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9話 From菜月
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最近の私は、変だ。
幸人の顔を見るたび、声を聞くたび、心臓の音がうるさくなって、全身の血液の流れが早くなって、口の中がカラカラになっちゃう。それに、何をしても幸人事ばかり考えてしまう。
もっと、幸人のことを知りたいって。
もっと、幸人と一緒にいたいって。
六限目の間に降っていた雨も、ホームルームが終わる頃には上がっていた。今日は傘を持ってきていなかったから良かった。しかも今日は部活がない上、いつも一緒に帰っている明日香は生徒会の仕事があるそうだ。一人でびしょ濡れになりながら帰るという最悪ルートを行くことがなくなったことで、今週一週間分の運を使い切ってしまったかもしれない。
校門を出て、駅までの道を歩く。
オレンジがかった太陽の光が真っ直ぐな道を明るく照らす。街路樹のイチョウの枝は風に揺られてさわさわと歌う。私の影が後ろに長く伸びている。
「あ、虹だ」
空のすみっこに鮮やかな七色の橋を見つけた。
なにかいいことがあるかも。ちょっとスキップしたくなる。
そうだ、幸人に見せてあげよう。きっと今頃生徒会の仕事をしているから見られないだろうから。見たかったなっていうかな。見れてよかったね、みたいな返事が帰ってくるのかな。それとも別の何かが返ってくるかな。
ポケットの中からスマホを取り出して、虹を画面の中に切り取った。それから、メッセージアプリを起動して、幸人に送る。
あれ、なんでわざわざ最初に幸人に送ろうと思ったんだっけ。
スマホを触る指が止まる。
それは、この虹を見たときの幸人の反応が見たかったから。これをきっかけに今日も幸人と話したかったから。
ああ、また幸人のことばかり考えている。最近の私は変なんだ。
何を見ても、何をしても、幸人のことに繋げて考えてしまう。世界の中心が幸人になってしまったみたいなんだ。
もう、この気持から目をそらすことなんて出来なかった。
きっとこれは恋なんだ。私は恋をしてしまったんだ。
心が変になって、恋をしてしまったんだ。
幸人のことが、好きになっちゃったんだ。
理由なんてよくわからない。きっかけなんて全部かもしれない。
幸人のことを考えるだけで、胸がいっぱいになる。
幸人ともっと一緒にいたくて、幸人ともっとたくさん話したくて、幸人のことをもっと知りたくて、できれば幸せになりたくて。
もしも、関係を進めることが出来たなら、きっと幸せになれると思う。だって、もうこんな気持になってしまったから。運命が結ばれるのならば、私は幸人と幸せになりたい。
そんな事考えてしまうのは、もうこの気持に名前がついてしまったから。
好きなんだ。
一瞬にして世界が色づく、なんてことはなかった。恋に落ちる音なんて聞こえなかった。なのに、気づいたら恋色に染まってしまっていた。戻れない場所まで来てしまっていた。
顔が赤くなるのは、きっと西に傾いた太陽のせいだけじゃない。
私は大きく一歩、足を前に進めた。
幸人の顔を見るたび、声を聞くたび、心臓の音がうるさくなって、全身の血液の流れが早くなって、口の中がカラカラになっちゃう。それに、何をしても幸人事ばかり考えてしまう。
もっと、幸人のことを知りたいって。
もっと、幸人と一緒にいたいって。
六限目の間に降っていた雨も、ホームルームが終わる頃には上がっていた。今日は傘を持ってきていなかったから良かった。しかも今日は部活がない上、いつも一緒に帰っている明日香は生徒会の仕事があるそうだ。一人でびしょ濡れになりながら帰るという最悪ルートを行くことがなくなったことで、今週一週間分の運を使い切ってしまったかもしれない。
校門を出て、駅までの道を歩く。
オレンジがかった太陽の光が真っ直ぐな道を明るく照らす。街路樹のイチョウの枝は風に揺られてさわさわと歌う。私の影が後ろに長く伸びている。
「あ、虹だ」
空のすみっこに鮮やかな七色の橋を見つけた。
なにかいいことがあるかも。ちょっとスキップしたくなる。
そうだ、幸人に見せてあげよう。きっと今頃生徒会の仕事をしているから見られないだろうから。見たかったなっていうかな。見れてよかったね、みたいな返事が帰ってくるのかな。それとも別の何かが返ってくるかな。
ポケットの中からスマホを取り出して、虹を画面の中に切り取った。それから、メッセージアプリを起動して、幸人に送る。
あれ、なんでわざわざ最初に幸人に送ろうと思ったんだっけ。
スマホを触る指が止まる。
それは、この虹を見たときの幸人の反応が見たかったから。これをきっかけに今日も幸人と話したかったから。
ああ、また幸人のことばかり考えている。最近の私は変なんだ。
何を見ても、何をしても、幸人のことに繋げて考えてしまう。世界の中心が幸人になってしまったみたいなんだ。
もう、この気持から目をそらすことなんて出来なかった。
きっとこれは恋なんだ。私は恋をしてしまったんだ。
心が変になって、恋をしてしまったんだ。
幸人のことが、好きになっちゃったんだ。
理由なんてよくわからない。きっかけなんて全部かもしれない。
幸人のことを考えるだけで、胸がいっぱいになる。
幸人ともっと一緒にいたくて、幸人ともっとたくさん話したくて、幸人のことをもっと知りたくて、できれば幸せになりたくて。
もしも、関係を進めることが出来たなら、きっと幸せになれると思う。だって、もうこんな気持になってしまったから。運命が結ばれるのならば、私は幸人と幸せになりたい。
そんな事考えてしまうのは、もうこの気持に名前がついてしまったから。
好きなんだ。
一瞬にして世界が色づく、なんてことはなかった。恋に落ちる音なんて聞こえなかった。なのに、気づいたら恋色に染まってしまっていた。戻れない場所まで来てしまっていた。
顔が赤くなるのは、きっと西に傾いた太陽のせいだけじゃない。
私は大きく一歩、足を前に進めた。
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