無能と呼ばれた鍛冶師の神〜能力値向上のチート装備を村人たちに持たせて最強の国を築く!!

七色夏樹

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第55話 神への天啓!?

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「も、もういい加減にしなさいよ!」

 宙ぶらりんでお股をモゾモゾさせる発情寸前のクレアが、真っ赤な顔で睨めつけてくる。

 しかし、俺とて禁欲生活を余儀なくされており苦しいのだ。少しでも俺の苦しみを味わえとばかりに、高速もみもみを披露する。

「あんっ、やだぁッ、うそっ、あぁんっ――ガブッ」
「いってぇええええええええええ!?」

 発情期に入り、狂犬となったクレアに腕を噛まれてしまった。

「いい加減にしてって言ってるでしょ!」
「す、すまん――って!?」

 身をひねったクレアが俺の首に両腕をまわし、だいしゅきホールドってな具合に脚でロック。

「こっちの方が楽でいいわ」
「……そっか」

 スカートに手を入れて柔尻の感触をダイレクトに楽しむ。
 も~たまらん!

「……それ以上やったら殴るわよ」
「ケチッ」

 ――ボコッ!

 宣言通り殴られた。
 仕方なく、俺は駅弁スタイルのまま目的地へとクレアを運んだ。
 途中で上下にゆさゆさ揺らしてみたら、もう一発ほど殴られた。

 ちなみに、目的地に到着するまでに何度かチュチュはした。
 クレアは意外とキス魔なのだ。

「この辺なの?」
「うむ。多分この辺りに落っこちたはずなんだけどな」

 神眼で確認した辺りに降り立ち、俺たちは辺りに気を配りながら東へと移動する。

「ウゥルカーヌス」
「どうかしたか?」
「これ!」

 猫のように闇に桑の実色の瞳を輝かせるクレア。さすがダークエルフというだけあり、月明かりすら届かない暗闇にあっても、彼女は昼間と変わらず辺りの様子が見えているようだ。

 俺はすかさず、頭に浮かせた神様ライトでクレアの足下を照らした。

「血……か?」
「うん。まだ新しいみたい」

 躊躇することなく血に触れて確かめる。
 箱入り娘とはいえ、さすがに魔族街ワンダーランドで生まれ育っただけあり頼もしい。
 これが農民出身の平凡な娘なら、青筋立てて震えているところだろう。

「ウゥルカーヌス、向こうに続いているわ」
「こんなに暗いのによく見えるな」

 俺は自分で照らし出した周囲しか見えないので、感心してしまう。
 先行するクレアについていく形で、俺も足早に移動する。彼女が通った場所にはたしかに真新しい血痕が続いていた。

「血の量からしても、かなり深手を追ってるんじゃないかしら? 何かを引きずった跡があるし、たぶん足を負傷してるんだと思う」
「そう遠くには行っていないということか」

 頷いたクレアが立ち止まり、周囲に目を光らせる。

「この辺りは大森林の中央でしょ?」
「それが何か?」
「この辺りはずっと変な力が働いていて、最近まで魔物や魔族は近づけなかったのよ」
「……あぁ」

 嘗て、俺がアヴァロンの王にくれてやったあれのせいだな。

「近づけなかったから何だってんだよ?」
「魔物や魔族同士の縄張り争いではないってこと」
「違ったらダメなのか?」
「ダメってことはないけど、勢力争いをしているのかもしれないってことよ」

 そこに誤って首を突っ込んでしまえば、後々面倒事に巻き込まれるかもしれないとクレアは懸念している。

「だからって放置するわけにもいかんだろ?」
「それはそうだけど……」
「単なる勢力争いだった場合はノータッチ。そうじゃなかった場合は助けてやればいい。そこは臨機応変に対応すれば問題ないだろ」

 恩を売っておいて損をすることはない。うまくやれば戦力増加に繋がる可能性もある。

「ストップ!」
「今度はなんだよ?」

 またクレアが立ち止まり、こちらに手のひらを向けてくる。

「これ、何の音かしら?」
「音……?」

 言われて耳をすませてみると、カキーン、カキーンと鉄を弾くような甲高い音が響き渡ってくる。

「……剣戟の音じゃないのか?」
「あっちの方からよ」
「とにかく行ってみよう」

 俺たちは音の方へと駆け出した。
 近づくにつれて鋭い音の応酬は大きくなる。やがて遠くの暗闇がかすかに赤く光る。

「あれは!?」

 飛び散る火の粉だ。
 ハーピィらしき血まみれの少女が、湾曲刀シャムシールを振り回す男と対峙している。男の振るった刀をハーピィが鋭い爪で弾き返すたび、二人の間に真っ赤な火花が飛び散っていた。

