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階層ゲーム前
6 残酷な真実2
しおりを挟むどうやら近くに雷が落ちたらしい。
滝のような雨が窓を流れる。
「親友が殺されたってどういう、」
「俺は5年前まで刑事だった。」
「俺の同期で25年間共にあらゆる事件を解決した、新島という男がいたんだ。」
「新島とは二人で旅行に行くほどプライベートでも良く交わっており、唯一信頼できる他人でもあった。」
「だか、ある日一つの捜査を経て確信したんだ。」
「エボルヴが所有している研究所の近くで猿のようなものを見たと複数の住人から数週間に渡って通報が届いていた。」
「いつものように新島と現場を捜索し、住民に事情聴取をして晩飯にラーメン屋へと向かっていた時、悲劇は起きた。」
「ラーメン屋から一キロ程離れた歩道を歩いている時、突然後ろの交差点から叫び声が聞こえてきたんだ。」
「やけに騒々しいななどと会話をし、軽く受け止めていた。」
「その地区は、治安が悪くイキったガキ共がよく問題を起こしていた。」
「そんなこともあって、俺たちはさほど危機感を持つことなく一応見に行くことにした。」
「交差点に出ると、人が倒れており周りには不良らしき格好のガキが集まっていた。」
「また喧嘩でもしたのだろうと正直呆れた。」
「しかし、交差点を挟んで目を凝らすと倒れた人の頭から大量に出血しているのだ。」
「これはまずいと思いすぐさま近くへ行こうと試みた時、違和感を感じた。」
「周りにいる人々が皆倒れた人には見向きもせず、一点を凝視し唖然と硬直していた。」
「それも俺たちの頭上あたりを。」
「俺たちはすぐに察した。」
「俺は不測の事態を考えていなかった。万一に銃を備えておくことを怠っていた。」
「だか、新島は昔から用意周到な男だった。すぐさまホルスターから銃を取り出し振り返った。」
「しかし、時はすでに遅かった。」
「店の屋根を登っていた猿らしきものは新島目掛けて飛んでいた。」
「新島は銃を一発放ったが、その瞬間首を捻じ曲げられ無惨な姿で即死した。」
「猿は2秒ほど俺を眺めていたが、俺はどうすることもできず突っ立ていた。」
「その時、サイレンの音が遠くから微かに聞こえた。」
「すると、猿は瞬く間に屋根を登り見失った。」
「猿らしきものは身長が2メートル以上あり、一目でわかるくらいに大きな背筋が隆起している。」
「それに、体は凹凸が多く皮膚は褐色である。」
「しかし、顔は人間に非常に近く下半身には囚人パンツのようなものを身につけていると。」
「事情聴取をしてる時は、ふざけているのかとさえ思っていたが、まさか実在していたなんてな。」
「それから俺はエボルヴについて独自で調べ尽くした。」
「そうしていると、思わぬものを見つけ、動揺が隠せなかったんだ。」
喫茶店の扉が先ほどから突風の影響で大きな音を立てている。それに、倒れた自転車を直しに行くと出て行った女店員が一向に帰ってこない。
「話しが少し長くなったな。」
「君が言いたいことは分かる、それがどう美香と関係しているのかだろ。」
「そう焦るな、全て話すと言っただろ。」
「あ、はい」
どうやら顔に出ていたらしい。この男の言っていることは現実離れし過ぎて理解し難い。失礼のないよう横目で喫茶店の壁に掛けてある時計を見た。
午後六時四五分
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