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第13話 パイオツな旅
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「黒翼馬は三頭。三人と三匹は無理だ。あきらめろ」
「こちらは招待された身なのだから、貴様が歩けば問題ないだろ」
「勘違いするなよ愚の骨頂。夜の妖精王が呼びつけたのはあの卑しい人族だけだ。それでも来たいと言うならば、諸君は死ぬ気で走れ」
「なんだと貴様ッ!」
「わたしとやるか? 愚の骨頂」
ジャンヌとクレアは水と油のようだ。
バチバチ火花を撒き散らす二人に、アーサーはてんてこ舞い。
「アーサーとジャンヌが一緒に乗り、もう一頭に小さな三匹が一緒に乗ればいい」
「では卑しい人族が走るということか」
「走らねぇよっ! 俺はお前と乗る」
「なっ!? なんであたしがあんたと騎乗しないといけないのよ! ――しまっ!? しなくてはならんのだ」
「………?」
今こいつキャラ変わらなかったか?
俺たちは集合と六人で輪になってクレアをちら見する。
「今あいつしまったと言いかけなかったか?」
「はい。絶対に途中で無理矢理口調を戻していたと思います」
「なにより、私のキャラと若干被っていて気に食わなかったところだ」
「たしかに文字に起こしたらジャンヌの姉さんと分かりにくいべな」
「まったくだ。腹立たしい」
「そういえば、ダークエルフは見栄っ張りな種族だって聞いたことがあるじょ」
「見栄張ってあんな口調だったんだがや?」
「ダークエルフは高齢種だじょ。いい歳した大人が子供っぽい口調だと恥ずかしいんだじょ」
「ホブゴブリンのメスがか弱いフリしてオスを誘惑する感じに似てるだべさ」
その例えがわからんっ!
「さしずめ、本当は田舎の出身だが騎士に憧れてそれっぽい口調を真似ていたのだろうな」
「「「「「…………」」」」」
「なんだ貴様らのその目はッ!」
そんなつもりはなかったのだが、つい全員でジャンヌの顔をガン見してしまった。
「今すっごい特大のブーメランが見えたのはオラの気のせいだべか?」
「あぁ? ゴブゾウ……貴様今なにか言ったか?」
「――!? 言ってねぇべぇっ! オラ何も言ってねぇべっ!」
「諸君はいつまでそうやってコソコソ話しているつもりだッ!」
話し合いはここまでとして、俺たちは魔族街を目指すため、黒翼馬に騎乗することにした。
「なぜこのわたしが卑しい人族なんかと……ひぃっ!?」
「あっすまん、間違って揉んでしまった」
「いいい一体なにをどう間違えたらあたしの胸を揉むことになるのよ! じゃなくて……えーと、揉むことになるだぁ?」
こりゃあキャラ崩壊まで秒読みだな。
大森林は広く、上空からの眺めもいい。
なにより風が気持ちいい。
うん。とっても気持ちいい。
「ちょっ、ちょっと!? なんで腰をもみもみするのよ!」
「ならどこを持てというのだ! 落ちるだろうが」
「もみもみする必要はないでしょ? それをやめてって言ってんのよ!」
「誤解だ。振動で振り落とされそうになってしまうだろ? その度にちょっと手に力が入ってしまうだけではないか」
「嘘よ! 絶対嘘ッ! そういう手付きじゃなかったじゃない!」
「ならどういう手付きだったと言うのだ!」
「い、いやらしい手つきだったて言ってるのよ!」
「いやらしい手付きだと!? 俺はこう持っていただけだぞ。いやらしい手付きってのはこういう手付きを言うんじゃないのか?」
「あっ!? ちょっ、いやんっ!? ダメっ……ねぇ、本当にダメだってば!」
尖り耳を真っ赤にして、ぜぇぜぇと肩で息をするクレア。
最初に見たときはいけ好かないやつだと思ったが、今のこいつは中々悪くない。