「相手は一人じゃないわ!」

 真っ赤な火花が一瞬辺りを照らし出すと、攻防戦を繰り広げる二人の近くにもう一人発見する。矢をつがえた男だ。

「人間!?」

 ハーピィを襲っている男は二人とも人間だった。湾曲刀シャムシールの方は体格が良く、猟師のような獣の皮をまとった無精髭の男。矢をつがえる方は頭に巻いた布地が印象的な盗賊っぽい男。いずれも戦いなれていることが分かる。

「一体どうなってんだよ!」

 アーサー村以外にも、《約束の大森林》に人間が暮らしているのか。そんなことはあり得ない。ラファエルたちの調査でも、大森林にはアーサー村以外に人間はいなかった。

「ウゥルカーヌス、どうするの? 向こうはまだこっちに気づいてないみたいだけど」

 幸い、野蛮な音が聞こえてからすぐに神様ライトを消したため、こちらの存在には気づかれていない。

「でも、なんで人間がいるんだよ?」
「そんなの知らないけど、たぶんあいつらは外から来た冒険者よ!」
「冒険者!?」

 俺はいつかのウリエルの言葉を思い出していた。

『――トリートーンはこちらの陣営を見つけるために、冒険者を雇ったみたいっすから』

 もしも仮に、あの二人がトリートーンの放った冒険者だったとしたなら、ヤバい。こちらの準備はまだ全然整っていないというのに、今攻められたら確実に負ける。

「どうするのよ、ウゥルカーヌス」

 どうすればいい……。
 んっなことは決まってる。
 アーサー村を守るためにも、あの二人を生かして置くわけにはいかん。

「ハーピィを助けるぞ! あの二人は確実に、殺す!」
「了解」

 俺の指示を聞いたクレアが、にやりと口角を引き上げてヒョウのように駆け出した。

 足場の悪い森のなかを物凄いスピードで突っ切るクレア。前傾姿勢となって小石を拾い上げる。そのまま足を止めることなく湾曲刀シャムシール男に礫を放つ。

「―――!?」

 体力の限界から臀部を地面に打ちつけたハーピィ、彼女にとどめを刺そうとしていた男がクレアの放った礫を弾く。
 間一髪、ハーピィは九死に一生を得る。

「なんだてめぇッ! こいつの仲間かッ!」

 スカートをなびかせ空高く跳びはねたクレアが、強烈な蹴りを叩き込む。が、これを男は冷静にバックステップで躱した。

 しかしクレアも負けてはいない。着地すると同時に蹴り抜いた右脚を軸に回転、長く伸びた左足で砂を舞い上げる目潰し攻撃。

「くそっ、卑怯な真似しやがってッ!」
「男二人がかりで女の子を襲ってる腰抜けに言われたくないっつーのっ!」
「んっだとコラァッ!」

 クレアは止まることなく、一気に距離を詰めて接近戦を仕掛ける。
 相手の湾曲刀シャムシールをかい潜りながら、見事な格闘戦を披露する。

 さすがベルゼブブの娘。
 バカほど強い。
 丸腰相手に男は防戦一方。反撃する余裕すらない。

「よし、俺も行くか」

 疲れ果てて尻もちをついたハーピィに矢を構える男の元へと接近すると、突然目の前に《警告》謎の赤文字が浮かび上がってきた。

「なっ、なんだこれ!?」

領地を賭けた神々の戦いゴッドゲームにおいて、神による信者との戦闘は認められておりません。トリートーン側の信者への攻撃は違反行為となり、その時点で敗北となります。監視組合より》

 俺は砂埃を巻き上げ急ブレーキをかけた。

「――監視組合!?」

 忘れていたが、領地を賭けた神々の戦いゴッドゲームは公平性を保つため、常に天界監視の元に行われているのだ。

「というか、こいつらトリートーン信者なのかよ!?」

 原則として、領地を賭けた神々の戦いゴッドゲーム中は対戦相手の信者に神が手を出すことは認められていない。

「ちょっと、何やってんのよウゥルカーヌス!」

 それは一瞬の油断だった。
 俺が監視組合からの天啓に困惑しているわずかな隙きに、男がハーピィに矢を放ったのだ。
 勢いよく放たれた矢は、磁石のS極N極のようにハーピィの頭部へと引き寄せられる。

「―――っ!?」

 咄嗟に手をのばすが、間に合わない。
 息を飲んだその時、暗闇に一筋の光が走る。

 ――カキーン!!

 寸前でハーピィの額を穿つはずだった矢が、宙で弾ける。

「――助太刀するッ!」

 暗闇に白銅色の髪が輝き、頼もしくも鋭い声が夜を揺らした。

「ガウェインッ――!!」

 ハーピィを守護するように立っていたのは、元伝説の少年兵。
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