少女が過去を取り戻すまで

tiroro

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序章

01:今日から小学生

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 今日は待ちに待った入学式。
 わたしは今、お母さんに連れられて小学校に向かってます。


「お母さん、見て。小学生がいっぱい歩いてる」

「あなたも今日から小学生だからね」

 みんな、よそいきって感じの服着て特別な感じだ。
 わたしもこの日のためにお母さんが買ってくれた服を着ているので、ちょっと慣れてなくて動きにくいけど、それがなんだか嬉しい。

「小学校に行ったら、友達100人はいらないけど10人くらい作りたい」

「10人も連れて来られたらうちがいっぱいになっちゃう」


 お母さんとお話ししながら歩いていると、いつの間にか小学校の門のところに着いていた。
 これが小学校か。大きなマンションみたいだ。

「小岩井さん、おはようございます」

「あら、日高さん。おはようございます」

 恭ちゃんとこのおばちゃんだ。
 くるくるパーマがいつも以上にくるくるしてる。

 恭ちゃんはわたしの幼稚園のころからの友達。
 ほかにも仲のいい子でてつちゃんっていう子がいたんだけど、幼稚園を卒園したときに引っ越しちゃった。
 3人で一緒の小学校に行けたらよかったけど仕方ないよね。
 恭ちゃんは昆虫にすごく詳しくて、みんなから昆虫博士って呼ばれてたんだよ。

「玲美ちゃん、今日はおめかししてかわいさが増してるね」

「でしょ! 早く着たかったの!」

「こう言ってくれると、うちの子もやっぱり女の子だったんだなって安心します」

 やっぱりってなにさ。
 わたしはずっと女の子ですよ。


「入学式に参加する子は、上級生のお兄さんとお姉さんから名札をもらってくださーい!」


「名札もらえるんだって。恭ちゃん、行こ」

「おれ、緑色の名札がいいな」

「玲美、お母さん達は先に会場に行ってるからね」

「はーい」


 上級生のお姉さんのところに行ったら名札を付けてくれた。
 ちゃんと日高玲美ひだかれみって書いてある。
 恭ちゃんの名札には小岩井恭佑こいわいきょうすけって書いてあった。
 フリガナがなかったら絶対読めない。

 二人とも同じ白色の名札。
 他の子を見ると色が違う名札を付けてる子もいるので、色で組み分けされてるのかな。


「おれたち同じクラスかな?」

「そうだといいねー」

「おれは緑色がよかったけど」

「どんまい」

 わたしは黄色がよかったけど、まあいいか。
 白色も好きだし、これでも全然いい。


*****


 入学式が終わって教室に移動。

 それにしても、校長先生のお話長すぎ。
 入学式の半分くらいあの人がしゃべってたんじゃないの?


「やっぱり同じクラスだったな」

「これで幼稚園からずっと同じクラスだね」

 わたしのクラスは1年2組。
 幼稚園みたいに桃組とかじゃないんだと思うと、なんとなく小学生って感じがする。

「席は番号順だから玲美ちゃんとは離れちゃうな」

「わたしが恋しいか?」

「そんなんじゃねえよ」

 そういえば、クラスの子達を見てみると半分くらいは知ってる顔。

 幼稚園が同じだった子達だ。
 高津ちゃんと飯塚くんもこのクラスなんだ。
 同じ桃組だった子達だから、また一緒に遊べるね。

 みんなワイワイおしゃべりしてる中、一人ぽつんとしている子がいる。


「恭ちゃん、あの女の子……」

「どうした?」

 同じ幼稚園にはいなかった子だ。
 だけど……初めて見た子のはずなのに、もっと前から知っているような……なんていうか、見ているとどことなく懐かしい感じがする。
 
「恭ちゃん、あの女の子知ってる?」

「あの女の子って……おれは初めて見るぞ。
 玲美ちゃんの知り合いか?」

「ううん。わたしも初めて見る」

 どっかで会ったことあったっけ?
 幼稚園じゃ見たことないくらいかわいい子。

 高津ちゃん達がかわいくないわけじゃないよ?
 なんか……雰囲気というか、なんでかわかんないけど。
 かわいいっていう感情じゃないのかもしれないけど……ほかに言いようがないの。

「わたし、あの子とお友達になりたい」

 そうは言ってみたものの、なんて話しかけようか。
 こういうのって最初が肝心だよね。

 幼稚園のときってどうやって友達作ってたっけ……いいや、とりあえず行っちゃえ。


 あの子の前に来ちゃったけどどうしよう。
 なんか見つめられてるし、何か言わなきゃ……。

「……はろー」

 なぜか英語で話しかけてしまった。
 絶対日本人なのに何言ってんだろうね。

「はろー?」

 相手の子もなぜか英語で返してきた。
 声もかわいい。

「明川さんっていうの?」

「うん」

 名札に明川由美あけがわゆみってフリガナふってあってあるから読めた。
 やっぱり知らない名前。違う幼稚園だった子なのかも。

「わたしは日高っていうんだよ」

 そう言って名札を見せてみた。

「そうなんだ」

 話が終わってしまった。

 そりゃそうだよね。
 だってお互いに相手のこと何も知らないし、これ以上話しようないじゃん。

「おれは小岩井恭佑。こいつの幼馴染だ」

「そう……」

 恭ちゃんも来たけど、やっぱり話が続かない。
 というか、むしろ悪化したんじゃないのこれ。

 むぅ……こうなったら幼稚園のお話してみよう。

「明川さんはどこの幼稚園だったの?」

「わたしは保育園だよ。みどりやま保育園」

 ホイクエンって何か知らんけど。
 たぶん、幼稚園みたいなもので合ってる?

「クラスに同じ幼稚園の子いた?」

「幼稚園じゃないけど……うん、何人かいるよ。でも仲良かった子はいないかな……」

 仲良かった子がいないならチャンスじゃん。
 わたしが明川さんの最初のお友達になっても、だれも文句言わないよね。

 よし、勇気を出してわたしからお願いしちゃおう!

「じゃあ、わたしと友達になろう!」

「いいの?」

「うん!」

「おれも」

「男の子は苦手……」

 恭ちゃんは振られてしまった。
 残念だったね。明川さんはわたしがもらったよ。

「小学校ではじめて友達ができた! 明川さんが第1号だよ!」

「うふふ、そうなんだ」

「これからよろしくね!」

「よろしくね!」

 さっそく友達ができちゃった。
 まだ明川さんのことはよく知らないけど、友達ができるって嬉しいね。


 小学校生活はまだ始まったばかり。
 これから毎日、楽しく過ごせるといいな。
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