階層

海豹

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階層ゲーム

10 ペア

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「84番、佐海功治さん」
ようやく自分の名前が呼ばれたようだ。
従業員の女性に追従するよう言われたので後をついて行った。
「佐海功治さん、あなたはDチームです。」
どうやら自分が呼ばれてから12人呼ばれていたため全員で96人と言うことが判明した。そして、その全96人が24人ずつの4チームに分かれA、B、C、Dと書いた紙を持った4人の従業員の後ろに並べさせられている。それに、一つのチームに男女が丁度12人ずつなるよう上手く構成されていた。こんなに丁度になるとは、申請してからメッセージを送るまでの間に男女比率を調節したのだろうか。そうなると、この集合場所以外にも幾らか集合場所が用意されていてもっと多くの人々が自分たちと同じくこの時間に集合させられているのだろうか。
 そんな、脳内推理をしていると従業員の男が説明を始めた。
「今からバスで会場まで向かいます。ここから会場までは約6時間半バスに乗って頂きます。」
「バス車内にはトイレが設置されていますが、今すぐトイレを利用したい方は時間を取りますのでそちらに設置されている公園のトイレを利用してください。」
「走行中は止むお得ない事情がない限り停車はできませんのでご了承ください。」
「また、バスは目的地到着までに3回休憩所に停車いたしますのでご理解いただきますようお願いします。」
「最後に、バス車内では二人ずつペアで決まった席にご乗車いただきます。」
「今から、そのペアを組んでもらいますので従業員の指示に従ってください。」
 なるほど、先程からバスでどの席を座るのか気になってはいたが、ペアを組み、その相手と隣同士決められた席に座るということが分かった。
「一つ言い忘れていましたが、バス車内に足を踏み入れた時点で階層ゲームは始まっていると考えてください。」
まだ、ルール説明どころか目的地すら知らされてない。そんな状態でゲームを始めると言うのか。あまりにも情報が少な過ぎる、これでは勝てる状況にいたとしても判断を誤りかねない。まずは、このゲームについて把握するため目立った行動は慎むべきだと考えた。
「それでは、ペアを組んでいただきます。」
Aチームから順にチーム内で男女二人組のペアが作られていく。
「84番 佐海功治さん、43番 巫結芽さんペアを組んでください。」

「よろしくお願いします。」

声がする方に振り向くとそこには、自分より5センチほど低い170センチくらいの長身で細身かつ美人な女性がにこやかな笑みを浮かべて立っていた。
「あ、、よろしくお願いします。」
思っていたよりも美形で一瞬はにかんでしまい声が小さくなってしまった。だが、照れて動揺しているなどと少しでも悟られないよう平静を装い偽りのスマイルを作った。
「〝さかいこうじ〟さんですよね」
確かに、名前は重要だ。初めから名前を呼び間違えるなどといった、せっかくの和やかな雰囲気を壊すよなことはあってはならない。
「はい、」
「あなたは〝かんなぎゆめ〟さんで合ってますよね」
「はい!」
思っていたよりも威勢よく返事をされ少し照れ臭くなったが、反対に返事をした側もこんなに声量が出るとは思っていなかったという恥じらいの表情をしており、そこに可愛らしさを感じた。どうやら彼女も緊張しているようだ。
「それでは、全員ペアが組み終わりましたのでバスに乗っていただきます。」
従業員が人々をバスに案内し始めた。Aチームから徐々に人々が乗車していく。皆、異性とペアを組んだことに緊張しているのか下を向いて笑みを漏らしているものが多い。自分にはそれなりのプライドがあるためポーカーフェイスを貫けるよう努力した。
 一つ気づいたことがあった、どうやら高齢者は高齢者同士、高校生は高校生同士と同じ年齢くらいの人々でペアが作られていた。確かに、高齢者と高校生のペアでは話しが合わないだろう。そういったところを配慮されているのはリスペクトしたい。どうなるかと思っていたが、結構いや凄く良い出だしに気持ちが高まっている自分がいた。










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