最高の空の旅になりそうだ。
そして数日後――
「はぁ、はぁ……」
触り放題もみ放題の優雅な空の旅を終えた俺たちは、目的地である龍の背骨の前までやって来ていた。
「まるで壁だな」
数百キロに渡って続く鉱山帯は、まさに自然の壁そのものだ。
そびえ立つ鉱山の上空には無数のブラックワイバーンが旋回しており、ここを黒翼馬で飛び越えることは不可能だと思われる。
「く、屈辱よっ!」
「お前、大丈夫か?」
「誰のせいだと思ってんのよ! あんたがずっと揉み続けるからでしょ! この変態っ!」
涙目で凄んでくるクレアがなんかエロい。
「発情エルフはともかく、すごい魔物の数だな」
「ここは魔物や魔族たちにとっての貿易街だと聞いたことがあります」
「アーサーは意外と博識あるだべな」
「向こう側に渡るためには魔族街――ワンダーランドを通らなきゃいけないんだじょ」
「壁の向こうには何があるのよ?」
「人族の街があるだな。公にはなっでぇねぇがな、魔族街と向こう側の人族は商売をしでんだぁ」
「商売……?」
「人と魔族が国交を結んでいるということか」
クレアを宥め、俺も彼らの会話に加わる。
「さすがかッ……金に詳しいウゥルカーヌス様だべ」
神様と言いかけて慌てて誤魔化すゴブゾウ。
彼らゴブリンにも、俺の正体は口外しないようにとキツく言い聞かせてある。
「我ら魔族の暮らしをより良いものにするためには、癪だが卑しい人族と国交を結び、貿易を行った方が確実だからな」
「スケベエルフから見栄っ張りに戻ったじょ」
「スケベ言わないでっ! てかそのキャラ定着させないでよ! ほんっと嫌なんだけど」
クレアからはダークエルフの誇りも威厳も失われつつある。
「ふざけんじゃないわよ! あちしは今すぐここを通せって言ってんのよッ!」
魔物たちによって伸びた列の先から、甲高い男性の声が響き渡ってくる。
巨人でも通るのだろうかと思われるほど、立派なレリーフが施された巨大な扉――関所の前には、犬歯をむき出しにしてダークエルフに詰め寄るド派手なスーツ姿の道化がいた。
「げっ、ロキッ!?」
「見せもんじゃねぇぞゴラァッ――!! って……んん? あんたウゥルカーヌスじゃないの?」
なんで疫病神がこんなところにいるんだよ!?
「こちらは招待された身なのだから、貴様が歩けば問題ないだろ」
「勘違いするなよ愚の骨頂。夜の妖精王が呼びつけたのはあの卑しい人族だけだ。それでも来たいと言うならば、諸君は死ぬ気で走れ」
「なんだと貴様ッ!」
「わたしとやるか? 愚の骨頂」
ジャンヌとクレアは水と油のようだ。
バチバチ火花を撒き散らす二人に、アーサーはてんてこ舞い。
「アーサーとジャンヌが一緒に乗り、もう一頭に小さな三匹が一緒に乗ればいい」
「では卑しい人族が走るということか」
「走らねぇよっ! 俺はお前と乗る」
「なっ!? なんであたしがあんたと騎乗しないといけないのよ! ――しまっ!? しなくてはならんのだ」
「………?」
今こいつキャラ変わらなかったか?
俺たちは集合と六人で輪になってクレアをちら見する。
「今あいつしまったと言いかけなかったか?」
「はい。絶対に途中で無理矢理口調を戻していたと思います」
「なにより、私のキャラと若干被っていて気に食わなかったところだ」
「たしかに文字に起こしたらジャンヌの姉さんと分かりにくいべな」
「まったくだ。腹立たしい」
「そういえば、ダークエルフは見栄っ張りな種族だって聞いたことがあるじょ」
「見栄張ってあんな口調だったんだがや?」
「ダークエルフは高齢種だじょ。いい歳した大人が子供っぽい口調だと恥ずかしいんだじょ」
「ホブゴブリンのメスがか弱いフリしてオスを誘惑する感じに似てるだべさ」
その例えがわからんっ!
