由美ちゃん、お弁当もかわいらしい。
「ね、玲美ちゃん。サンドイッチとその唐揚げ、交換する?」
「うん。でも唐揚げでいいの?」
「いいよいいよ。わたし、こんなに食べ切れないし。
じゃあ、はい。あーんして」
「あーん……なにこれ、すっごいおいしい!
由美ちゃんも、あーん」
「唐揚げもおいしいよ!」
このサンドイッチは由美ちゃんのお母さんが作ったのかな?
定食屋さんだもんね。そりゃおいしいよ。
また、お父さんにお願いして食べに行かなきゃね。
「日高さん、そのたまご焼きと私のこのシューマイ交換いたしませんか?」
沢木くんのキャラがおかしい。
別にいいけど、さすがにあーんはしないよ?
「じゃあ、はい」
「ふむ……これはこれは……むう! だしのきいた、ただのたまご焼きかと思えば、中にはちりめんなどの魚介が!
子供のことを思って母親のカルシウムも摂ってね! という温かい心配りに加え、絶妙にバランスのとれた醤油加減……これは……すばらしい!」
すっごいしゃべる。
ちなみに、それ神主さんがくれた玉子ね。
食べるとなにかご利益あるかもしれないよ。知らんけど。
シューマイもおいしいです。
「沢木、お前面白いやつだな」
「大人しいだけのやつかと思ってたけど、沢木くんのいろんな面が見れて楽しいよ」
「そ、そうですか? ……ううむ」
恥ずかしそうに顔を伏せる沢木くん。
ちょっと変な子だけど、沢木くんなりにわたし達を楽しませようと一生懸命考えたのかな。
この班の子は、みんないい子達だ。
伊藤くん達の班に入って良かったって、今なら思えるよ。
「日高さん、弁当食べたら雲梯に行こう。次は負けないよ」
「行かないよ?」
しょぼーんとする伊藤くん。
ほんと、負けず嫌いだなこの男。
それに、お弁当を食べ終わったら、いよいよお待ちかねのおやつタイムでしょうが。
さーて、いっぱい買ったし、どれから食べようかな。
*****
「ヨーグルトみたいなの、おいしー」
「うん、おいしいね」
そういえば、伊藤くんもこれ買ってたんだっけね。
「これって結局なんなんだろう」
「ヨーグルトっぽい何か」
「ヨーグルトっぽい何かね」
西田はう〇い棒をバリバリ食べてる。
結局そればっか買ってたな、お前。
ほら、こぼしすぎて鳩が来てついばんでるじゃないか。
「玲美ちゃん、このカラフルなチョコと何か交換しない?」
「じゃあ、コーラ味のグミと交換しよっか」
「うん!」
コーラづくしのわたしのおやつ。
おやつを交換すると、自分が買わなかったものも食べられるからいいよね。
これだけいっぱいあると全部は食べ切れないから、残りは家でゴロゴロしながら食べよっと。
「あ、ほんとだ。これ肉じゃないね」
伊藤くんが、あの時買ってたカツを食べながら言った。
「それは、魚のすり身ですよ」
現れたな、歩く辞書・沢木。
酢昆布を食べながら、メガネをクイっと光らせる。
チョイスがしぶい。
「肉じゃないけどうまいな」
伊藤くんは満足そう。見てたら食べたくなってきた。
わたしも買えばよかった、あれ。
「日高さんも食べる? オレ、何個か買ってたから」
「いいの? じゃあ、コーラのラムネあげるよ」
伊藤くんともおやつ交換してしまった。
「そういえば疑問だったんだけど、伊藤くんの住んでたところって駄菓子屋なかったの?」
「オレが住んでたところは近所になくってさ。
あってもコンビニでう〇い棒とかベ〇ースターとか、メジャーなものくらいしか無かったんだよ」
「そうなんだ」
都会っ子は、おやつをコンビニでそろえるのか。
それでもいいんだけど、ちょっと味気ないかもしれない。
やっぱり遠足のおやつは、たくさんの種類からいろいろと選ぶのが楽しいから。
「引っ越してきてよかったな……こんなにいい友達とも出会えたし」
「友達……」
そっか……わたし達、もう友達なんだ。
由美ちゃんは当然だけど、伊藤くんも、西田も、沢木くんもみんないい人達。
おかげで、遠足がすごく楽しかった。
わたしも……みんなと会えてよかった。
「なあ、良かったら、オレ達みんな下の名前で呼び合わないか?」
「おっ、いいねえ! じゃあ、おれのことはたっちゃんと」
「呼ばないからね?」
西田をそんな呼び方したら、全国の某恋愛野球マンガのファンが怒るぞ。
「オレは、悠太郎って呼び捨てでいいよ」
「じゃあおれは、琢也と呼んでくれ」
「わたしは玲美でいいよ」
「わたしは由美って呼んでね」
「ぼ、ぼくは……、順です!」
………………。
……!?
「「「「えっ!?」」」」
全員一斉に声が出た。
「ま、まさか……皆さん、ぼくの名前……知らなかったんですか?」
「そ、そんなわけ……ないじゃないか……なあ?」
伊藤くんの目が泳いでいる。
「わ、わたしは驚いてないよ……」
わたしも思わず目をそらす。
「お、おう……知ってたぜ……」
西田、お前は知ってなきゃ駄目だろ。
1年と2年のとき、同じクラスだったって聞いたぞ。
「……ごめんね」
由美ちゃんがとどめを刺した。
「まぁ、仕方ないです……。ぼくって影薄いし……」
だって、男の子でもジュンって名前の子いるし、そうだって思うじゃん。
まさか、そんな読み方するなんて思わなかったわ……。
「……コホン、では改めまして。ぼくの名前は沢木順です。
よろしくお願いいたします」
友達になったわたし達は、そのあとも楽しくおしゃべりした。
進級して仲のよかった友達も何人か離れてしまったけど、またこうして新しい友達と出会えた。
うまく言えないけど、こういうのってすごく大切なことなんだって思う。
「それじゃあみんな、食事タイムも終わったし、川でも見に行こうか!」
そういえば、西田……じゃなかった、琢也がザリガニ取りたいって言ってたもんね。
ザリガニは取らないけど、せっかくだしわたしも川に入って遊ぼっと。
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