無能と呼ばれた鍛冶師の神〜能力値向上のチート装備を村人たちに持たせて最強の国を築く!!

七色夏樹

文字の大きさ
上 下
24 / 66

第24話 不穏な気配

しおりを挟む
「うふふ」

 左手薬指に嵌められた紅蓮石の指輪を見つめるクレアは、いつになく上機嫌。

「あたし、この指輪だけは一生大事にするわ!」
「そ、そうか!」

 俺はてっきりもっと高価な指輪をせがまれるものとばかり覚悟していたのだけど、クレアは意外とリーズナブルな指輪を選んだ。

「うん! 今は無理でも、あたし絶対にママを説得してみせるからっ!」

 ギュッと腕をからめて豊満な胸を押し当ててくる。

「その時はちゃんと迎えに来てよね!」
「あ、ああ、もちろんだ!」

 こいつわざとやってんとちゃうだろうな。
 チラリ見ればニコニコ顔のクレアと目が合う。控えめに言ってエロかわいい。

 本音をいえば今すぐクレアを抱いてしまいたかったが、そんなことをしたら夜の妖精王ティターニアが何を仕出かしてくるか分かったものではない。

 未だに姿を見せないベルゼブブのこともあるし、これ以上下手に刺激するのは避けるべきだろう。非常に残念ではあるが、いつかの楽しみに取っておこうと思う。

「ウゥルカーヌス!」
「――!?」

 クレアを送りがてら神殿前までやって来ると、銀灰色の髪を揺らした彼女が身体ごとこちらに振り返る。同時にチュッと頬にくちづけ。

「きょ、今日はとても楽しかったわ! じゃ、じゃあ!」
「あっ……」

 耳の先まで真っ赤に染めたクレアが踵を返して駆けていく。
 百年生きようとも穢れ一つ知らない純朴な後ろ姿に、不覚にもときめいてしまった。

「………」

 小さくなっていく後ろ姿に見惚れながら、彼女が残した甘い余韻に浸っていた。

「ん……?」

 ふと、視線を感じて上を見上げれば、テラスからじっとこちらを見下ろす白髪の老人と目があった。

「……誰だろ?」



 ◆



「お帰りなさいだべ、神様!」
「……ああ」

 脳裏に焼きついたクレアの後ろ姿をぼんやり思い出しながら、安宿に帰宅。

「わてらこんなにも沢山コンドームを売ったがや!」
「もう大盛況だったんだじょ!」
「そっか。良かったな」

 札束を見せびらかしてくる二匹をスルーして、部屋に入る。

「神様……?」

 てな具合で、いつもと少し雰囲気が異なる俺に、ゴブトリオが首をかしげる。

「どうかしたんですか?」

 心配そうに声をかけてくれるアーサー。

「どうせ意地汚く拾い食いでもしたんでしょ。ほっときなさい」

 寝間着姿で泥パックをしたバケモノみたいなロキの顔を見て、ふわふわした気分が霧散する。

「――げっ!? バッ、バケモノのではないか!?」
「誰がバケモノじゃコラァッ! あんた人の顔見て失礼じゃないの!」

 本当にあんたは乙女心がわかっていないんだからと鏡台に向き直るロキ。
 ノーメイクのロキはどこからどう見てもバケモノ――というよりオバハンにしか見えなかった。

「お前いつまで居るんだよ?」
「あら、あんた随分冷たい言い方するじゃないの」
「大体にして、お前の目的は魔族街ここを突っ切ることなんだろ? いつまでもこんなところに居ていいのかよ? 何か急ぎの用があったんじゃないのか?」

