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序章
09:怖くて悲しい夢
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3学期が始まってすぐ、わたしは風邪をひいてしまった。
薬飲んで安静にしてればそのうち治るでしょって思っていたんだけど。
1週間経っても治らないし、なんか咳をするたびに胸の辺りがずきずきする。
咳のし過ぎでのどが切れちゃったみたいで、咳したら一緒に血が出てきた。
「玲美! どうしたの!?」
お母さんが焦ってる。
わたしもびっくりしてるんだけど、これって本当にただの風邪?
「お父さん! 玲美が……!
お父さん、起きて!!」
「どうした!? 玲美!しっかりしろ!!」
「……!!」
しゃべろうとしても、のどが痛くて無理っぽい。
お母さん達が何を言ってるのかもよく聞こえない。
なんか疲れちゃったし、もうちょっと寝てようかな。
風邪ひいた時くらい、少しくらい寝すぎてもいいよね?
お母さん、おやすみなさい……。
……………………
…………
……
……ここは、どこ?
うちの近所?みたいに見えるけど。
でも、ここには誰もいない。
お父さんも、お母さんも、由美ちゃんもいない。
空もなんだか薄暗い。
しばらく歩くと、ここは……小学校?
気が付いたら小学校にいた。
やっぱり、ここも誰もいない。
みんなどこ行っちゃったの?
そういえば、もう歩いてないのに勝手に景色が変わっていく。
気が付くと、わたしは学校の屋上にいた。
なんでこんな場所に……屋上は行っちゃ駄目って先生からも言われてるのに。
そこに、やっと誰かを見つけた。
髪の毛の長い女の子……かな?
顔がよく見えないからわかんないけど、わたしより年上のお姉さんっぽい。
声をかけようと思っても声が出ない。
あの子、わたしに気づいてないみたいだし、何やってんだろう。
その子は屋上から飛び降りようとしている。
こんなところから落ちたら死んじゃう。
わたしは駆け寄ろうとするんだけど、足が思うように動いてくれない。
手を伸ばそうとしても届かない。
────ドシャっと嫌な音が聞こえた。
なんで?
どうしてあの子は飛び降りちゃったの?
わたしはしばらく、その場に立ち尽くしていた。
知らない子なのに。
飛び降りるところを見て怖いはずなのに。
なんでこんなに悲しいの?
なんで、こんなに胸が締め付けられるの?
つらい……つらいのは、飛び降りたお姉さんのはずなのに。
もし、わたしが駆け寄ることができたら……。
伸ばした手が届いていたら……。
その前に……こんな悲しくなるようなことは起こさせない。
飛び降り自殺なんて……絶対にさせない!
それが……それこそが、俺の────
……
…………
……………………
「────玲美!」
「おかあ……さん?」
「よかった……気が付いたのね」
お母さん、泣いてる。
わたし、どうしたんだっけ?
のどから血が出て喋れなくて……胸が痛くて……。
どこだここ?
家とは違う天井みたいだし。
「玲美ちゃん、わかるかい?」
うげっ、病院の先生だ。
じゃあ、ここって病院?いつの間に来たの?
「つらかったかい?」
先生の大きな手がおでこに当たった。
そして、わたしの目のあたりを看護士さんがハンカチで拭いてくれた。
泣いてたのか、わたし。
「点滴してるから、手を動かさないようにね」
テンテキってなんだ?手を動かさないで……って、いつのまにかわたしの手になんか刺さってる!
「あなた、肺炎起こしてたの。
ただの風邪だと思ってたから……お母さん、気づかなくてごめんね……」
「お……かあさんは……わるくない……」
少ししゃべれた。
まだのどが痛くて大きな声は出せないけど。
「熱も下がってきたみたいですし、もう大丈夫です。
あとは抗生物質を出しますのでそれで治療していきましょう」
「先生……ありがとうございます!」
もしかして、わたし死にかけてた?
ただ寝ただけのつもりだったんだけど。
お母さん、まだ泣いてる。
看護士さん、お母さんの涙も拭いてあげて。
*****
結局、この日はこのままお母さんと病院にお泊り。
帰ってからも、しばらく病院にはこなきゃいけないみたい。
やだな……。
「玲美が先生に助けられるのは、これで2回目ね」
そうなの?こんなこと、前にもあったっけ?
「あなたが3歳の頃だったかな。
ひきつけを起こして、お父さんが救急車なんて待ってられないって慌てちゃって……」
全然覚えてないや。
3歳くらいの頃の記憶って、ほとんど覚えてないんだよね。
「今思うと、あのひきつけが治ってから、玲美はお転婆になったような気がするわ。
それまでは、聞き分けがよくていい子だったのにね」
そんなん言われても知らんがな。
ああ、でも……なんだろう。
七五三の千歳飴のことは、うっすらと覚えてるな。
お父さんとお母さんに買ってもらって、食べたら甘くて。
お父さんとお母さんが大好きで……。
「玲美……泣いてるの? どこか痛いの?」
なんか、勝手に涙が出てきた。
今日のわたしは泣いてばっかりだ。
お母さんが頭を撫でてくれる。
幼い頃に戻ったみたいだ。今も幼いけど。
あと、痛いと言えば腕が痛い。
のどと胸も痛いけど、注射が刺さってるっていうだけでもう痛い。
早く家に帰りたい。
元気になって、学校に行って、由美ちゃんとまた遊びたい。
そういえば、寝てるときに怖いというか悲しいというか、何かそんな夢を見たような気がするんだけど……。
どんな夢だったっけ……思い出そうとしても頭が痛くなって思い出せない。
薬飲んで安静にしてればそのうち治るでしょって思っていたんだけど。
1週間経っても治らないし、なんか咳をするたびに胸の辺りがずきずきする。
咳のし過ぎでのどが切れちゃったみたいで、咳したら一緒に血が出てきた。
「玲美! どうしたの!?」
お母さんが焦ってる。
わたしもびっくりしてるんだけど、これって本当にただの風邪?