「さしずめ、本当は田舎の出身だが騎士に憧れてそれっぽい口調を真似ていたのだろうな」
「「「「「…………」」」」」
「なんだ貴様らのその目はッ!」
そんなつもりはなかったのだが、つい全員でジャンヌの顔をガン見してしまった。
「今すっごい特大のブーメランが見えたのはオラの気のせいだべか?」
「あぁ? ゴブゾウ……貴様今なにか言ったか?」
「――!? 言ってねぇべぇっ! オラ何も言ってねぇべっ!」
「諸君はいつまでそうやってコソコソ話しているつもりだッ!」
話し合いはここまでとして、俺たちは魔族街を目指すため、黒翼馬に騎乗することにした。
「なぜこのわたしが卑しい人族なんかと……ひぃっ!?」
「あっすまん、間違って揉んでしまった」
「いいい一体なにをどう間違えたらあたしの胸を揉むことになるのよ! じゃなくて……えーと、揉むことになるだぁ?」
こりゃあキャラ崩壊まで秒読みだな。
大森林は広く、上空からの眺めもいい。
なにより風が気持ちいい。
うん。とっても気持ちいい。
「ちょっ、ちょっと!? なんで腰をもみもみするのよ!」
「ならどこを持てというのだ! 落ちるだろうが」
「もみもみする必要はないでしょ? それをやめてって言ってんのよ!」
「誤解だ。振動で振り落とされそうになってしまうだろ? その度にちょっと手に力が入ってしまうだけではないか」
「嘘よ! 絶対嘘ッ! そういう手付きじゃなかったじゃない!」
「ならどういう手付きだったと言うのだ!」
「い、いやらしい手つきだったて言ってるのよ!」
「いやらしい手付きだと!? 俺はこう持っていただけだぞ。いやらしい手付きってのはこういう手付きを言うんじゃないのか?」
「あっ!? ちょっ、いやんっ!? ダメっ……ねぇ、本当にダメだってば!」
尖り耳を真っ赤にして、ぜぇぜぇと肩で息をするクレア。
最初に見たときはいけ好かないやつだと思ったが、今のこいつは中々悪くない。
最高の空の旅になりそうだ。
そして数日後――
「はぁ、はぁ……」
触り放題もみ放題の優雅な空の旅を終えた俺たちは、目的地である龍の背骨の前までやって来ていた。
「まるで壁だな」
数百キロに渡って続く鉱山帯は、まさに自然の壁そのものだ。
そびえ立つ鉱山の上空には無数のブラックワイバーンが旋回しており、ここを黒翼馬で飛び越えることは不可能だと思われる。
「く、屈辱よっ!」
「お前、大丈夫か?」
「誰のせいだと思ってんのよ! あんたがずっと揉み続けるからでしょ! この変態っ!」
涙目で凄んでくるクレアがなんかエロい。
「発情エルフはともかく、すごい魔物の数だな」
「ここは魔物や魔族たちにとっての貿易街だと聞いたことがあります」
「アーサーは意外と博識あるだべな」
「向こう側に渡るためには魔族街――ワンダーランドを通らなきゃいけないんだじょ」
「壁の向こうには何があるのよ?」
「人族の街があるだな。公にはなっでぇねぇがな、魔族街と向こう側の人族は商売をしでんだぁ」
「商売……?」
「人と魔族が国交を結んでいるということか」
クレアを宥め、俺も彼らの会話に加わる。
「さすがかッ……金に詳しいウゥルカーヌス様だべ」
神様と言いかけて慌てて誤魔化すゴブゾウ。
彼らゴブリンにも、俺の正体は口外しないようにとキツく言い聞かせてある。
「我ら魔族の暮らしをより良いものにするためには、癪だが卑しい人族と国交を結び、貿易を行った方が確実だからな」
「スケベエルフから見栄っ張りに戻ったじょ」
「スケベ言わないでっ! てかそのキャラ定着させないでよ! ほんっと嫌なんだけど」
クレアからはダークエルフの誇りも威厳も失われつつある。
「ふざけんじゃないわよ! あちしは今すぐここを通せって言ってんのよッ!」
魔物たちによって伸びた列の先から、甲高い男性の声が響き渡ってくる。
巨人でも通るのだろうかと思われるほど、立派なレリーフが施された巨大な扉――関所の前には、犬歯をむき出しにしてダークエルフに詰め寄るド派手なスーツ姿の道化がいた。
「げっ、ロキッ!?」
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