 それとなくこいつの目的に探りを入れる。
 ――が、深碧色の眼が獲物を捉える鷹のように、一瞬鋭く光る。

「女を質問攻めにする男はモテないわよ」
「この部屋のどこに女が居るってんだ!」
「……あと、無粋な男もね」
「………」

 さすがにバレている。

「あちしもう寝るから、喋りかけんじゃないわよ」

 そそくさとベッドに入るロキ。
 逃げやがった。
 こいつは意地でも自分の目的について言いたくないようだ。
 ま、別にいいけど。

「んっじゃあ、俺らもそろそろ行くか」
「だべ」
「んっだぁ」
「だじょ」

 出掛ける準備をする俺たちを見るアーサーの頭には、疑問符が浮かび上がっていた。

「神様たちは何処かに行くんですか?」
「仕事だ」
「仕事……?」
「言っただろ? 国を、村を今より発展させるためには色々と根回しが必要になってくるのだ」

 娼館に顔を出し、ヴァルキュリアたちのコンドーム評価を確かめねばならん。彼女たちの評価次第で、商人の食いつきも、大事な価格帯も変化する。

 何にしても、アマンダを抱きたい。
 これに尽きる。

「戸締まりはしっかりするのだぞ!」
「はーい!」

 アーサーだけなら少し心配だったが、詐欺師が居るなら問題ない。
 ある意味最強の護衛役である。

 早く、早くと急かすゴブトリオを連れて宿を出た俺は、昨夜と同じように街一番の娼館と噂の『オナホル』に向かう。その道中、何やら背後から不穏な視線を感じる。

 立ち止まり、振り返ってネオン街に視線を巡らせる。
 多種多様な種族が行き交う流れを目で追った。

「神様、どうかしたべか?」
「いや――」
「そんなことより早く行きたいんだじょ!」
「わては稼いだ金で一番高いメスを買うだがや!」
「そう、だな」

 漂う悪魔の気配に胸騒ぎを覚える。
 しかし――

「この程度の悪魔なら問題ない、か」

 迷いを振り切るように、俺は娼館へと急いだ。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

[鑑定]スキルしかない俺を追放したのはいいが、貴様らにはもう関わるのはイヤだから、さがさないでくれ!

どら焼き
ファンタジー
ついに!第5章突入! 舐めた奴らに、真実が牙を剥く! 何も説明無く、いきなり異世界転移!らしいのだが、この王冠つけたオッサン何を言っているのだ? しかも、ステータスが文字化けしていて、スキルも「鑑定??」だけって酷くない? 訳のわからない言葉?を発声している王女?と、勇者らしい同級生達がオレを城から捨てやがったので、 なんとか、苦労して宿代とパン代を稼ぐ主人公カザト! そして…わかってくる、この異世界の異常性。 出会いを重ねて、なんとか元の世界に戻る方法を切り開いて行く物語。 主人公の直接復讐する要素は、あまりありません。 相手方の、あまりにも酷い自堕落さから出てくる、ざまぁ要素は、少しづつ出てくる予定です。 ハーレム要素は、不明とします。 復讐での強制ハーレム要素は、無しの予定です。 追記  2023/07/21 表紙絵を戦闘モードになったあるヤツの参考絵にしました。 8月近くでなにが、変形するのかわかる予定です。 2024/02/23 アルファポリスオンリーを解除しました。

転生貴族のハーレムチート生活 【400万ポイント突破】

ゼクト
ファンタジー
ファンタジー大賞に応募中です。 ぜひ投票お願いします ある日、神崎優斗は川でおぼれているおばあちゃんを助けようとして川の中にある岩にあたりおばあちゃんは助けられたが死んでしまったそれをたまたま地球を見ていた創造神が転生をさせてくれることになりいろいろな神の加護をもらい今貴族の子として転生するのであった 【不定期になると思います まだはじめたばかりなのでアドバイスなどどんどんコメントしてください。ノベルバ、小説家になろう、カクヨムにも同じ作品を投稿しているので、気が向いたら、そちらもお願いします。 累計400万ポイント突破しました。 応援ありがとうございます。】 ツイッター始めました→ゼクト  @VEUu26CiB0OpjtL

錬金術師が不遇なのってお前らだけの常識じゃん。

いいたか
ファンタジー
小説家になろうにて130万PVを達成! この世界『アレスディア』には天職と呼ばれる物がある。 戦闘に秀でていて他を寄せ付けない程の力を持つ剣士や戦士などの戦闘系の天職や、鑑定士や聖女など様々な助けを担ってくれる補助系の天職、様々な天職の中にはこの『アストレア王国』をはじめ、いくつもの国では不遇とされ虐げられてきた鍛冶師や錬金術師などと言った生産系天職がある。 これは、そんな『アストレア王国』で不遇な天職を賜ってしまった違う世界『地球』の前世の記憶を蘇らせてしまった一人の少年の物語である。 彼の行く先は天国か?それとも...? 誤字報告は訂正後削除させていただきます。ありがとうございます。 小説家になろう、カクヨム、アルファポリスで連載中! 現在アルファポリス版は5話まで改稿中です。