「お父さん! 玲美が……!
お父さん、起きて!!」
「どうした!? 玲美!しっかりしろ!!」
「……!!」
しゃべろうとしても、のどが痛くて無理っぽい。
お母さん達が何を言ってるのかもよく聞こえない。
なんか疲れちゃったし、もうちょっと寝てようかな。
風邪ひいた時くらい、少しくらい寝すぎてもいいよね?
お母さん、おやすみなさい……。
……………………
…………
……
……ここは、どこ?
うちの近所?みたいに見えるけど。
でも、ここには誰もいない。
お父さんも、お母さんも、由美ちゃんもいない。
空もなんだか薄暗い。
しばらく歩くと、ここは……小学校?
気が付いたら小学校にいた。
やっぱり、ここも誰もいない。
みんなどこ行っちゃったの?
そういえば、もう歩いてないのに勝手に景色が変わっていく。
気が付くと、わたしは学校の屋上にいた。
なんでこんな場所に……屋上は行っちゃ駄目って先生からも言われてるのに。
そこに、やっと誰かを見つけた。
髪の毛の長い女の子……かな?
顔がよく見えないからわかんないけど、わたしより年上のお姉さんっぽい。
声をかけようと思っても声が出ない。
あの子、わたしに気づいてないみたいだし、何やってんだろう。
その子は屋上から飛び降りようとしている。
こんなところから落ちたら死んじゃう。
わたしは駆け寄ろうとするんだけど、足が思うように動いてくれない。
手を伸ばそうとしても届かない。
────ドシャっと嫌な音が聞こえた。
なんで?
どうしてあの子は飛び降りちゃったの?
わたしはしばらく、その場に立ち尽くしていた。
知らない子なのに。
飛び降りるところを見て怖いはずなのに。
なんでこんなに悲しいの?
なんで、こんなに胸が締め付けられるの?
つらい……つらいのは、飛び降りたお姉さんのはずなのに。
もし、わたしが駆け寄ることができたら……。
伸ばした手が届いていたら……。
その前に……こんな悲しくなるようなことは起こさせない。
飛び降り自殺なんて……絶対にさせない!
それが……それこそが、俺の────
……
…………
……………………
「────玲美!」
「おかあ……さん?」
「よかった……気が付いたのね」
お母さん、泣いてる。
わたし、どうしたんだっけ?
のどから血が出て喋れなくて……胸が痛くて……。
どこだここ?
家とは違う天井みたいだし。
「玲美ちゃん、わかるかい?」
うげっ、病院の先生だ。
じゃあ、ここって病院?いつの間に来たの?
「つらかったかい?」
先生の大きな手がおでこに当たった。
そして、わたしの目のあたりを看護士さんがハンカチで拭いてくれた。
泣いてたのか、わたし。
「点滴してるから、手を動かさないようにね」
テンテキってなんだ?手を動かさないで……って、いつのまにかわたしの手になんか刺さってる!
「あなた、肺炎起こしてたの。
ただの風邪だと思ってたから……お母さん、気づかなくてごめんね……」
「お……かあさんは……わるくない……」
少ししゃべれた。
まだのどが痛くて大きな声は出せないけど。
「熱も下がってきたみたいですし、もう大丈夫です。
あとは抗生物質を出しますのでそれで治療していきましょう」
「先生……ありがとうございます!」
もしかして、わたし死にかけてた?
ただ寝ただけのつもりだったんだけど。
お母さん、まだ泣いてる。
看護士さん、お母さんの涙も拭いてあげて。
*****
結局、この日はこのままお母さんと病院にお泊り。
帰ってからも、しばらく病院にはこなきゃいけないみたい。
やだな……。
「玲美が先生に助けられるのは、これで2回目ね」
そうなの?こんなこと、前にもあったっけ?
「あなたが3歳の頃だったかな。
ひきつけを起こして、お父さんが救急車なんて待ってられないって慌てちゃって……」
全然覚えてないや。
3歳くらいの頃の記憶って、ほとんど覚えてないんだよね。
「今思うと、あのひきつけが治ってから、玲美はお転婆になったような気がするわ。
それまでは、聞き分けがよくていい子だったのにね」
そんなん言われても知らんがな。
ああ、でも……なんだろう。
七五三の千歳飴のことは、うっすらと覚えてるな。
お父さんとお母さんに買ってもらって、食べたら甘くて。
お父さんとお母さんが大好きで……。
「玲美……泣いてるの? どこか痛いの?」
なんか、勝手に涙が出てきた。
今日のわたしは泣いてばっかりだ。
お母さんが頭を撫でてくれる。
幼い頃に戻ったみたいだ。今も幼いけど。
あと、痛いと言えば腕が痛い。
のどと胸も痛いけど、注射が刺さってるっていうだけでもう痛い。
早く家に帰りたい。
元気になって、学校に行って、由美ちゃんとまた遊びたい。
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どんな夢だったっけ……思い出そうとしても頭が痛くなって思い出せない。
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