【本編完結済み/後日譚連載中】巻き込まれた事なかれ主義のパシリくんは争いを避けて生きていく ~生産系加護で今度こそ楽しく生きるのさ~

みやま たつむ
ファンタジー
【本編完結しました(812話)/後日譚を書くために連載中にしています。ご承知おきください】 事故死したところを別の世界に連れてかれた陽キャグループと、巻き込まれて事故死した事なかれ主義の静人。 神様から強力な加護をもらって魔物をちぎっては投げ~、ちぎっては投げ~―――なんて事をせずに、勢いで作ってしまったホムンクルスにお店を開かせて面倒な事を押し付けて自由に生きる事にした。 作った魔道具はどんな使われ方をしているのか知らないまま「のんびり気ままに好きなように生きるんだ」と魔物なんてほっといて好き勝手生きていきたい静人の物語。 「まあ、そんな平穏な生活は転移した時点で無理じゃけどな」と最高神は思うのだが―――。 ※「小説家になろう」と「カクヨム」で同時掲載しております。

異世界でぺったんこさん!〜無限収納5段階活用で無双する〜

KeyBow
ファンタジー
 間もなく50歳になる銀行マンのおっさんは、高校生達の異世界召喚に巻き込まれた。  何故か若返り、他の召喚者と同じ高校生位の年齢になっていた。  召喚したのは、魔王を討ち滅ぼす為だと伝えられる。自分で2つのスキルを選ぶ事が出来ると言われ、おっさんが選んだのは無限収納と飛翔!  しかし召喚した者達はスキルを制御する為の装飾品と偽り、隷属の首輪を装着しようとしていた・・・  いち早くその嘘に気が付いたおっさんが1人の少女を連れて逃亡を図る。  その後おっさんは無限収納の5段階活用で無双する!・・・はずだ。  上空に飛び、そこから大きな岩を落として押しつぶす。やがて救った少女は口癖のように言う。  またぺったんこですか?・・・

うちの冷蔵庫がダンジョンになった

空志戸レミ
ファンタジー
一二三大賞3:コミカライズ賞受賞 ある日の事、突然世界中にモンスターの跋扈するダンジョンが現れたことで人々は戦慄。 そんななかしがないサラリーマンの住むアパートに置かれた古びた2ドア冷蔵庫もまた、なぜかダンジョンと繋がってしまう。部屋の借主である男は酷く困惑しつつもその魔性に惹かれ、このひとりしか知らないダンジョンの攻略に乗り出すのだった…。

異世界召喚でクラスの勇者達よりも強い俺は無能として追放処刑されたので自由に旅をします

Dakurai
ファンタジー
クラスで授業していた不動無限は突如と教室が光に包み込まれ気がつくと異世界に召喚されてしまった。神による儀式でとある神によってのスキルを得たがスキルが強すぎてスキル無しと勘違いされ更にはクラスメイトと王女による思惑で追放処刑に会ってしまうしかし最強スキルと聖獣のカワウソによって難を逃れと思ったらクラスの女子中野蒼花がついてきた。 相棒のカワウソとクラスの中野蒼花そして異世界の仲間と共にこの世界を自由に旅をします。 現在、第三章フェレスト王国エルフ編

食うために軍人になりました。

KBT
ファンタジー
 ヴァランタイン帝国の片田舎ダウスター領に最下階位の平民の次男として生まれたリクト。  しかし、両親は悩んだ。次男であるリクトには成人しても継ぐ土地がない。  このままではこの子の未来は暗いものになってしまうだろう。  そう思った両親は幼少の頃よりリクトにを鍛え上げる事にした。  父は家の蔵にあったボロボロの指南書を元に剣術を、母は露店に売っていた怪しげな魔導書を元に魔法を教えた。    それから10年の時が経ち、リクトは成人となる15歳を迎えた。  両親の危惧した通り、継ぐ土地のないリクトは食い扶持を稼ぐために、地元の領軍に入隊試験を受けると、両親譲りの剣術と魔法のおかげで最下階級の二等兵として無事に入隊する事ができた。  軍と言っても、のどかな田舎の軍。  リクトは退役するまで地元でのんびり過ごそうと考えていたが、入隊2日目の朝に隣領との戦争が勃発してしまう。  おまけに上官から剣の腕を妬まれて、単独任務を任されてしまった。  その任務の最中、リクトは平民に対する貴族の専横を目の当たりにする。  生まれながらの体制に甘える貴族社会に嫌気が差したリクトは軍人として出世して貴族の専横に対抗する力を得ようと立身出世の道を歩むのだった。    剣と魔法のファンタジー世界で軍人という異色作品をお楽しみください。

処理中です...